人々の心と体の健康を支える、保健師。
各地域にお住いの人たちの『心身の相談』に乗ったり、企業や学校に勤める・通う人たちの『心身のケア』を行ったり……と、私たちの生活の身近にいる存在です。
そして、この仕事に就くためには「どういう学校に行き、どんな試験に合格すればいい」のでしょうか。
今回は、上記のような点について、詳しくお話をしていこうと思います。
どうやったらなれるの?
2つの国家資格に合格する必要がある
まず、薬剤師の仕事を行うために必須となる条件は、『看護師』と『薬剤師』の両方の国家試験に合格することです。
というのも、保健師の受験資格を得るためには、看護師国家試験に合格していることが条件の一つとなるからです。
つまり、「私は将来保健師の仕事に就きたい!」という人がいた場合、必ず看護系の大学もしくは専門学校に通う必要があるということになります。
「看護師?私は別に看護師になりたい訳じゃないんだけど……」と思う人もいるかもしれませんが、看護師をすっ飛ばして保健師になるということは不可能です。
ただ、基本的に『看護師』という職業を認知している若者はたくさんいますが、『保健師』はそれほど認知度が高い仕事ではありません(もちろん大切・重要な仕事ではありますが)。
もちろん「保健師になりたい!」と明確な目標を持って進路を決定する人もいます。
しかし、中には看護学校に通っている途中のカリキュラム選択の時に「保健師のことを知って色々調べてみたら、面白そうだと思って目指すことを決めた」という人もいます。
どちらの道を目指すかは人それぞれです。
それぞれの仕事がどういうものなのか?をしっかりと確認した上で、自分が「なりたい!」と感じた道を選択していくようにしましょう。
看護師の技術が活かせる機会はある?
保健師が行う業務の中心は、相談や保健指導です。
そのため、医療行為をすることは滅多になく、看護師として身に着けた看護の技術は、保健師になってからは活かせる場面があまり(ほぼ)ありません。
心身の病にかかっている人をケアするという意味では共通している両者ですが、その仕事内容は大きく異なります。
医療業界と一言でいっても、職種は多様に存在します。
そして、それぞれで業務内容は大きく違うのです。
必ず、「自分はどんな仕事に就きたいのか?」をしっかりと明確にした上で、進路を決定するようにして下さい。
教育課程の選び方
大きく2パターン存在する
看護を学べる学校は、日本中に数多く存在します。もちろん、大学だけでなく専門学校で学ぶことも可能です。
前項でもお伝えした通り、保健師の受験資格を得るためには「看護系の学校に通い、まず看護師国家資格を取得する」です。
そのために「どういう大学に通えばいいか?」という点が挙げられますが、これは2パターン存在します。
結果を先にまとめておくと、以下の通りです。
②看護師資格を取得後に、指定された養成所で1年以上の学科を修了する
それぞれ、詳細をお話していきましょう。
パターン①:統合カリキュラムのある学校に通う
これは、その名の通り保健師・看護師の両方の受験資格を同時に得ることができる学校のことです。
一部の看護学系の大学もしくは、4年制の専門学校で用意されており、最近はこの手の大学や専門学校が増加しています。
これのメリットは、在学中に「保健師になりたい」と目標が変わったとしても、学内の基準を満たせば保健師コースを履修できる可能性があるという点です。
ただ、その場合は、希望した全学生が受講できる訳ではありません。
希望した学生に試験を実施し、合格した人だけが保健師のカリキュラムも受講できる……という流れになります。
そして、この方法のデメリットは……勉強量が膨大になるということです。
看護師・保健師のどちらも試験の難易度は非常に高く設定されています。
その勉強を同時にこなしていく必要があり、実習など日々の学生生活はもちろん、独学での勉強量も相当なものとなります。
パターン②:指定された養成所で1年以上勉強する
こちらは、統合カリキュラムが用意されていない学校に通う場合……、もしくは、看護師として仕事をしている中で「保健師になりたい」という考えに至った場合の方法です。
(あとは、コースがあっても人数や成績の制限で履修できなかった場合など)
この場合は、まず看護学校を卒業し、看護師国家資格に合格を目指します。
そして、資格を取得した後に、保健師の養成課程を持つ、短大や保健師養成所に1年通うというものです。
現在は上述のような統合カリキュラムが用意された学校も増えていますが、以前はこちらの方法が一般的でした。
ただ、この場合は途中で「保健師を目指したい」となっても、方向性を変えることはできません。
ただし、言い方を変えると、看護師・保健師のそれぞれの勉強に集中ができるというメリットでもあります。
どちらの方がお得なの?
これについては一長一短であり、どちらを選ぶかは人それぞれです。
初めから保健師になることを目標としているなら、統合カリキュラムが用意された学校に進学した方がいいでしょう。
逆に「私は、看護師の仕事に就きたい」と考えているなら、看護学校に通った方が良い場合もあります。
というのも、統合カリキュラムが用意されている(保健師の受験資格も得られる)学校の場合、学校の入学試験や入学後の勉強・レポートなどが非常に難しいと言われているからです。
これまでにもお話したことを何度も言ってしまいますが、「自分が将来どうなりたいのか?」ということを念頭において、進学先を決めるのがいいかと思います。
注意点:看護師試験が不合格となった場合
統合カリキュラムが用意された大学では、両方の試験を近しいタイミングで受験することが可能です。
この時の注意点として看護師試験に不合格だった場合、保健師試験に合格していても保健師資格を得ることはできないという点が挙げられます。
冒頭でもお話した通り、「看護師試験に合格していることが受験資格の条件」だからです。
どちらの試験も、毎年2月中旬頃に試験が行われています。年に1回のみです。
そのため、もし看護師試験に不合格となった場合、翌年以降(合格すること)でなければ保健師の仕事に就くことができません。
この点は特に注意しておかなくてはいけません。
ただし、保健師国家試験の『合格実績』に有効期限はありません。
そのため、保健師の試験に合格していれば、改めて看護師の試験に合格するだけで、申請ができるようになります。
試験について
試験の概要
まず、試験の概要は以下の通りです。
そして、出題される試験の内容ですが、以下の中から出題されます。
・疫学・保健統計
・保健福祉行政論
(午前:55問/75分、午後:55問/80分)
合格率はどのくらい?
保健師の合格率ですが、90%前後と非常に高い水準となっています。
例えば、下記は第102回(2016年)~第106回(2020年)の『出願者数』『受験者数』『合格者数』『合格率』をまとめた表になります。
出典:厚生労働省
()内の数字は、新卒数と新卒のみに絞った合格率となりますが、全体のほぼ9割近くが新卒となります。
そして、新卒に絞った方が、合格率は高い傾向にあります。
この合格率の高さたる所以は、大学院卒業者など勉学に励む人が受験していることが理由の一つです。それは新卒の合格率をご覧いただければご理解いただけるでしょう。
ただし、合格率が高いからと言って、試験の難易度が低いという訳ではありません。
むしろ保健師の試験は、看護師の試験と比べても高い難易度にあると言われています。
そのため、保健師養成課程において、十分な試験対策をしておくことが重要となります。
試験合格後、申請により得られる別資格について
保健師の国家資格に合格した後、一定の条件を満たすことで下記2種類の資格を別途取得することができます。
・第1種衛星管理者
ここでは、それぞれの仕事内容と、取得するための条件についてご紹介していきます。
養護教論2種免許とは?
これは、いわゆる『保健室の先生』のことです。
小・中・高の学校において、学校全体の保健の管理を行う仕事です。
保健室での応急処置はもちろんのこと、健康診断・健康観察などを通して、在学生の(幼児・児童・生徒)の心身の健康を管理する学校職員としての役割を持っています。
ちなみに、大学や専門学校の場合は『学校保健師』と呼ばれており、保健師の資格を所持していれば職に就くことが可能です。
そのため、養護教論と学校保健師は『勤務先』『必要な資格』が異なり、似て非なるものとなります(ただし、仕事内容自体はほとんど同じ)。
養護教論免許は、『1種』『2種』『専修』の3種類が存在します。
そして、保健師の登録をした上で、文部科学省令で定める4科目8単位を履修することで、2種の免許を得ることができます。
さらに、保健師の免許を得た上で、文部科学大臣の指定する養護経論養成機関に半年以上在学・所定の単位を修得した人は、1種に移行することが可能となります。
何にせよ、養護教論になるためには、「保健師の免許を取得することが絶対条件となる」ということです。
第1種衛星管理者とは?
これは、『労働安全衛生法』によって定められた国家資格であり、「労働者の健康障害や労働災害を防止する」という役割を持っています。
衛星管理者は、労働者が50人以上いる職場において、必ず選任しなければいけません。
衛星管理者の主な仕事は、以下の通りです。
・労働者の健康管理
・労働衛生教育の実施・
・健康保持増進措置
そして、この資格は、保健師国家試験に合格していれば、都道府県労働局へ申請することで得ることが可能です。
もし『公務員』として勤務をする場合は、別途資格を必要とする
最後に、もう一つお話しておくことがあります。
現在、保健師という仕事を大別すると、『行政』『産業』『学校』という3つの括りに分けられます。
そして、上記『行政保健師』は、行政で働くことが大半となるため、公務員として勤務することとなります。
つまり、保健師の資格とは別に、公務員試験にも合格をしなければいけないのです。
この試験は、国もしくは地方公共団体が実施している試験であり、行政職(事務職)の場合は以下が課せられることが多いとされています。
・二次試験:面接試験・論文試験
ただし、これは受験する自治体によって内容が大きく異なる場合があります。
例えば、地域によっては、一次試験で「教養・専門試験(看護・保健分野)」、二次試験で「面接・論文試験」が実施されることもあります。
違う地域だと、教養・適正・面接試験のみの場合もあります。
このように自治体によって試験の形式が異なることから、もし「公務員(保健師)の仕事に就きたい!」とお考えの方は、受験する自治体のホームページで、試験内容を事前に確認することが重要となります。
まとめ
医療の業界は、職種が多様に存在し、その職種ごとに必要な資格(免許)が異なります。
加えて、一定の資格を取得するためには、別の資格を必要とする場合が多いのも特徴の一つです。
例えば、『保健師』を取得するには『看護師』が必要ですし、『養護教論』を取得するには『保健師』が必要だったり……などです。
また、少し職種は異なりますが、『助産師』の資格を取得する条件として『看護師』の資格が必須だったりもします。
こう考えると、『看護師』の資格は、医療業界において様々な資格に派生していくために最も必要な資格と言えるのかもしれません。
もちろん、どの資格も一筋縄ではいかず、長い勉強期間を必要とします。
しかし、医療の業界はこれからも進化を続け、人々が生活をしていく限り絶対に無くなることはありません。
加えて、少子高齢化、そして健康へのニーズが高まっている現代において、これからもこの需要はどんどん増加していくものと考えられています。
資格取得への道のりは長く険しいものですが、取得できれば様々な仕事への道が拓けることから、将来性が十分にあるとも言えるのです。
もしこの記事を見て、少しでも医療業界に関心を持たれた方がいらっしゃれば、様々なところから情報を仕入れ、その一歩を踏み出してみて下さい。