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「退職金制度」ってなに?制度の種類やかかる税金、退職金の有無について解説します!

この記事は約7分で読めます。

「退職金制度」というものを耳にしたことがある人、または実際に「退職金」を受け取ったことがある人も多いのではないでしょうか。

その名の通り「退職する際に雇用主から退職者に支給される金銭」のことであり、どちらかというと“定年退職を迎えた従業員に対して支給するもの”といったイメージが強い人もいるかもしれません。

しかし、“必ずしも定年退職を迎えた従業員のみに支給されるもの”ではありませんし、そもそも“必ず支払わなければならない”と法律で決まっているわけでもありません。

加えて、退職金は受け取り時期や回数、支給元によっていくつかの種類にも分けられます。

退職金制度とはなんなのか。

退職金に税金はかかるのか。

企業にとって、退職金制度を導入するメリットはなんなのか。

今回は、こういった点について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。

「退職金」とはなにか?


これは、「退職手当」「退職慰労金」と呼ばれることもあります。

そして、この制度の正式名称は「退職給付制度」といいます。

これを略して「退職金制度」と一般的には呼ばれているのです。

退職金は、定年退職の際に支払われるイメージを持っている人も多いですが、それ以外でも支給の対象となります。

例えば、「自己都合での退職」「解雇を受けたとき」「従業員が死亡した場合」などです。

退職金の有無は、企業によって異なる

まず、この制度は日本だけに限ったものではありません。

ただし、「法定化されている国」「法定化されていない国」「法定化されていなくても習慣的に支払われる国」など国よってさまざまであり、支給金額や条件も国によって異なることとなります。

では、日本の場合はどうなのか。

結論を言うと、日本では「法定化されていない制度」となります。

実は、労働基準法には退職金の支給を義務付ける規定がありません。

そのため、「退職金の有無」「支給される金額」「支給条件」も、すべてが企業によって異なります。

ただ、比較的多くの企業がこの制度を導入してはいます。

例えば、厚生労働省が平成30年に行った「退職給付(一時金・年金)の支給実態」についての調査によれば、この制度を導入している企業は全体の「80.5%」とされています。

企業規模別にみると、以下の通りです。

◆企業規模1,000人以上:92.3%
◆企業規模300~999人:91.8%
◆企業規模100~299人:84.9%
◆企業規模30~99人:77.6%

ただし、上記の通りすべての企業で導入している制度ではないため、「退職金=必ずもらえるもの」と勘違いしていると、いざというときに手当が支給されない可能性もあります。

退職金の有無を知りたい場合は、「就業規則」「賃金規則」を確認してみてください。

就業規則の「退職規定」では、退職金の支払い日や支払われる金額など、退職金についての詳細が記載されているはずです。

退職金の「種類」について


これは、受け取り時期や回数・支給元などによって以下の4種類に分けられます。

◆「退職一時金制度」
◆「退職金共済制度」
◆「確定給付企業年金制度」
◆「確定拠出年金制度」

この項目で、それぞれの特徴についてご紹介をしていきます。

「退職一時金制度」とは?

端的に言うと、「退職時に一括で法人から支給される制度」のことをいいます。

これは、企業の退職規定によって定められており、“退職者がその条件を満たす場合”に支払いが行われることとなります。

求人情報を見ていると、「退職金あり:勤続〇年以上」などと記載されていることがありますが、これが該当します。

この退職一時金の算定方法は、以下の3つの方法が取られます。

1.「定額制」
2.「給与比例制」
3.「ポイント制」

ただし、この制度は、会社側に事前積み立ての義務がありません

例えば、計画的な資金準備が行われていない場合、倒産時などに十分な退職金が支払われないことがあるのです。

「退職金共済制度」とは?

これは、「事業主と退職金共済機構が契約を結ぶことによって、事業主が退職金を計画的に準備できる制度」のことです。

特に有名なのは、中小企業を対象にした「中小企業退職金共済(通称:中退共)」でしょうか。

最大の特徴は「会社が倒産したとしても、共済から退職金を受け取れる」という点です。

また、“退職金=正規雇用が受け取れるもの”というイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、こちらの場合は契約社員・パート・アルバイトなどの場合であっても(雇用契約の内容によっては)加入できるところがあります。

「確定給付企業年金制度」とは?

これは、以下の2種類が存在し、従業員が受け取る給付額があらかじめ約束されています。

◆「規約型」:生命保険会社や信託会社などに運用や管理を委託する
◆「基金型」:企業が別法人として設立した企業年金基金が、資産の管理運用を行う

最大のメリットは、退職金を「一括給付」だけでなく「年金払い」で受け取ることができる……という点にあります。

「確定拠出年金制度」とは?

これは、国が定めた確定拠出年金法による年金制度であり、「会社が毎月掛金を拠出し、従業員が年金資産を運用する」こととなります。
(企業DCとも呼ばれる)

上記「確定給付企業年金制度」との最大の違いは、「掛金の運用方法は従業員が選択し、支給される金額も運用結果によって決まる」ということです。

つまり、運用リスクは“従業員が負う”ことになるのです。

運用成績が悪くても企業が穴埋めをする必要がないことから、“企業側のリスクを減らせる制度”として導入する企業が増えています。

退職金に「税金」ってかかるの?

結論から言うと、受け取り方に応じた「税金」がかかることとなります。

【「一時金」として受け取る場合】
◆所得の種類:退職所得
◆課税方法 :申告分離課税
◆確定申告 :勤務先で手続きをすれば不要

【「年金」として受け取る場合】
◆所得の種類:雑所得
◆課税方法 :総合課税
◆確定申告 :一定要件を満たせば不要

このようになります。

ただし、「退職金=退職金は長年の勤労に対する報償」といった意味もあることから、(課税額が大きくなりすぎないように)「退職所得控除」というものが適用され、税負担が軽くなるようにも配慮されてはいます。

これは、勤続年数が長くなるほど控除額が増えるようになっており、長く務めた人ほど有利になる設計となっています。

企業にとって「退職金制度」を設けるメリットとはなにか?


ここまでにご紹介した通り、退職金は「法律で定められた制度」ではありません。

つまり、この制度を設けなくても企業側にとっては何の問題もないのです。

では、なぜ退職金制度を設ける会社があるのでしょうか。

企業側が制度を設けるメリットには、大きく以下の2つが挙げられます。

①「採用活動で優位に立てる可能性がある」
②「従業員の勤続年数が長くなる傾向にある」

まず①ですが、退職金の有無は、就職・転職活動をする上での重視する情報の一つに挙げられます。

極論を言うと、労働条件や給与・ボーナスが同等の「A社」「B社」があった場合、「A社」には退職金制度があり、B社には退職金制度がなかったとしましょう。

就職・転職する側としては、どちらの企業に応募したくなるでしょうか。

条件だけで見るならば、「A社」の方に応募する人が多いと思います。

退職金の有無で、得られる所得には大きな差が出ます。

このことから、採用活動で優位に立てる可能性が高まるのです。

そして②ですが、退職金制度を設けている企業の”退職金の支給条件”は、一般的に「勤続〇年以上」であることが多いです。

「どうせ退職するならば、退職金の支給条件を満たしてからの方が良い」と考える人の方が多いため、必然的に従業員の勤続年数は(退職金制度を設けていない企業に比べて)長くなる傾向にはあります。

また、退職金を一時金として支給すると「退職所得控除」により勤続年数が長いほど非課税額が大きくなり税負担が軽減されるため、ボーナスよりも税金の面で有利にもなります。

もちろん、退職金の有無で企業の良し悪しを決めることはできません。

また、実際に働いてみなければ、長く勤務できる環境かどうかも分かりません。

とはいえ、“退職金の有無”が、就職・転職時に参考にする情報の一つとなることに変わりはないのです。

働く側としては、当然“無いよりあった方が良い”のですから……。

まとめ

以上が、「退職金」に関するご紹介となります。

退職金がもらえるかどうかは、会社の就業規則や退職規定によって変化します。

「退職金=退職時に必ずもらえるもの」と勘違いしていると、いざというときに会社から支給されない可能性もあるため、事前にしっかりと退職金の有無や支給の条件などを確認しておくことをオススメします。

また、近年は「年功序列の終身雇用」が薄れています。

人や企業によっては、「退職金制度そのものが適切ではない」と考える場合もおり、退職金制度を“あえて導入しない”企業も少しずつ増えています。

その分、個人の成果に対する報奨金を支給したり、部門や会社の業績に応じたボーナスを手厚く支給したりすることで、退職金制度がなくても、それ以上の効果を出せる工夫をしている企業もあるのです。

退職金の有無が企業選定の基準の一つになる場合もありますが、それだけでなく、さまざまな情報を収集し、自分に合った企業を選定できるよう工夫をしてみてください。

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