古くより多くの人々に愛され、飲用されている「お酒」。
もちろん、未成年者の飲酒は法律で禁止されていますし、そもそも「お酒が好きじゃない」という方もいらっしゃると思います。
とはいえ、飲み会の場や自宅でも「お酒を飲むことが好き!」という方も少なくはないはずです。
ただ、“お酒は飲んでも飲まれるな”という言葉があるように、飲みすぎれば体調に異変が起こりますし、健康にも害を及ぼしてしまいます。
なぜ、お酒を飲むと「酔う」のか。
そもそも、「酔う」とはどういう状態なのか。
そして、お酒を飲むメリットやデメリットはなんなのか。
今回は、こういった「お酒」に関する内容をご紹介していきたいと思います。
なぜお酒を飲むと「酔う」の?
お酒を飲むと、「酔い」ます。
この、“お酒を飲むと酔う”という理由を明確に理解できる人は少ないです。
まずは、酔いのメカニズムからご紹介していきましょう。
酔いのメカニズムについて
お酒を飲むと、アルコールは「胃:約20%、小腸:約80%」で吸収されて血液に溶け込み、肝臓に運ばれます。
そして肝臓でアルコールの分解が始まるのですが、すぐには分解されず、心臓や脳など全身に運ばれることとなります。
血液によって脳に到達すると、“脳を麻痺させ酔った状態”を作ります。
これが、「酔う」ということなのです。
お酒を飲んだ(酔った)状態で、車やバイク・自転車の運転をすることは「飲酒運転」として法律で禁止されていますが、その理由は「酔う=脳が麻痺している=正常な判断ができない」からです。
その結果、悲惨な交通事故を引き起こし、無関係な人を巻き込み、最悪命を奪う可能性も起こり得ます。
アルコールは、量に関係なく、摂取すれば必ず酔いが発生します。
「少しだけだから……」「自分はお酒に強いから……」は、過信でしかありません。
周囲の無関係な人たちに迷惑がかかるので、飲酒後の運転は絶対にしないようにしてください。
酔いはどのくらいでさめるの?
酔い方には個人差があり、酔いが回りやすい・酔いがさめやすいといった程度も、人それぞれです。
上記の通り、アルコールが脳に到達し“脳を麻痺させる”ことで酔いが発生するのですが、必ずしもすべての人がお酒を飲んですぐに酔うわけではありません。
飲んだアルコールは、時間をかけて肝臓で分解されていくのです(分解しきれなかった血中アルコールは、肝静脈を通って心臓へ送られ、ここから全身を巡り、再び肝臓に戻って分解される)。
ただし、「体重の重い人=血液が多い人」ほど、血中アルコール濃度は低くなります。
一般的に、体重60kg~70kgの人のアルコール処理能力は、1時間に純アルコール約5gとされています。
上記をお酒に換算すると「ビール 中瓶約1/4本」「ウイスキー ダブルで約1/4杯」とされており、つまりビール中瓶1本やウイスキーダブル1杯のアルコール処理には“約4時間”がかかる計算となるのです。
もちろん、これはあくまで目安の数値であり、体重はもちろん、体質やその日の体調によっても処理能力は異なることとなります。
また、お酒を飲みすぎてしまうほど分解処理に時間がかかってしまうため、仮に夜中遅くまで大量にお酒を摂取して睡眠に入った場合、翌朝でもアルコールが残っている可能性もあります。
この状態で運転すると、飲酒運転として罰則の対象になってしまう可能性もありますので、特に車両を運転する人はご注意ください。
ちなみに、もう一つ。
アルコールは肝臓で分解されるのですが、この際「アセトアルデヒド」という物質に分解されます。
これは毒性が強い有害物質であり、顔が赤くなったり、動機・吐き気・頭痛などを引き起こす原因となります。
もちろん、このような毒性の強い物質をそのままにしておくわけにはいかないので、肝臓でさらに分解され、それが「酢酸」となります。
この酢酸は、全身の筋肉や脂肪の細胞で分解され、「二酸化炭素」と「水」になるのです。
つまり、最終的に、尿・汗・呼気となって体外に排出されるということです。
「お酒を飲むとトイレが近くなる」という人もいるかと思いますが、これが理由なのです。
「肝臓」を大切にしよう
ここまでに記載した通り、アルコールはさまざまな工程を経て分解されます。
個人差があるため、分解能力にはかなりの幅があるのですが、いずれにしても確かなのは「お酒を飲む=肝臓に大きな負担がかかっている」ということです。
大部分のアルコールが分解されるのが肝臓ですが、肝臓は筋肉などのように鍛えることはできず、体重を増やしたからといって大きくなることもありません。
休みなくずっと重労働を強いられていたら、人はいつか限界を迎えて倒れてしまいますが、それは肝臓であっても同じことがいえるのです。
よく「休肝日を作った方が良い」といわれる理由は、このためです。
中には、「お酒が大好きで毎日飲んでいる」なんていう人もいるかもしれませんが、それは“休みなくずっと働かされ続けている”ことと同じなのです。
そうなると、いずれは肝臓が悲鳴をあげて、ガタが来てしまいます。
「お酒を飲むな」とは言いませんが、適度に休肝日を作って、肝臓にもお休みをあげてください。
お酒を飲む「メリット」とは?
「酒は百薬の長」という言葉もある通り、ほどよい飲酒であれば効用があるとも言われています。
この項目にて、適量の飲酒のメリット(と同時に注意点)について、ご紹介をしていきたいと思います。
ただし、あくまでも“適量の飲酒”であり、大量に飲んでいい理由にはなりません。
「メリットがあるなら、お酒を飲んでもいい!」という、お酒を飲む口実にするのではなく、節度を守って飲酒してみてください。
また、適度に休肝日も作ってあげてください。
では、メリットの解説に移りましょう。
メリット1.食欲座増進効果がある
アルコールは、消化酵素の分泌を促進し胃の血流を良くすることで、胃の働きを活発にしてくれる効果があります。
そのため、食欲増進の効果が期待できます。
ただし、一つ注意点があるのですが、お酒を飲みすぎることでの「食べ過ぎ」にはお気を付けください。
お酒を飲むと、ついつい食べ物に手を伸ばしたくなります。
お酒を飲まないときよりも、食事の量が過剰気味になってしまうのです。
また、お酒のつまみは、「油もの」や「カロリーが高いもの」が多いです。
唐揚げ・焼き鳥・チーズ・お菓子などなど、お酒と相性の良い料理は、油ものや塩気の強いものが多いため、食べ過ぎと合わせて注意しておかなくてはいけません。
総じて健康に悪影響を及ぼす可能性が高いため、くれぐれも「暴飲暴食」にはお気を付けください。
メリット2.血行が良くなる
アルコールには、血管を拡張して血行を促進する効果があります。
そのため、お酒を飲むと体が温かくなったり疲労回復の効果が期待できます。
ちなみに余談なのですが、「飲酒後の入浴は非常に危険」なので、ご注意ください。
飲酒後の入浴はアルコールの分解を妨げるうえに、心臓にも負担をかけてしまいます。
前者の理由は、お風呂に入ると、体が温まり血液の循環が良くなるからです。
“アルコールが全身に回りやすくなる=ますます酔った状態”となってしまいます。
そして後者の理由は、酔った状態で入浴することで、大量の血液が全身に送られてしまい、脳や心臓の血液が減少してしまうからです。
それによって、「脳貧血」「不整脈」「心臓発作」などを引き起こす可能性もあります。
また、お酒を飲んだ直後、そしてお湯に浸かっているときも、人間の体は血圧が下がってしまいます。
この相乗効果によって、最悪の場合、気を失って溺れてしまう可能性もあるのです。
加えて、浴室は滑りやすいので、酔っている状態でお風呂に入ろうとすると、転倒などの怪我の原因にもなってしまいます。
“血行が良くなる”とは言ったものの、飲酒と入浴では同じ言葉でも意味合いがまったく異なります。
また、「熱いお風呂で汗を流して、お酒を抜く」と考える人もいますが、なんにせよ非常に危険な行為なので、飲酒後の入浴は避けるようにしてください。
最低でも、飲酒後2時間ほどは時間を空けて入浴することをオススメいたします。
メリット3.ストレスの緩和
適量のアルコールの摂取は、心の緊張をほぐし、ストレスを緩和することにも役立つといわれています。
「お酒を飲むと、陽気になる」という人もいるのではないでしょうか。
これは、「脳が麻痺しているから」と捉えられていたのですが、実はそれだけではありません。
アルコールを飲むと、「ドーパミン」という神経伝達物質の分泌が促されるというのです。
ドーパミンとは、なにか興味のあることをしているときなど「楽しい」と感じる際に分泌される脳内物質のこと。
また、ドーパミンの分泌だけでなく、「セロトニン」の分泌を促す作用もあるようです。
セロトニンというのは、「過剰な動きや不安、恐怖といった感情を抑え、気持ちを鎮静化させる」ために働く脳内物質です。
そのため、ストレスを抑える働きがあり、実際、セロトニンはうつ病の治療にも利用されています。
このことから、アルコールには「楽しい気分を盛り上げる」と同時に、「ストレスにさらされて緊張している心身を解きほぐす」という効果があると考えられています。
ただし、あくまでも“適量を嗜むこと”が重要です。
よくあるのが、「酔って気分が高まってしまい、羽目を外しすぎる」です。
中には、そのせいで他の人への迷惑行為に及ぶ可能性もあり、実際飲みすぎが原因で警察に検挙されることだってあります。
何事も、適度が一番なのです。
メリット4.コミュニケーションツールとして活用できる
宴会の席など、一緒に食事を囲みお酒を飲むことは、人と人との円滑なコミュニケーションに役立ちます。
上記でご紹介したリラックス効果もあって、話が弾んだり、本音で語ることができたりなどのメリットが得られることでしょう。
ただし、こちらも「飲みすぎには注意」なのと、「無理強いしない」ことが大切です。
人によって、アルコールの適量は異なります。
中には、「アルコールが苦手」「まったく飲めない」という人もいます。
自分が飲みすぎないことはもちろんのこと、他の人に無理強いしないなどのマナーを守ることが重要なのです。
お酒を飲む「デメリット」とは?
上述でご紹介した通り、お酒を「適度に嗜む」なら、メリットと呼べるものはあります。
しかし、同時にご紹介した通り、「度を超してしまう」とメリットどこからデメリットが生じてしまいます。
また、デメリットは他にも存在します。
この項目にて、お酒を飲みすぎるデメリットについて、ご紹介をしていきたいと思います。
デメリット1.全身の臓器障害
アルコールはさまざまな工程を経て分解され、特に肝臓にはかなりの負担がかかってしまいます。
そのため、長期に渡って大量飲酒を続けてしまうと、全身の臓器に障害を引き起こす可能性が高まってしまうのです。
もっとも知られているのは、「脂肪肝」や「アルコール性肝障害」などですが、肝臓以外にも多くの疾患や障害につながる可能性があります。
ちなみに、脳内物質には「NMDA受容体」というものがあります。
このNMDA受容体がアルコールと結びつくと、「新しい記憶を作る能力や学習能力が低下する」と言われているのです。
脳は年齢とともに萎縮していくものですが、お酒を頻繁に飲む人は、あまり飲まない人に比べて、年齢以上に委縮してしまう傾向があるのです。
他にも、
→食欲が増進されるため
◆「肌が荒れる」
→アルコール分解時に、ビタミンやミネラル成分などを使う(=栄養素が奪われる)ため
◆「筋肉が減る」
→肝臓は筋肉を修復するためにも機能しているが、飲酒すると筋肉の修復作業よりもアルコールの分解を優先してしまうため
◆「疲れやすくなる」
→アルコール分解時に発生するアセトアルデヒドは、レム睡眠を阻害し、浅いノンレム睡眠状態が長く続いてしまうため(=深い眠りを得られなくなる)
お酒を飲まない人に比べて、体にさまざまな悪影響を及ぼしてしまいます。
デメリット2.アルコール依存症になる恐れがある
煙草と同じように、アルコールも依存度が高くなる傾向にあります。
特に依存を引き起こしやすいのが、「アルコールにストレス解消を求める」場合です。
そうなると、ストレスから飲酒に頼るという悪循環が生まれ、いつしかアルコールを手放せなくなる日が訪れます。
飲まない方が良いと頭で理解していても、ついついお酒に手が伸びてしまう。
どんどん飲酒の量が増えていき、意識を失うまで飲む・平日でも朝から飲む。
……など、生活にも支障をきたすようになってしまうのです。
最終的には、アルコールが切れてイライラしたり、手が震えるなどの症状があらわれたり、重症化すると幻覚症状などがあらわれる場合もあります。
ちなみに、アルコール依存症は、お酒の強い・弱いは関係ありません。
誰にでも発症する可能性がありますので、もし不安を感じるならば、早期に適切な治療を受けることをオススメいたします。
デメリット3.急性アルコール中毒になる恐れがある
これは、「アルコールを短時間に大量摂取したことにより、血中アルコール濃度が急上昇して、脳に影響を与える中毒症状」のことをいいます。
最たる例は、「お酒の一気飲み」です。
泥酔から昏睡状態に至り、最悪の場合は命にかかわる危険性もあります。
ちなみに、急性アルコール中毒で病院に緊急搬送される患者の約半数が、20代以下の若年者です。
その理由は、「お酒を飲みなれていないため、自分の適正量や限界が分からず、つい飲みすぎてしまう」とされています。
一気飲みなど、無茶な飲み方をしてしまうことも原因の一つにあげられるでしょう。
ただし、約半数が20代以下ということは、残りの半数は30代以上の人ということになります。
急性アルコール中毒は、誰にでも起こりうる可能性があるため、飲み方には十分に注意してください。
まとめ:お酒は適量を嗜むこと
メリットがあることも事実ではありますが、デメリットの方が多いため、少なくとも「お酒が飲めない」「お酒に弱い」という人には、飲酒はオススメしません。
また、お酒が好きな人であっても、「嗜む程度」に飲むことをオススメいたします。
お酒は、古くよりトラブルの原因になりやすいものです。
「飲みすぎない」「他の人に強要しない」「飲酒後は車両の運転は絶対にしない」これが大切です。
また、肝臓や胃腸などの修復のためにも、休肝日も設けてみてください。
少なくとも、週2日ほど設けることをオススメします。
このとき、週5日続けて飲酒したあとに2日間休肝日を作るよりも、2~3日続けて飲酒したら1日休肝日を作る……のように、飲酒の合間合間に休肝日を作ることが大切です。
「休肝日を自分で設定する=飲酒しないという自分の意思確認につながる」こととなりますので、アルコール依存症のリスクを抑える効果も期待できます。
「マナー」「ルール」「節度」をしっかりと守ったうえで、お酒を楽しんでみてください。