以前に、「看護師の仕事と子育てとの両立」についての記事をアップしました。
そしてその際に、仕事と子育てを両立させやすい仕事の一つとして、「訪問看護」をご紹介させていただいたのですが……。
確かに、比較的“日勤のみ”であることが多く、看護師の資格を活かして比較的“高収入”を得ることも可能な職業ではあります。
(勤務時間は給与は事業所によりけりではありますが)
ただ、訪問看護(もしくはその他の一部看護業務)には「オンコール勤務」という看護師ならではの独特な勤務形態が存在します。
この、
「オンコールと子育てを両立することはできるのか?」
そして、
「両立する際の注意点は何か?」
今回は、このような部分について詳しくお話をしていければと思います。
そもそも「オンコール」ってなに?
「オンコール勤務」についても以前に別の記事で詳しくご紹介しておりますので、詳細はそちらをご覧いただければと思います(以下リンクより)。
「オンコール勤務」の働き方・特徴・オンコール時の過ごし方について解説!
オンコール勤務のことを端的に紹介すると……、「事業所がお休みの日や夜間の緊急案件に対応できるよう、看護師を”待機”させておく勤務形態のこと」を言います。
オンコール勤務は、基本“自宅待機”であり、お酒を飲んだり遠出をしたりと言った“業務に影響を及ぼす行為以外”であれば、普段のお休みとほぼ変わらない生活をして問題ありません。
そして、オンコール業務は多くの訪問看護ステーションに導入されている制度であり、特に「常勤」であればほぼオンコール勤務は“必須”となります。
オンコールを経験したことがない人からすると「利用者から緊急連絡があるまでは、自宅待機(日常生活を送る)で良いんでしょう?」と感じるかもしれませんが、それは大きな間違いです。
◆緊急訪問の必要があれば、即座に利用者のもとに駆け付けなくてはならない(場合によって電話応対だけで済む場合もある)
◆夜中であっても、連絡があれば出勤の必要がある
そもそも、「連絡がくるかどうかも分からないのに、ずっと待機していなくてはいけない」というのは中々にストレスを感じるもので、オンコール勤務を苦手に感じる看護師さんも少なくはありません。
そう、子育て中の看護師さんは、上記のようなストレスが掛かる中で、“子育ても合わせて行っていく”必要があるのです。
子育てだけでも相当に神経をすり減らします。
これらの点に不安を感じて、看護師に復職することをためらう方もいらっしゃるのです。
オンコール勤務を行っている事業所は多いの?
結論から言うと、“およそ9割弱”の訪問看護ステーションが、オンコール勤務を行っていると調査で判明しています。
(全国訪問看護事業協会研究事業の調査による)
例えば、平成27年度だと、
◆24時間対応体制加算(医療保険)の届出をしている事業所は“85.4%”
全国の訪問看護ステーションの多くが届け出を出しているという結果が分かっています。
訪問看護は、夜勤がほとんどがない代わりにオンコール勤務を導入するところが多いため、特に常勤で働くのであれば、オンコールは避けては通れない道となるでしょう……。
子育て中でも、オンコール勤務は「できる?」「できない?」
こちらも結論から言ってしまうと、「子育てとオンコール勤務の両立は、”可能”」です。
もちろん“子育てをないがしろにしている”訳ではなく、かと言って“いい加減な仕事をしている”訳でもありません。
実際に、家事と子育てをしながら、訪問看護のオンコール勤務を行っている看護師さんもたくさんいらっしゃいます。
ただし、両立していくためには、若干の工夫が必要ではあります。
事項から、その内容をご紹介していきましょう。
子育て中のオンコール時に注意すべき”3つ”のこと
気を付けるべき点は色々とあるのですが、ここでは大きく“3つ”に分けてご紹介をしていこうと思います。
その①:子どもの”預け先”をいくつか確保しておくこと
利用者さんから電話が掛かってきた際、電話応対だけで済めば問題はありませんが、時には「緊急訪問」しなければいけない時もあります。
そうなった時、もし“子供が留守番のできない年齢だった場合”、そのまま置いてけぼりにすることはできません。
それに、小学生になり多少一人で留守番ができる年齢になってきたとしても、現代は物騒な世の中なので「一人で留守番をさせるのは怖い……(危険)」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
そういった時に、「預け先を”複数”確保しておくこと」が大切です。
「保育園」や「学童保育」を利用するのも良し、もし自身や配偶者の両親が近くいらっしゃれば、オンコール勤務時に預かってもらうのもいいかと思います。
もしくは、近隣や信頼できる友人に事情を説明して一時預かってもらうのも良いかと思います。
この時に大切なのは、預け先を“複数”確保しておくことです。
1つだけだと、例えば「いつもお願いしていた両親が、旅行で留守にしていて預けることができない」などの不足の事態に陥る可能性だってあるからです。
選択肢は、複数持っていた方が良いでしょう。
その②:家事を済ませておくorお願いすること
どちらかというと、これはオンコール当日の問題ではなく、“普段からの積み重ね”と言えるかもしれません。
というのも、オンコールで緊急出動が必要となる件数はさほど多くはなく(施設によりけりですが)、基本は“待機or電話応対のみ”で済むことがほとんどです。
とはいえ、だからと言って気を抜くことはできず、必要があればいつでも出勤できるよう準備しておかなくてはいけません。
夜中なら、夕食も済ませているでしょうから家事の心配をする必要はありません。
しかし、“夕方や早朝の緊急出動”となれば、話は別です。
ある意味、大人なら自分のご飯分くらいどうとでもできます(自分で用意できる)し、最悪スーパーの惣菜やコンビニの弁当でもいいでしょう。
でも、お子さん……特に乳幼児ならどうでしょうか?
「緊急出動が入ったから!ご飯はしばらく我慢してね!」とは、口が裂けても言えません。
だから、“事前に準備をしておく必要がある”のです。
複数人の料理を作る機会が多い人なら理解しやすいかと思いますが、基本は“仕込み=作り置き”しておくと、いざという時に困らなくてすみません。
- 必要な食材を切り分けて冷凍保存しておく
- 一度に大量に調理をして、小分けして冷凍保存しておく
- 夕飯と翌朝の朝食分をまとめて準備or調理しておく
もしくは、配偶者(奥様or旦那様)やご両親が近くにいらっしゃれば、事情を説明し調理をお願いする……なども選択肢に入るかと思います。
とにかく、オンコール勤務の当日に急いで家事をしようとすると、反って疲弊しますし、緊急連絡によっては準備もままならないまま出動する羽目になる可能性もあります。
できるだけ事前に準備を済ませておき、オンコール当日は手を抜いたり調理を手伝ってもらったりすると、あなた自身の負担が楽になると思います。
その③.”周囲”の理解を得ること
“周囲”と一言でいってもその範囲は広く、多くの人に助けを求め・理解を得ることが大切です。
◆自身or配偶者の両親や親戚
◆職場で一緒に働くスタッフ
◆保育園や学童保育などのスタッフ
などなど……。
周囲に、(話せる範囲で)仕事や家庭の事情をお伝えし、理解を得ることができれば、働きやすい環境になる可能性もあります。
例えば、家族の帰りが遅い日を避けてオンコール勤務をシフト調整してもらえたり、配偶者が家事や育児の担当する時間を増やしてくれたりなどです。
病院などと異なり、訪問看護ステーションは比較的融通を利かせやすい職場ですし、職場内のスタッフも子育てを経験している方が多いので、理解は得やすい方かと思います。
絶対に「無理」だけはしないように!
ここまでにお話したように、“周囲の理解を得ながら・一工夫すること”で、オンコールと子育ての両立は可能ではあります。
ただ、以下の点にはご注意ください。
◆絶対に「一人で」抱え込まない
◆身内やステーションのスタッフに、きちんと相談をする
子育てだけでも、相当に神経をすり減らします。
それに加えて、訪問看護やオンコール勤務まで行うのですから、両立しようと頑張っている看護師さんの負担は相当なものとなります。
「まだ、大丈夫」と無理をせず、もし何かしらの違和感を感じたのなら、必ず身内や訪問看護ステーションのスタッフ(責任者)に相談をしてください。
絶対に、「一人で悩みを抱え込まないでください」。
上記でもお伝えしたように、訪問看護の仕事は融通が利きやすく、相談すれば意外と(?)話を通してくれることもあります。
オンコールにしてもそうです。
“常勤=オンコールがある”に近いものはありますが、“必須ではありません”。
オンコール勤務ができるに越したことはありませんが、それで体調を崩して退職となれば、貴重な戦力がいなくなるので、ステーション側としても困ってしまいます。
だから、オンコールができなくても、歓迎してくれるステーションもたくさんあるのです。
それに、看護の業界は女性の勤務割合が高く、独身の若手看護師から子育てを終えたベテラン看護師まで様々な人がいます。
子育てや仕事との両立に困ったことがあれば、相談すれば味方(力)になってくれる人もたくさんいます。
あなたは、決して“一人ではない”ので、何かあれば、必ず誰かに相談してみるようにしましょう。
仮に解決に時間が掛かることだったとしても、話を聞いてくれるだけでも気持ちはスッと楽になるはずです。
もう一度言います。
「あなたは、一人ではありません」
「一人で、抱え込む必要もありません」
何かあれば、必ず近しい人に相談して、一人で悩まないようにしてくださいね。
まとめ
今回ご紹介したのは、どちらかというと「訪問看護に焦点を絞ったオンコール勤務との両立」となります。
オンコール勤務がある看護師の仕事は、訪問看護だけではなく、例えば手術室や老人保健施設など他にも様々な事業所で採用されています。
まずは、自分の勤めている企業であれば、先輩スタッフに「どういう風に両立してきたか?」を相談してみましょう。
そして、もしこれから“求人を探す”という方は、極力「オンコールや夜勤のない職種」を選ぶようにしましょう。
(以前に記事でご紹介しています)
そして、もし諸々の事情でオンコール勤務を行うことになった場合、周囲の理解や協力を得つつ、まずは勤務してみる。
その後、もし何か困ったことや悩みがあれば、“一人で悩まず・誰かに相談する”ようにしてください。
もし正社員として勤務している方がいらっしゃれば、場合によってアルバイトやパートに雇用形態を変えるのも一つの手段かもしれません。
多様な働き方ができ、比較的融通も聞きやすいのが看護業界の特徴です(共通の理解を得やすい)。
「働き方」も「正解」も、”一つ”ではありません
是非、自分の合った働き方で、仕事と子育ての両立を行ってみてください。