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【男性版産休】男性も育児休業が取れる?新たな制度「出生時育児休業」について解説!

この記事は約13分で読めます。

これまで、「産休」「育休」について、別の記事にて詳細をご紹介してきました。

≪産休について≫

≪育休について≫

「育休」に関しては、女性だけでなく男性も取得することが可能ですが、まだまだ男性の育休取得率は低く現状を改善するために法改正も行われています。

その一つが“男性版産休”とも言われる、「出生時育児休業」というものです。

今回は、この制度について現状判明していることをご紹介していきたいと思います。
※この制度が導入されるのは、2022年10月を予定しています※

なぜ「男性の育児休暇取得率」は低いのか?


以前より、制度としては「男性も育休(育児休業)を取得できる」とされており、男性の育休は国(政府)としてもかねてより推進していました。

元々、国としては「2020年までに“13%”の取得率を目指していた」と言われています。

しかし2019年度の取得率は、たったの“7.48%”しかなく、国の推奨とは裏腹に取得率は低迷していました。

それはなぜか?

理由は、大きく2つ挙げられます。

①「育休は女性が取得するもの」という“先入観・固定概念”が根付いているから
②給付金だけで生活することが厳しく、“家族の生活を維持しなければいけない”から

順番に説明していきたいと思います。

①先入観や固定概念

今でこそ大分減ってきている者の、それでも「育休は女性が取得する者」という“先入観・固定概念”が現代社会に深く根付いています。

数は少ないものの、今でも「育休は男性でも取得できるの!?」と、その制度の意味を正しく理解できていない人もいらっしゃるかと思います。

特にお年を召している方にその傾向は強く、「(男性が)育休の申請をしても、拒まれてしまった」という例も少なくはありません。

②家庭の生活を維持するため

女性の場合、妊娠・出産・育児……と、否応なしに仕事を休業or退職せざるを得ない状況に陥ってしまいます。

少なくとも「産後休暇」は絶対に取得しなければいけない“義務”があり、原則として“8週間”……条件を満たしたとしても“6週間”は絶対に休業しなくてはいけません。

この理由は大きく2つあります。

1つは、「子どもの成長(育児)のため」です。

保育所は乳幼児(0歳)から預けることは可能ではありますが、それでも生まれたての子どもに対して、親が最大限の愛情を注ぐのは当然のことであり育児を放棄するわけにはいきません。

そしてもう1つは、「女性の肉体的・精神的な回復のため」です。

出産は、男性からは想像も絶するほどに、女性の肉体的・精神的な負荷が大きくかかります。

ホルモンバランスも大きく乱れることから非常に繊細な時期でもあり、「出産・育児によるうつ病」にも多大な注意を払っておく必要があるのです。

「女性が休業を余儀なくされている中で、男性側まで育児休業を取ってしまうとどうなるか?」

よほど生活に苦労がない(生活に余裕がある)人でもない限り、これまで通りの生活を送ることは困難となるはずです。

確かに、産休・育休には、申請をすることで「給付金」を受給できる可能性があります。

しかし、本来受け取れるはずの給与”全額”を受け取ることはできません

例えば、「育児休業給付金」の場合は、本来の給与の“67%”の支給額となってしまいます。

このことから、男性側は“育児休暇を取得したくても、生活を維持するために取得ができない”という状況に陥ってしまうのです。

「家庭(子ども)のことを母親に任せ、男性は働いて収入を家庭に入れる」

この構図が、現代にも深く根付いてしまっているのです。

特に、2020年からは「新型コロナウイルス」の影響もあって、生活に苦しむ家庭も急増しています。

いくら「給付金が支給される」であったとしても、申請してすぐに受け取れる訳ではありませんし、支給額にも限度があります。

だからこそ、“家庭のために否が応でも働かざるを得ない(=育休を取得できない)”という家庭が増加傾向にあるのです。

男性の育休取得率も”増加傾向”にはある

前項でお伝えしたように、確かに男性の育児休暇取得率は低いです。

そして、国(政府)が目標としている育児休業取得率は、下記の通りです。

【政府目標】
令和2年(2020年):“13%”
令和7年(2025年):“30%”

「今の状態では、令和7年の目標も達成が難しいのではないか……?」

確かに、この数字だけを見るとそう感じる人も多いかとは思います。

ただ、これまでの男性の育休取得率を並べてみると、“取得率が増加傾向にある”ことも事実ではあります。

以下は、厚生労働省が公開している「男性の育児休業取得促進等に関する参考資料集」に記載されている表となります。


出典:厚生労働省-男性の育児休業取得促進等に関する参考資料集

表を見れば一目瞭然ですが、“ほぼ右肩上がり”で取得率は増加しています。

後述でご紹介する“改正される男性版育休制度”のことも考えると、今後はより一層、「男性の育児休業取得率も増加していくのではないか?」と考えられています。

なぜ、男性が育児休業を取得する必要があるのか?


「結婚すれば、女性は家庭に入り・男性は外で仕事をして収入を家庭に収める」

確かに、古くはこの考え方で成り立っていた時代もありました。

しかし、この考え方は“時代遅れ”な考え方であり、今やその概念はほぼ完全に崩壊しつつあります。

国(政府)が推奨するほどに、男性の育児休業を取得を求める理由は、以下の4つが挙げられます。

①女性の“社会進出(活躍)”を求めているため
②女性の“産後鬱”を防止するため
③男性だけの収入では、“生活が成り立たない”
④子どもの“育児”のため

それぞれ、もう少し詳しくご紹介していきましょう。

①女性の”社会進出(活躍)”を求めているため

「女性だから……」
「男性だから……」
などどいう括りでひとまとめにするのは土台おかしな話ではありますが……。

ただ、女性は男性に比べて、非常に“繊細”かつ“丁寧”な一面があり、“女性だからこそ出てくる発想”というものがあるのも確かです。

だからこそ、女性ならではのオリジナリティな発想から新たな“何か”が生まれることを期待して、女性の社会進出が期待されているのです。

②女性の”産後鬱を防止するため”

上述でもお伝えしたように、出産・育児というものは女性の肉体的・精神的な負担が非常に大きいものです。

女性にとっては非常に繊細な時期でもあるため、場合によっては“産後鬱”に発展してしまう可能性も否定はできません。

だからこそ、男性が育児休業を取り“母子・家庭のサポートをする”ことで、産後鬱の防止に繋がる可能性があるのです。

③男性の収入だけでは、”生活が成り立たない”

古い時代……例えば「バブル期」などであれば、男性だけの収入で家庭を生活を維持することができ、「結婚すれば、女性は家庭に入り・男性は外で仕事をして収入を家庭に収める」ということも実現できたと思います。

しかし、時代は変化しており、家庭によっては「男性の収入だけでは、生活が成り立たない」という家庭も多くあるのが事実です。

正社員としてではなくても、「生活のために……」と、アルバイトやパートで仕事と育児を両立する女性も少なくありません。

④子どもの”育児”のため

当たり前のこと……と言えばそれまでですが、子どもを育てるのは”親の務め”です。

そして、育児は”母親だけがするものではない”でもあります。

実際問題、家事・育児の負担が“女性に偏りがち”なのは事実なのです。

しかし、「仕事/家事/保育」と全ての要素を女性一人で行うことはほぼ不可能であり、仮に行えたとしても女性側の負担は大きなものとなります。

だからこそ、“男性の家庭への積極的な参加”が求められており、これが国が男性の育児休業を推進する理由となっています。

時代は変化しています。

「結婚すれば、女性は家庭に入り・男性は外で仕事をして収入を家庭に収める」

この考え方がまかり通る時代は、もう終わってしまったのです。

男性版産休「出生時育児休業」について


ここからは、男性版産休「出生時育児休業」について詳しく解説していきたいと思います。

施行予定は”2022年10月”から

この記事の冒頭でも記載した通り、この男性版産休はまだ施行が開始されている訳ではありません。

この制度は、2021年6月に「育児・介護休業法」の改正案が衆院本会議で可決・成立しました。

そして、翌年2022年10月を目途に施行を開始する予定となっています。

ちなみに、現行の育休制度と合わせて利用することも可能です。

“取得義務”はあるの?

まず、男性(夫)側に、産休取得が義務付けられる訳ではありません

ただし、企業側から“育休取得を働きかけるように義務付けがされる”こととなります。

現行の(男性の)育休制度は任意であり、企業側も“努力義務”にとどまっています。

しかし“2022年4月から”は、育休制度の“周知”“意向確認”「義務」となります。

制度の概要は?

この男性版産休(出生時育児休業)の特徴は、以下の通りです。
(後述で、現行の育休制度と比較しています)

“男性(夫)のみ”利用可能
②お子さんの出生後、8週間以内に“計4週分”の休みを取得することができる
“2回まで分割”して、取得が可能
④申請期限は“休業の2週間前”までとなる
⑤「社会保険料」が免除され、「育児休業給付金」によって通常の育休制度と同じく“実質8割”が保障される(8割が最大)

このようになっています。

現行の育休制度との違いはなに?

現行の育休制度と、2022年10月施行予定の男性版産休との違いを表にしてまとめてみました。

以下をご覧ください。

最大の特徴は、「分割してまとまった休みを取れるようになった」ということでしょうか。

元々、現行の育休制度は“分割して休業を取得することが不可能”でした。

しかし、今回の法改正により「4週間の育休を2回に分けて取得できるようになった」ため、新たな制度(男性版産休)と合わせて、“最大4回”に分割してまとまった休みを取ることができるようになったのです。

また、申請期限も緩和され、“1ヵ月前”から“2週間前”へと短縮されています。

加えて、休業中の就業についても条件が緩和されており、「労使協定を結んでいる場合のみ」、労働者が合意した範囲での休業中の就業も可能となっています。
(現行の育休制度は、変わらず就業不可)

社会保険料免除や給付金も受けられることから、これまで以上に男性の育児休業が取得しやすくなったと言えるのではないでしょうか。

これで、”男性の育休取得率は増加する”のか……?


出産後の女性の負担の軽減や、女性のキャリアの継続・就業率の向上などが見込まれることから、法改正による男性の育休所得率の向上は、多方面から期待されています。

また、男性側の家事や育児への関りが高い夫婦であるほど、“2人以上の子どもを望む傾向”があり、少子化対策にも寄与するとも言われています。

しかし……上記だけを見れば良い面が強調されてはいますが、本当にそれだけなのでしょうか?

育休をより取得しやすくするために、注意しておくべき点は以下の3つが挙げられます。

①生活面を危惧するという点
②「周りに迷惑を掛けてしまうのでは……」という懸念
③「マタハラ(バタハラ)」への注意喚起

順に説明していきましょう。

①生活面を危惧するという点

申請を行うことで、現行の育休と同じく「育児休業給付金」を受け取ることができます。

また、条件次第ではありますが、育休中に就労することも可能ではあります。

しかし、やはり給付金は“本来の給料の全額を受け取れる訳ではない”ですし、育休中に就労してしまっては“育休を取得している意味もあまりない”と言えるのではないでしょうか。

育休自体は確かに取得しやすくはなり保障もありますが、現在は「新型コロナによる生活苦」も問題視されていることから、そう簡単に「育休を取得する」という選択ができる男性(夫)も多くはないのでは……と考えられています。

②「周りに迷惑を掛けてしまうのでは……」という懸念

企業の多くは「人手不足」が問題視されており、特に優秀な人材の確保が課題となっています。

少人数で運営している企業であればあるほど、いくら義務とは言え「(一時的とはいえ)人出がさらに減る」という問題に発展しかねません。

加えて、育休の利用者側(男性)も少人数の職場であれば「自分が休むことで、会社の人達やお客様に迷惑を掛けてしまうのではないか……?」ということを気にして、“育休を取りたくても、取りづらい”環境となってしまうのではないかと考えられています。

これは、現行の育休制度であっても同じことが言えます。

企業側だって慈善事業で会社を運営している訳ではありません。

企業として、そして会社で働く従業のためにも、売り上げを伸ばしていかなくてはいけないのも事実なのです。

この「人手不足」という根本的な問題を、どう改善していくかも今後の課題の一つとなるのではないでしょうか。

③「マタハラ」への注意喚起

別の記事で「産休」や「育休」に関する紹介をした際にも記載しましたが、マタハラというのは「女性の妊娠・出産を理由に行われる”嫌がらせ”」のことを言います。

上記のように書くと、“対象は女性なのか?”と感じる人もいるかもしれませんが、これは男性側でもマタハラを受ける可能性があるのです。

その最大の理由は、「男性が育児休暇を取ることへの理解不足」が挙げられます。

「妊娠・出産をするのは女性でしょう?なぜ男性が育児休暇を取る必要があるの?」

このような考えが、まだ現代社会の人々の意識にも深く根付いてしまっているのです。

上述のように、企業は人手不足が顕著であり、多くの企業(部署)が少人数でやりくりをしています。

「この人出が足りない現状で、男性が育児休暇を取るとは何事か!」と理解を示さない人も実際に存在するのです……。

また、一定の役職についている人が育児休暇を取得する場合、その人の代わりとなる人物を用意する必要があります。

そうなれば、育休から復帰した際に「今まで自分が担当していた仕事を他の人に取られてしまった……」となる場合もあり得ます。

つまり、“役職を降下させられる可能性もある”ということです。

ちなみに、この「マタハラ(正式名称:マタニティハラスメント)」は女性側につけられているもので、男性版のマタハラは「バタハラ(正式名称:バタニティハラスメント)」と呼ばれています。

企業側の「理解」と「呼びかけ」が重要である

家庭の生活のことを除けば、男性側が育休を取得しないメリットはありません。

国(政府)が推奨している通り、母子や家庭のために男性も積極的に育休を取得いくことをオススメいたします。

ただ、上記でご紹介した通り「育休を取りたくても、取りづらい状況にある」ことも事実なのです。

これは、企業側が「理解を深める」努力をしていく必要があるのではないかと思います。

「育休は男性が取得しても良いものである」むしろ「家庭のために積極的に取得するものである」という認識を持ち、それを従業員にしっかりと伝える(環境を整備する)こと。

そして、「休暇取得中の”業務体制”をしっかりと構築する」こと。

最後に、「育休(男性版産休)を取得する従業員を守る体制をしっかりと構築する」こと。

これは、男性版産休のみならず、女性の産休・育休においても同様のことが言えます。

今のままでは、2022年に男性の育休(呼びかけ)が義務化されたとしても、取得率の大きな増加は見込めないかもしれません。

この点をどうしていくかが、今後の大きな課題の一つとなるのではないでしょうか。

まとめ

以上の通り、現在の男性の育休取得率の低さを懸念して、国(政府)は「より男性が育休を取得しやすくなるように法改正を進めている」状態です。

それと同時に、今回の法改正で企業および事業主に対する規定も増加しています。

今後は、より一層“職場レベル”で仕事と育児の両立を実現するためのサポートをしていくことが求められることとなります。

尚、最後にもう一つだけ意識しておかなくてはいけないことがあります。

それは、男性側が「育休=母子や家庭のサポートを積極的に行うこと」です。

男性の育休取得率が増加しても、結局男性が母子や家庭のサポートを行い……つまり、ただリフレッシュするためだけの“名ばかりの育休”になってしまっては何の意味もないからです。

こればかりは、国や企業がどれだけ尽力してもどうすることできず、“男性(夫)の意識の問題”となります。

当たり前のことですが、“子どもを産んで終わり”ではありません。

「子どもを立派な大人に育て上げること」が、親としての最大の責務なのです。

この点については、正しい意識・知識を持ち、家庭内できちんと話し合うことが大切なのではないかと思います。

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