「健康のため」「筋肉のため」「ダイエットのため」
理由は人それぞれですが、運動をすることは体に良い影響を与えてくれます。
特に昨今は、「新型コロナウイルス感染症」の影響で外出の機会が減ったことによる「コロナ太り」を解消するために、筋トレを始める人が増えています。
ジムはもちろん、自宅で筋トレに励む人が増えているのです。
しかし、筋肉に負荷をかけることを生きがいにしている人ならば別として、(健康のために筋トレしているとはいえ)お酒大好き人間の方々からすると「筋トレで汗を流したあとの一杯が最高!」と感じてしまう人もいるはずです。
「筋トレ後のお酒が止められない」「どうしてもお酒が飲みたい」「飲み会の誘いを断れない」……など、筋肉とお酒の狭間で悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
真っ先に結論から言ってしまうと、“筋肉とアルコールの相性は良くない”です。
では、なぜ両者の相性は良くないのでしょうか。
そして、筋トレの前後にアルコールを摂取すると、体の中ではなにが起こってしまうのでしょうか。
また、せっかくの筋トレを無駄にしないためのお酒の飲み方はないのでしょうか。
今回は、「筋肉(筋トレ)とお酒の関係性」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「筋肉とアルコールの相性が良くない」理由について
なぜ筋肉とアルコールの相性が良くないのかというと、「アルコールが筋肉の成長を妨げてしまうから」です。
その原因は、3つあります。
2.「筋肉の合成が抑制される」
3.「脱水症状になりやすくなる」
4.「睡眠の質が下がってしまう」
5.「暴飲暴食しやすい」
順に補足を加えていきます。
1.「筋肉が分解される」
アルコールを摂取すると、”ストレスホルモン”と呼ばれる「コルチゾール」が多く分泌されます。
これには、“筋肉の分解を促進させる作用”があるのです。
つまり、本来であれば筋肥大するはずの筋肉が分解されやすくなってしまうため、筋トレの成果が感じづらくなってしまうのです。
2.「筋肉の合成が抑制される」
筋肉を大きくするためには、「筋トレで筋肉に刺激を与え、筋肉の材料となるたんぱく質をしっかり補給する」ことが重要です。
つまり、筋肉の修復には“たんぱく質”が必須となるのです。
しかし、アルコールを分解する際に必要となるのも“たんぱく質”であり、アルコールの分解の方が優先されます(分解しないと体に有害であるため)。
そのため、筋肉の成長のために使う分が足りなくなってしまうことがあり、筋肉の合成が抑制されてしまうのです。
3.「脱水症状になりやすくなる」
筋肉には、水分が多く含まれています。
しかし、アルコールには利用作用があり、体内の水分が排出されやすくなります。
体内の水分が不足すると「脱水症状」に陥りやすくなり、そうなると筋肉へ栄養がうまく行き渡らなくなります。
4.「睡眠の質が下がってしまう」
筋肉を成長させるためには、良質な睡眠も重要となってきます。
なぜなら、睡眠中に筋肉の合成や回復をしてくれる「成長ホルモン」が分泌されるからです。
しかし、アルコールを摂取すると、眠りが浅くなります。
その理由は、以下の2つです。
◆アルコールによる利尿作用で夜中に起きやすくなるから
「お酒を飲むとぐっすり眠れるんじゃないの?」とイメージする人もいるようですが、実はその逆なのです。
“眠りが浅くなる=成長ホルモンが十分に分泌されない”ため、筋肉の成長にも影響を及ぼしてしまうのです。
また、眠りが浅いと体の疲労もなかなか取れず、それだけ筋肉の回復も遅くなってしまいます。
5.「暴飲暴食しやすい」
アルコールには、食欲増進効果があります。
この理由は、飲酒によって食欲をコントロールする「レプチン」というホルモンの分泌が減ってしまうからです。
レプチンが減少すると、暴飲暴食しやすくなってしまい、お酒だけでなく食べ過ぎにもつながる可能性があります。
また、お酒のつまみは「油分」や「塩分」を含むものが多く、(体に必要な栄養素ではあるものの)摂り過ぎは良くありません。
ここまでにご紹介したものが複合的に組み合わさってしまうため、「筋肉とアルコールは相性が良くない」とされるのです。
「お酒が止められない!」そんなときはどうしたらいい?
筋トレ後のお酒はデメリットが多く、あまりオススメはしません。
しかし、汗を流した後のお酒は、格別の一杯……ではあります。
また、時には「付き合いがあるから、どうしても筋トレ後に飲む必要がある……」なんてこともあるかもしれません。
「我慢すればいい」と言われればそれまでですが、無理にお酒を我慢してストレスを溜め込んでしまい、結果「筋トレしなくなった」となれば、それこそ健康にも良くありません。
両方とうまく付き合っていく方法は、なくはありません。
要するに、「飲み方を工夫すれば良い」のです。
この項目にて、そのポイントをいくつかご紹介していきたいと思います。
ポイント1.水分をたくさん摂ろう
アルコールには利尿作用があるため、アルコールをたくさん摂取するほどに体内の水分が排出されやすくなります。
そのため、上項でも記載した通り、下手をすれば「脱水症状」にも陥りかねません。
また、アルコールの分解には水分も使われます。
そもそも、人間の体の半分以上は水分でできているので、筋肉はもちろん、筋肉に栄養を運ぶ血液にもたくさんの水分が含まれているのです。
もし水分が不足してしまうと、筋肉に十分な栄養を運ぶことができず、筋肉の成長を妨げることとなります。
当然ですが、お酒では水分補給はできません。
だからこそ、アルコールを摂取する際にも、同時に水分も補給しておいた方が良いのです。
お店でお酒を飲むと、お酒と一緒にお水が添えられることがあります。
これは、洋酒やカクテル系では「チェイサー」、日本酒や焼酎では「和らぎ水」と呼ばれています。
添えられるお水にも、きちんとした意味があるのです。
お酒を飲むときは、合わせて水も一緒に摂取することが大切なのです。
ポイント2.筋トレ直後は避けること!
運動して汗を流したあとのお酒は美味しく、また「きちんと運動しているんだからちょっとくらい飲んでも大丈夫でしょ」と考える人もいます。
しかし、筋トレ直後は「ダメージを受けた筋肉が回復しようとして、筋肉の合成が一番高まるとき」なのです。
そんなタイミングでアルコールを摂取してしまうと、体が“アルコールの分解”を優先させてしまうため、筋肉の成長を妨げることとなります。
「お酒を飲むな」とはいいません。
ただ、「筋トレ直後のお酒は控えた方が良い」というのは事実です。
あらかじめお酒を飲むタイミングが分かっているならば、
◆アルコールの量を控えめにする
◆(お酒を夜に飲むならば)午前中に筋トレを行う
◆筋トレをしない休息日に飲酒をする
など、十分に時間を空けてからお酒を飲むようにしてください。
ちなみに、飲み方を工夫すればお酒を飲んでも良いといっても、限度があります。
飲み過ぎは健康にも悪影響を及ぼしますので、嗜む程度にしておくことをオススメいたします。
ポイント3.空腹状態で飲まないこと
筋トレ後、十分に時間を空けたとしても、空腹状態でお酒を飲むのは止めてください。
空腹状態でお酒を飲んでしまうと、胃の粘膜から直接的にアルコールが吸収される(=吸収速度が早くなる)こととなり、筋肉への影響がより大きくなってしまいます。
酔いが回るのも早くなりますし、そもそも胃に大きな負担をかけてしまいます。
事前に軽食などを摂ることで、アルコールの吸収速度を和らげることができます(胃の粘膜にバリアを張るようなイメージ)。
また、満腹感を促進し、お酒を飲むペースを抑えることもできるでしょう。
プロテインバーで対策を取るのも良いですし、牛乳・ヨーグルト・チーズなどの脂肪分が含まれているものを摂取することもオススメです。
ポイント4.おつまみは「たんぱく質」が多いものを選ぼう
お酒に欠かせない”おつまみ”ですが、できるだけ「たんぱく質」が多いものを選ぶようにしましょう。
たんぱく質は、アルコールの分解だけでなく、筋肉の修復や生成にも役立ちます。
加えて、脂肪がつきにくくなるため、「脂質」や「糖質」が少ないものを選ぶのもポイントです。
ただし、食べ過ぎには注意してくださいね。
「糖質オフ」のお酒なら太らないってホント?
お酒を飲む際は、極力「糖質が少ないもの」を選ぶのが良いです。
例えば、ウィスキーや焼酎などの蒸留酒は糖質が少なく、逆にビールやワインなどは糖質が多いとされています。
なぜ糖質が少ない方が良いのかというと、「飲んでも脂肪がつきにくい」からです。
糖質が多いものは、飲むと血糖値が急上昇しやすく、肥満ホルモンと呼ばれる「インスリン」が大量に分泌されてしまいます。
これが原因で太りやすくなってしまうのです。
ただ、昨今は「糖質オフ」のお酒も増えてきています。
この糖質オフのお酒であれば、例えば同じビールであっても太りにくくなるのでしょうか。
結論を言うと、確かに糖質オフのお酒の方が太りにくくはなります(文字通り糖質が含まれていないため)。
ただ、いくら糖質を含まないとはいえ、「カロリー」があることも忘れてはいけません。
アルコールは食欲増進効果を持ち合わせているため、飲酒するほど食も進み、体脂肪の蓄積が助長されてしまう恐れがあります。
また、過度に飲酒すれば、体脂肪の大部分を占める「中性脂肪」も増加してしまいます。
体内にアルコールが入ると、肝臓の機能は“アルコールを分解することを最優先とする”ため、肝臓本来の働きをストップしてしまいます。
つまり、「脂肪を燃やす」「糖分を燃やす」、この2つの働きがストップしてしまうのです。
アルコール自体は摂取してもすぐに消費されるため、直接“太る”という要因にはなりませんが、アルコールの分解にカロリーが消費されている間は、食事によって摂取したカロリーは消費待ちの状態となってしまいます。
「お酒を飲むと太る」と言われる所以は、ここにあります。
お酒を飲めば飲むほど、他のカロリーが消費されずに、脂肪として蓄積されてしまうのです。
糖質オフであっても油断はできませんし、飲み過ぎていい理由にはなりません。
筋肉はもちろん、健康にも良くありませんので、お酒は「適量を楽しむ」ことを意識してみてください。
筋トレ前のお酒も、当然NG!
「筋トレの”後”がダメなら、筋トレの”前”に飲んでしまえばいいのでは……?」と考える人も……もしかしたらいらっしゃるかもしれません。
ですが、危険ですので、絶対に筋トレ前の飲酒は止めてください。
まず、ここまでにご紹介してきたアルコールによる筋肉の影響は、「筋トレ直後でも直前でも同じ」です。
どちらにしろ筋肉の成長が妨げられてしまうので、結果として筋トレの質は下がることとなります。
そもそも、“アルコールを摂取する=脳が麻痺している状態”であるため、集中力が低下しやすく、怪我の原因にもなり得ます。
現在は24時間オープンしているジムも多く、そういうところは(特に夜中などは)スタッフが在中していない場合もあります。
飲酒後に筋トレしようと考える人自体あまりいないとは思いますが、「そんなに酔っていないし、ちょっとだけ……」という考えで運動しようとすると、(誰も止めてくれる人がいないため)取り返しのつかないことになってしまう恐れもあります。
危険な行為なので、絶対にしないようにしてください。
まとめ
健康のために筋トレをすることは大切なことです。
しかし、筋トレとアルコールの相性は良くなくデメリットも多いため、「筋トレ前後のアルコール摂取は止めた方が良い」と断言します。
ただ、「お酒が好きな人」や「付き合いで飲まないといけない」というときもあるかもしれませんので、そういう場合は飲み方に工夫を加えてみてください。
ポイントをしっかり押さえておけば、そこまで無理にお酒を我慢し過ぎる必要もありません。
筋トレを頑張りつつ、大好きなお酒も楽しんでみてください。
尚、この記事内では一貫して“筋トレ”と記載してきましたが、他の運動であってもアルコールとの相性は良くありません。
例えば、「有酸素運動」。
中には、「少しでも早くお酒を体から抜くために、運動をする。軽いジョギングくらいなら……」もしくは、運動ではありませんが「アルコールを抜くためにサウナに入ろう」と考える人もいるかもしれません。
一見すると、“汗をかく=アルコールを体外に排出できる”ように感じるかもしれませんが、残念ながら「アルコール」やアルコールの代謝物である「アセトアルデヒド」は、汗によって体から抜くことはできません。
(そもそも、汗を出す皮膚にある「汗腺」という場所には、アルコールやアセトアルデヒドを出す機能は備わっていない)
◆「アルコールの代謝速度が遅くなる」
◆「心臓への負担が大きくなる」
◆「事故や怪我につながる可能性がある」
上記のようなリスクが発生する恐れがあり、デメリットにしかなりません。
大変危険な行為なので、絶対にしないようにしてください。
基本的に、「飲酒前後に運動はしない」、これを意識しておくことをオススメいたします。