「ソーシャルワーカー」とは、社会福祉支援を行う専門職のことをいい、いくつかの種類が存在します。
その中の一つが、今回ご紹介する「医療ソーシャルワーカー」です。
どんな役割があり、どのような仕事を行っているのか?
どのような資格が、業務を行う上で役立てられるのか?
こういった内容について、詳細を解説していきたいと思います。
尚、「ソーシャルワーカー」については、以前に別の記事にて詳細をご紹介しておりますので、以下を参考にしてください。
「医療ソーシャルワーカー」とはなにか?
概要
冒頭でもご紹介した通り、「ソーシャルワーカー」とは、社会福祉支援を行う専門職のことをいいます。
そして、“医療”と名がつく通り、この職業は「医療機関などにおける福祉の専門職」のことを指しているのです。
病気になると、ご本人はもちろん周囲の人たちも(経済的にも心理的にも)さまざまな悩みや課題がたくさん出てきます。
そういった方々の相談に応じ、患者や家族を社会福祉の立場からサポートする……。
これが、この職業の主な役割となるのです。
具体的な仕事内容について
この仕事は、相談者の相談に応じて、よりよい社会生活を送れるように支援を行います。
仕事内容はさまざまに存在し、例えば以下が挙げられます。
◆地域の社会資源の紹介
◆入院・退院の調整
◆自宅の環境整備 など
入院時に症状に合わせて病室を調整したり、退院時に各部門と連携して日時を決めたり……。
また、自宅に戻る際は生活環境を把握したうえで、必要に応じて福祉用具業者と連携し、自宅の設備改修や生活スタイルの提案などを行ったりもします。
もし「自宅に戻るのが難しい……」となった場合は、患者に合った施設を紹介したり、入所の調整を行ったりもするのです。
加えて、退院時の面談やカンファレンスも開催しています。
ちなみに、業務範囲については、厚生労働省の「医療ソーシャルワーカー業務指針」において、以下のように記されています。
◆退院援助
◆社会復帰援助
◆受診・受療援助
◆経済的問題の解決、調整援助
◆地域活動
その役割は非常に広く、この職業は医療機関に関するさまざまな支援を行っているのです。
「なり方」について
資格は必須ではないが、役立てられる資格はある
まずこの職業は、病院などの医療機関で勤務することとなります。
ただし、各医療機関で働く人数は、数名……多くても10数名程度しかおらず、非常に狭き門となっています。
この職に就くために必須となる特別な資格はありません。
ただし、上記の通り求人の数自体が少なく狭き門となっていることから、経験はもちろん関連する資格も取得しておくに越したことはありません。
特に、応募要件になっていることも多い「社会福祉士」「精神保健福祉士」は、国家資格であることも含め、取得しておけば就職・転職に大いに役立てられることでしょう。
求人を探す際は、「医療ソーシャルワーカー 求人 〇〇(地域)」などで検索をかけてみましょう。
数は少ないものの、いくつかの求人は見つけることができるはずです。
ただ、「医療ソーシャルワーカー」ではなく、「社会福祉士」「精神保健福祉士」で求人募集をかけているところもあるので、関連する職業はすべてチェックをしておいた方がいいかと思います。
求人の数そのものが少ないので、できるだけ多くの病院(求人)に応募した方がいいとは思います。
しかし、病院によっては求められる資質や仕事内容が異なる場合もあるので、応募する前に求人内容をしっかりとチェックしてから応募することをオススメします。
求められるスキルや心構えはなにか?
上項でもお伝えした通り、主な仕事は「相談・支援」となります。
つまり、相談者との“対話”が重要となってくるのです。
相手の考えや行動の背景をしっかりと理解し、細やかな配慮を行うことが求められます。
また、病気やその対処方法について、不安を抱えている相談者も多くいらっしゃいます。
そのため、共感や優しい言葉をかけることが必要な時もあれば、進むべき方向について自分の意見をはっきりと伝えることが必要な場合もあるのです。
このことから、「コミュニケーション能力」や「臨機応変に対応できる柔軟性」は必要不可欠なものとなります。
後は、医療や福祉に関する専門知識も必要となります。
このことから分かる通り、「経験」「資格(知識)」が業務を行っていく上で欠かせないものといえるのです。
必須となる資格はありませんし、新卒でも就職できる可能性はあります。
とはいえ、やはり資格や経験はあった方がいいに越したことはないので、多少遠回りになっても(人によっては)医療や福祉関係の仕事について、アピールできるものを増やしておくのもいいかもしれません。
お給料はどのくらいなの?
結論からいうと、お給料に関しては正式に発表されているデータはありません。
しかし「医療・介護・保育・福祉biz」内の求人情報をもとに算出したところ、平均給与は「230,000円ほど」という結果になりました。
年収で換算すると、「350万円~400万円」くらいとなります。
ただし、給与額に関しては、募集求人によってさまざまです。
経験や資格手当などを踏まえて「月給300,000円以上」という場合もありますし、諸手当込みで「200,000円程度」というものもあります。
もちろん、地域や勤務形態の違いによって変わることもあれば、経営母体の規模や経営状況などによっても給与に差が出ることがありますので、一概に「医療ソーシャルワーカーの給与は〇〇円」とは言えない状況です。
そのため、求人をお探しの際は、しっかりと給与や福利厚生の内容を確認することをオススメします。
ここでご紹介した内容は、あくまで参考程度にお考えください。
尚、医療ソーシャルワーカーは、公立の病院や保険所で勤務することもできます。
この場合は、別途「公務員試験」に合格する必要はありますが、こちらは公務員給与規定に基づいて給与が支給されるため、民間企業に比べても安定した収入が期待できるかと思います。
医療ソーシャルワーカーの良い点・気になる点について
どんな仕事でも、業務に携わっていく上でメリット・デメリットは存在します。
では、医療ソーシャルワーカーの良い点・気になる点は、どういったものが挙げられるのでしょうか?
この項目にて、ご紹介をしていきたいと思います。
「良い点」について
良い点を箇条書きにすると、以下が挙げられます。
◆土日・休日に休める
◆医療の知識を身に付けられる
◆予定を自分で込められることがある
◆多くの人と関わる中で、人から感謝されることが多い
良い点としてもっとも挙げられるのは、「スキルアップできる」「やりがいを感じられる」という点でしょうか。
また、土・日・祝に休めたり、自分で予定を決められたりすることもあり、仕事とプライベートをしっかり切り分けられるという点も魅力の一つに挙げられます。
加えて、公的機関で働くことができれば、収入や福利厚生がしっかりしていることが多く、安定して長く仕事を続けることもできるかと思います。
ただし、勤務する職場によって条件は異なるため、求人に応募する前に募集内容はしっかりと確認を取っておいた方が良いでしょう。
気になる点について
こちらも箇条書きにすると、以下が挙げられます。
◆業務内容が多く、残業も多いので大変
◆仕事の出来が経験値によるものが大きいため、実力の差が激しい
◆支援する患者を選べないので、関わり方が難しい患者を担当すると支援が大変となる
◆業務の優先順位を付けるのが難しいので、忙しくなってしまう
上項でもご紹介した通り、給与の額は勤務する施設によって大きく異なります。
「仕事量が多く仕事内容も大変なのに、給料は安い……」ということもあり、人によっては仕事と給料が見合っておらず退職していくという人もいます。
また、多くの方々の支援に携わることとなるため、業務に慣れるまでの間は、仕事とプライベートのオン・オフを上手く切り替えられず、生活バランスがうまく保てない人もいるのです。
加えてもう一つ。
病院に配置されている医療ソーシャルワーカーの数はまだまだ少なく、規模によっては「自分一人だけ」という場合もあり得ます。
そうなると相談できる相手が誰もおらず、一人ですべての悩みを抱え込んでしまうことにもつながり、自分自身が病んでしまう可能性もあるのです。
相談者の悩みは一人ひとり異なるため、ただ「話を聞いて終わり」とはなりません。
仕事量も多く、業務の幅も非常に広く、相談者はもちろんさまざまな機関と連携をとっていかなくてはいけないため、多忙になりがちな仕事とはいえるのです。
「将来性」について
医療の現場において重要な役割を持ち、患者さんやそのご家族にとって非常に便りになる存在……それが、医療ソーシャルワーカーです。
この仕事は、「相談・支援」を主な業務とし、さまざまな機関との連携・調整も行っていく必要があることから、機械にとって代わられる仕事にはなり得ません。
また、仕事の特性上、そして怪我や病気で悩む人はどんな時代にも必ず存在することから、「相談者がいなくなる=需要がなくなる」ということも考えられません。
このことから、医療ソーシャルワーカーの将来性はこれからも十分にあるといえるでしょう。
まとめ
以上が、「医療ソーシャルワーカー」についてのご紹介となります。
この仕事は、業務の幅が広く、相談者がいなくなるということもありませんので、将来性が十分にある職種といえます。
関心がある方は、ぜひ知見を広げて、医療ソーシャルワーカーへの一歩を踏み出してみてください。
ただし、やりがいが大きい一方で、大変なことも多いのが実情ではあります。
また、必須となる資格はないものの、資格や経験の有無が業務に大きく影響してくることも事実です。
人によっては、(資格取得を含め)しっかりと経験を積んでから医療ソーシャルワーカーへの道へ進むのもいいかもしれません。
資格や経験があれば、仕事の選択肢も大きく広がることとなります。
加えて、給与や福利厚生は企業によってさまざまに異なるため、就職・転職を希望される方は、まずはしっかりと求人内容を確認しておくことをオススメします。
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