現代の精神保健福祉士は、「心の問題を広く扱う専門家」としての需要が高まっており、勤務先もさまざまに存在します。
ただ、“勤務先が多い=仕事選びには困らない”という訳でもなく、色々と注意しておかなくてはいけない点もあります。
今回は“将来性”も含めた、精神保健福祉士の“求人・転職状況”について詳しくご紹介をしていきたいと思います。
精神保健福祉士の「求人募集の状況」について
インターネットおよび求人・転職サイトなどで「精神保健福祉士 〇〇」などと検索をすると、実に多くの企業や事業所がヒットします。
実際、精神保健福祉士の求人を出している機関や施設の種類は、時代を追うごとに増えています。
この項目では、まず現代の「求人募集の状況」や「求人検索の際に注意しておくこと」などをご紹介していきたいと思います。
求人数は多い?少ない?
結論から言うと、「地域によって差がある」となります。
というのも、精神保健福祉士という職業の特徴の一つとして“(比較的)離職率が低く、同じ職場で長く働き続ける人が多いため”が挙げられます。
元々、精神保健福祉士の勤務先は「医療機関」や「行政施設」が多く、勤務歴を重ねるごとに待遇(給与や福利厚生)が良くなっていったので、同じ職場で長く働き続ける人が多かったのです。
ただし、現在は「介護施設」「高齢者施設」「一般企業」など勤務先がどんどん増加していることから、特に“都心部”での需要が大きく、都心の求人募集はそれなりの数があると言われています。
逆に、地方では勤務先の多様化が進んでいないことが多く、年度替わりの時期や欠員が出ない限り募集が掛からないことも珍しくありません。
「未経験」からでもチャレンジできる?
◆「福祉施設」
◆「行政機関」
◆「司法施設」
◆「一般企業」
など、現在の精神保健福祉士は多岐に渡る領域で活躍することが可能です。
この時に気になるのは「未経験でも採用される可能性はあるのか?」という点ですが……。
結論、「未経験者の応募を歓迎している企業・事業所は多い」です。
試しに「精神保健福祉士 求人 未経験」などで検索をかけてみてもらえれば分かると思いますが、(特に都心であれば)“未経験者歓迎!”としている企業も数多く見受けられます。
ただし、「精神保健福祉士の資格は必須」となります。
この職種には、正社員・常勤だけでなく、アルバイト/パート/契約社員などさまざまな雇用形態での募集がされていますが、絶対に“資格は必須”です。
資格をお持ちであれば未経験でも採用される可能性はあるので、「資格は取得できたけど経験が……」という人も積極的に求人に応募していくといいのではないかと思います。
ちなみに、精神保健福祉士の国家資格を取得するためのルートは数多くあります(計11パターン存在する)。
この点については、以下記事にて詳細をご紹介しておりますので、よろしければこちらをご覧ください。
他の資格を所有することで、さらに採用率はアップする
仕事内容は勤務する施設によって多少変化しますが、基本は「精神上の障害を抱える人および家族の相談に乗り、社会参加のための助言や手助けを行う」ことが中心となります。
つまり、対象となるのは“心に病を抱えている人”です。
現代は、心の健康の重要性が非常に高まっており、方々で必要とされる職種となりましたが、他の資格も併せて取得しておくことで“業務の幅をさらに広げ、キャリアアップにも役立てることが可能”となります。
代表的なのは、「社会福祉士」の国家資格です。
他にも「介護福祉士」や「ケアマネージャー」の国家資格も併せて所有しておくことで待遇面がより優遇されたり、就職・転職時にも優先的に採用される可能性も高まるかと思います。
後は、高齢者施設などの場合、実際に介護を行うこともあるため「介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)」以上の資格を取得しておくのも良いかもしれません。
勤務先は多様に存在するので、自身が勤める勤務先の特徴を把握し「どんな資格が仕事に役立てられるか?」を考えて、資格取得に臨むのが良いのではないかと思います。
「雇用形態」は企業・事業所によってさまざまに募集されている
上記でもお伝えした通り、この仕事は「正社員」「常勤」はもちろんのこと「アルバイト/パート/契約社員」など、さまざまな雇用形態で募集がかけられています。
また「病院」や「高齢者入所施設」のような一部勤務先では“夜勤”や“夜勤専従”などの求人募集もあるため、自分のライフスタイルに合わせて雇用形態や勤務時間を(ある程度)コントロールすることが可能です。
◆ブランクがあるため、まずはパートから仕事を再開したい
◆家庭と両立したいので、時間に融通が利くアルバイトで勤務をしたい
もちろんすべてが自分の求めている通りにいくことはありませんが、ある程度なら自分の目的に合わせて働くことができるでしょう。
また、勤務先は多様に存在し、業務内容も勤務先によって多少の違いがあります。
- 各勤務先での特徴をしっかりと把握すること
- 分からないことがあれば、問い合わせや面接の際に質問をしてみること
分からないことを分からないままにせず、不明点を鮮明にした上で、勤務先を選ぶようにしてください。
尚、勤務先については、以下記事も参考にしてみてください。
「勤務先」を選ぶ際の要注意点について
ここまでに何度かお伝えしたように、精神保健福祉士の勤務先は多岐に渡り、それぞれで業務内容が異なります。
各勤務先での業務内容を違いを把握し、自分に合った勤務先を選ぶこと……も重要なのですが……。
それとは別に、もう一つ勤務先を選択する際に注意するべきことがあります。
それは、“企業規模”です。
上述にて「精神保健福祉士の離職率は低めであり、長く同じ施設に勤務する人が多い」と記載しましたが、それは「総合病院」や「行政機関」と言った“企業規模が大きく待遇が充実していること”が理由として挙げられるのです。
現在は、規模の大きさに関わらず、さまざまな企業・事業所が精神保健福祉士の求人募集を行っています(特に都心)。
規模が小さい企業・事業所であれば、その分だけ給与や福利厚生が悪くなる可能性があります。
また「規模が小さい=少人数で施設を回す」ということにも繋がるため、人手不足から労働環境もあまり良くない施設に出くわす可能性もあるかもしれません。
もちろん、“企業規模が大きい=安定・安心した職場ばかりではない”ではありますが、それでも規模が大きいほど安定した職場になる可能性は高いと言えます。
逆に、“企業規模が小さい=待遇が悪いに直結する訳でもない”ではありますが、規模が小さいほど労働環境があまり良くない施設が多くなってしまう傾向にあります。
加えて、“労働環境が悪い=離職率も高くなる”です。
離職率が高くなれば、空いた穴を埋めようと求人募集をかけることとなります。
そうなると「求人数は多いが、待遇が悪い求人も多い」という問題に陥る可能性もあるかもしれません。
(介護職などはこの典型例であり、常に人手不足と言われている)
今後、精神保健福祉士の求人数はさらに増加するかもしれません。
しかし、企業や採用情報はしっかりと確認し「良い会社かどうかを見極める必要がある」と言えます。
だからこそ、質問や不明点があれば、問い合わせや面接時に質問をすることが大切なのです。
また、企業のホームページを見て「どんな会社か?」を知ることも重要かと思います。
精神保健福祉士の「将来性」と「注意すべき点」について
前項でお伝えした通り、精神保健福祉士のニーズは確かに存在し、職域も広がり続けています。
今後も、より多くの企業・事業所で精神保健福祉士が必要とされることでしょう。
そのため、当然「将来性」も抜群にあり、今から精神保健福祉士を目指すのも良いかと思います。
ただし、要注意点が2つあります。
◆「決して楽な仕事ではない」こと
それぞれ、少し補足を加えておきたいと思います。
「勤務先選びは慎重に行う」こと
これは前項でもお伝えした通りです。
“勤務先が増える=労働環境の悪い会社に出くわす可能性も高くなる”ということに繋がります。
この仕事は、(人によっては)一般企業や学校などでメンタルケアに携わることもでき、広く「心の問題」を扱う専門家としての役割が期待されています。
仕事を通して多くの「心の問題」と触れ合っていくことで経験値が増え、より多くの人たちの心の問題を解決していけるようになるはずです。
しかし、その一方で「専門的な仕事を任せてもらえない」という職場も存在します。
また、「業務内容がハードなのに、それに見合った給与や待遇ではない……」というパターンもあります。
必要とされる数が増えれば増えるほど、こういった労働環境の悪い会社に出逢う確率も高くなってしまいます。
「精神保健福祉士として、しっかりとキャリアを積んでいきたい」と考える人は、できる限り企業規模の大きい、安定(安心)した職場を選ぶことが重要となります。
加えて、精神保健福祉士として「しっかりとした目標を設定する」ことも大切です。
勤務先は数多くあり、それぞれで業務内容に差異があるので、自分が求める精神保健福祉士になれるよう目標はしっかりと定めておくようにしてください。
「決して楽な仕事ではない」こと
以前に、「精神保健福祉士の向き・不向きについて」の際に記載しましたが、この仕事は誰にでもできるような楽な仕事ではありません。
精神保健福祉士が向き合う人は「心に病を持った人(精神障害者)」であり、その程度は人によって千差万別です。
意思疎通がうまくできない人はもちろん、妄想・幻覚・幻聴などに悩まされている人もいます。
そういう人たちに真摯に向き合い、粘り強く接し、社会復帰のお手伝いをしていくのです。
また、人間関係に悩まされることも多く、人によっては精神保健福祉士自身が心の病を患ってしまう場合もあります。
そもそも、国家試験を取得するためには学校に通って勉強をする期間も必要とします。
どんな学校に通うにしろ、多くの学費と時間を必要とするため、生半可な気持ちで通うこともできません。
“なる前”から“なった後”まで、総じて「覚悟」が必要な仕事と言えます。
この点には注意して、しっかりと精神保健福祉士のことを調べた(知った)上で、この仕事を目指すかどうかを決めてみてください。
まとめ
精神保健福祉士は“現在”も”将来”も確かな需要があり、今後はより必要とされる場面も増加していくと思われます。
将来性はバッチリで、実際に社会人として仕事をしている人が「精神保健福祉士」の資格を取得するべく学校に通っているパターンも増加しています。
しかし、決して楽な仕事ではなく、職に就いたはいいものの離職する人もいない訳ではありません。
そして、下手をすると今後はより離職率が増加していく可能性も否定はできません。
だからこそ、「なぜ精神保健福祉士になりたいのか?」「どんな精神保健福祉士になりたいのか?」という目標をしっかりと持ったうえで、「どんな職場で働くか?」を決めてみてください。
そうすれば、自分が求める職場で勤務できる可能性が高まるのではないかと思います。