健康診断の結果などで目にすることがある、「BMI」。
これは、“身体の状態を知る目安となる数値”の一つであり、肥満の定義にも使用されています。
そして、「体脂肪率」もダイエットをするときの指標として利用されます。
BMIと体脂肪率の意味・違いはなんなのか。
ダイエットを行う際、BMIと体脂肪率のどちらを重要視すべきなのか。
今回は、こういった点に注目して解説していきたいと思います。
「BMI」とはなにか?
概要
BMIとは「Body Mass Index」の略語であり、体格を示す指数のことです。
肥満度を表す数値として国際的に使用されており、日本でも肥満の診断基準や特定健診・特定保健指導の基準として採用されています。
計算方法は非常に簡単で、以下の式に当てはめて計算するだけです。
「BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」
例えば、身長170cm・体重60kgの人であれば、“60(kg)÷1.7(m)÷1.7(m)=約20.76(BMI)”という数値になります。
尚、日本肥満学会にてBMI値と肥満基準は以下のように定められています。
◆18.5未満:低体重(やせ型)
◆18.5~25未満:普通体重
◆25~30未満:肥満(1度)
◆30~35未満:肥満(2度)
◆35~40未満:肥満(3度)
◆40以上:肥満(4度)
上記で例として出した人の場合、BMI値が約20.76であるため“普通体重”となるのです。
ちなみに、WHO(世界保健機構)で定められた基準も存在しており、こちらの場合はBMI値が30以上から肥満と定められています。
日本の場合は上記の日本肥満学会による基準に従って測定されます。
そして、BMI値が22となる体重が「標準体重(理想体重)」と呼ばれており、統計上もっとも死亡率・有病率が低いとされています。
この標準体重は、「身長(m)×身長(m)×22」で計算できますので、自身の体重が適切かどうかを判断する際の参考にしてみてください。
BMIが高すぎたり低すぎたりしたらどうなるの?
結論からいうと、「BMIは高すぎても低すぎても健康に影響を与える可能性がある」です。
この数値が25以上の場合は、=“肥満”であり、生活習慣病のリスクが高まります。
◆高血圧
◆脂質異常症
◆動脈硬化
◆がん
◆脳血管疾患
◆心疾患
など、さまざまな病気にかかる可能性が高くなってしまいます。
逆にBMI値が18.5未満の人は“瘦せ型”であり、こちらも健康に悪影響を与える可能性があります。
なぜなら、痩せは「鉄欠乏」などの栄養不足や、「倦怠感」などの自覚症状を引き起こすキッカケとなり得るからです。
特に若い女性の“痩せ”は問題となっており、厚生労働省が行った「令和元年国民健康・栄養調査報告」では、20代女性の約2割がBMI値18.5以下という結果が出ています。
「健康になりたい」と「痩せたい」は、似ているようで捉え方が微妙に異なります。
「健康になりたい」は、食生活や運動をバランス良く取り込み、病気になりにくい……文字通りの“健康的な身体”を得ることが目的となります。
対して「痩せたい」の場合は、“見た目をスリムにする(したい)”ことを最重要の目的と捉える場合があるのです。
“見た目をスリムにしたい”と考えることは何も間違ったことではありませんし、長期的に取り組むことでそれが結果的に“健康な身体”につながっていくとも思います。
問題なのは、「短期的にかつ簡単に痩せたい」として、“運動を(あまり)取り入れずに極端な食事制限をする人が多い傾向にある”という点にあります。
痩せたい願望が強すぎると栄養不足に陥りやすくなるばかりか、摂食障害を招く原因にもなってしまいます。
それが慢性化してしまうと、低血圧や不整脈・無月経といった健康障害が起きてしまう可能性もあるのです。
また“痩せ”は、高齢者の健康リスクという点でも大きな問題となります。
高齢になると、さまざまな理由から食事量が低下してしまい、体重が徐々に減少していく傾向があります。
痩せすぎると、倦怠感・疲れやすくなる・不眠・めまいなどを引き起こす可能性が高くなり、他にも感染症にかかりやすくなったり持病が悪化するリスクが高くなる可能性もあります。
BMIが高すぎても低すぎても、結果的に健康に悪影響を及ぼす危険性があるのです。
だからこそ、BMIは「標準体重(理想体重)」辺りをキープするのが良いのです。
「体脂肪率」とはなにか?
概要
体脂肪率というのは、全体重に占める脂肪の割合がどのくらいなのかを表した数値のことです。
これは、以下の計算式で求めることができます。
「体脂肪率(%)=(体脂肪の重さ(kg)÷体重(kg))×100」
つまり、“体脂肪の重さ”が分からなくては、体脂肪率を求めることができません。
尚、体脂肪率は医学界で肥満を判断する指標としては使われておらず、体脂肪率と健康障害の間に相関関係も認められていません。
というのも、脂肪には以下2つの種類が存在し、体脂肪率は両者を合わせた全脂肪の量を反映しているからです。
◆「皮下脂肪」:生活習慣病のリスクを高めない
そのため、人によっては体脂肪率が高いからといって、生活習慣病のリスクが高まるとは限りません。
ちなみにもう一つ、体脂肪計や体組成計は、直接脂肪の重さを測っているわけではなく、体内に流した微弱な電流への電気抵抗地から推定して測定されます。
「”脂肪”は電気を通しやすく、”筋肉”は電気を通しにくい」のです。
体脂肪率のデータは、どのメーカーのものを使うかによって差異がありますが、上記が理由の一つとなっています。
脂肪の役割とは?
「脂肪が多い=太っている証」として、脂肪を忌み嫌う人は多いです。
確かに間違いではないのですが、だからといって体内の脂肪を0にすることはできません。
脂肪には、以下のような役割があるからです。
◆体温を維持する
◆外部からの衝撃をやわらげる
◆ホルモン分泌を正常にコントロールする
◆女性のボディラインを美しく保つ
少なすぎても健康に支障をきたす恐れがあるため、体脂肪率も低すぎず高すぎずの“適正地”を保つことが大切なのです。
ただし、適正地は年齢や性別によって変わり、女性の方が男性に比べて体脂肪率の標準範囲はやや高くなっています。
「BMI」と「体脂肪率」どちらを重要視すべき?
BMIも体脂肪率も、どちらも“体型”に関わる指標・数値ではありますが、健康においてより重要視すべきなのは「体脂肪率」の方といえます。
それぞれの意味を端的にまとめると、以下のようになります。
◆体脂肪率:「体内における脂肪の割合」=その人の体脂肪の割合を表す指標のこと
BMIも肥満度を示す指標ではあるのですが、あくまで身長と体重のみで計算した値であるため、“BMIが高い=体脂肪率が高い”には結びつかないのです。
BMIだけでは、「体脂肪が多くて肥満状態」なのか「筋肉質な体型で体重が重くなっている」のかは判別できません。
また、数値が同じであっても、脂肪のつく部位によって健康へのリスクも変わってきます(内臓脂肪が多い人の方が生活習慣病を発症するリスクが高まる)。
中には、BMIが標準でも体脂肪が多い「隠れ肥満」になっている方もいます。
これは極端なダイエットが原因の一つといわれており、特に若い女性に多く見られる傾向があります。
これらのことから、「現状を正確に知るためには、体脂肪率を重視した方が良い」といえるのです。
ダイエットを行う”意味”について
そもそもの話になりますが、本来ダイエットというのは「身体に余分な脂肪がついているからこそ行うもの」といえます。
体脂肪率というのは、健康的な観点から「低い」「標準」「やや高い」「高い」の4つに分類することができます。
この判定の目安は、以下の通りです。
・男性:5.0%~9.9%
・女性:5.0%~19.9%
【標準】
・男性:10.0%~19.9%
・女性:20.0%~29.9%
【やや高い】
・男性:20.0%~24.9%
・女性:30.0%~34.9%
【高い】
・男性:25.0%~
・女性:35.0%~
あくまで目安であり理想的な数値は年代ごとに多少異なりますが、「健康的な身体を手に入れたい」という目的であるならば、基本的には標準値を維持できていれば問題ありません。
体脂肪も身体に必要なものであり、高すぎることはもちろん低すぎても悪影響を及ぼしかねないのです。
「骨格筋率」もチェックしておこう
健康管理やダイエットを行う際、体脂肪率だけでなく「骨格筋率」もチェックしておきましょう。
骨格筋率というのは、“身体に占める骨格筋の割合を示す指標”のことです。
筋肉は、以下の3つに分けられます。
◆内臓を作っている「心筋」
◆心臓を作っている「平滑筋」
一般的に筋肉として知られているのが「骨格筋」であり、骨格筋のみ運動などによって増やすことができます。
骨格筋の主な役割は、「身体を動かす」「姿勢を維持する」「エネルギーを生み出す」です。
身体を鍛え骨格筋の量を増やせば、その分だけ基礎代謝が高まるため、この「骨格筋率」にも意識を向けておくことをオススメします。
まとめ
BMIと体脂肪率は、どちらも“体型”に関わる指標・数値です。
ダイエットを行う上でより正確な状態を把握したい場合は「体脂肪率」に意識を向けた方が良いですが、「BMI」でも大まかな目安を知ることはできます。
計算も簡単に行えますので、気になる方は確認してみてください。
ただし、BMIはあくまで目安であり、BMIが高いからといって必ずしも体脂肪が多いとは限りません。
逆に、BMIが低くても体脂肪率が高い方もいるため、BMIだけで健康状態を把握することができない点には注意しておきましょう。
健康診断を受ければ、体全体の状態を知ることができるため、他の項目もしっかり確認しながら、食事や運動などの生活習慣を見直してみることが大切です。