生きていく上で、他者と比較したり・自分のダメなところばかりが目に付く……と感じてしまう人がいます。
その結果、ネガティブな気持ちが強くなって、自信を無くしてしまうのです。
これは、「自己肯定感の低さ」が原因の一つにあります。
自己肯定感は、仕事の質や人生の満足度を上げるうえで欠かすことのできない重要なものです。
今回は、この「自己肯定感」について、詳しくご紹介をしていきます。
「自己肯定感」ってなに?
概要
これは、「ありのままの自分を受け入れ、好意的に受け止めることができる感覚」のことをいいます。
良いところも悪いところも含めて、今の自分のすべてを「そのままでいい」と認めて尊重する力のことです。
他人と比較することもありません。
ありのままの自分を認め・尊重し・自己価値を感じることができる心の状態を指すのです。
これは、人間関係やパートナーシップ、仕事や自己実現においても重要な要素となります。
自己肯定感が“土台”となり、人生の幸福に大きく影響するのです。
ただし、自己肯定感はその時々の状況によって変化し、同一人物でも高いときもあれば低いときもあります。
「自信」とはなにが違うの?
“肯定する=好意的に受け入れる”という意味ですが、似た言葉として「自信」があります。
両者の違いは、“根拠”のあるなしが関係してきます。
◆自信 :「これまでの経験や自身のステータスなどを根拠にした感覚」
根拠がなくても自分を信じられることを「自己肯定」、根拠があるときにのみ自分を肯定できることを「自信」というのです。
「自己効力感」とはなにが違うの?
もう一つ、自己肯定感に似た言葉として、「自己効力感」というのがあります。
この自己効力感というのは、「自分の可能性を認知していること」を指しています。
この概念は、アメリカの心理学者であるアルバート・バンデューラが提唱したものであり、「自己効力感が強いほど、人は実際に行動できる傾向にある」と述べています。
自分の可能性を信じ、課題に直面したときに「その課題と向き合えるかどうか?」という能力に対する自己評価のことをいうのです。
自己肯定感が“自分自身の存在そのものに対する評価”であるのに対し、自己効力感は“自分自身の能力に対する評価”となり、両者の意味合いはまったく異なります。
自己肯定感が高い人の特徴ついて
自己肯定感が高い人の特徴として主に挙げられるのは、以下の3つです。
2.「行動や思考がポジティブである」
3.「失敗を恐れない」
順に補足を加えていきます。
特徴1.「主体的に行動できる」
“ありのままの自分”に満足し、仮に短所と呼べるようなことがあったとしても自分を卑下することがありません。
短所を見るより長所を見て、“長所を活かす方法”を考えていくのです。
また、他者に対しても寛容で優しく、他者と良好な関係を構築しやすいという特徴もあります。
特徴2.「行動や思考がポジティブである」
自己肯定感が高い人は、“ポジティブ”であり、思考や発言が基本的に前向きです。
また、自分に対して自信を持っており、他者の意見を参考にすることはあっても、他者の意見に振り回されることがないのです。
仕事でもプライベートでも自ら積極的かつ主体的に行動できます。
特徴3.「失敗を恐れない」
「なんとかなる」「まぁ大丈夫だろう」と物事を楽観的に捉え、新しいことに挑戦するときや課題に直面したときに“失敗を恐れずにチャレンジする”という傾向があります。
そして、仮に失敗したとしても「次は頑張ろう」「失敗は成功のもと」と前向きに考え、失敗も成長の糧にしていきます。
失敗を恐れず、失敗を糧とし次に活かすため、結果的に成功しやすくなるのです。
また、もし自分が失敗やミスをしたとしても、決して人のせいにはしません。
自分を信じているので、自分が選んだ物事について責任が取れるのです。
自己肯定感が低い人の特徴について
逆に、自己肯定感が低い人は、以下のような特徴があります。
2.「承認への欲が強く、他者に依存してしまう」
3.「他者と比べて自己嫌悪に陥りやすい」
4.「精神的不安に陥りやすい」
こちらも、順に補足を加えていきます。
特徴1.「チャレンジ精神に乏しい」
自己肯定感が低い人(低いとき)は“ありのままの自分”を認めることができない状態であるため、「自分に自信が持てなくなり、行動を起こすことに対して不安を感じる」という傾向があります。
極度に失敗を恐れ、新しいことや目の前の課題に対して、挑戦する勇気を持ちにくい状態となっているのです。
また、失敗やミスをしたときに、自分で自分を責める傾向もあります。
「自分のせいでこうなった……」と落ち込み、挫折感を覚えてしまうのです。
そして、そのマイナスな感情を引きずってしまいます。
そうなると、挫折が怖くなり、ますます挑戦できなくなるという悪循環に陥ってしまうのです。
特徴2.「承認への欲が強く、他者に依存してしまう」
他者からの評価を執拗に気にしてしまう傾向にあります。
他者から評価されることで、自分の価値を高めようとしているのです。
その結果、「他人に認められたい」という承認欲求が強くなり、本質的な成果を上げるよりも、周囲の人に褒められることを求めて行動することが多くなってしまうのです。
他者からの評価に重きを置いていると、どんどん主体性が乏しくなり、自分で決断することを避けるようにもなります。
仮に自分で決めざるを得ない状況であっても、「他者に否定されないようにする」ことばかりを気にし、適切な判断を下せなくなってしまいます。
その結果、承認欲求が非常に強くなり、“他者に依存してしまう”傾向が強くなります。
特徴3.「他者と比べて自己嫌悪に陥りやすい」
自己肯定感が低いと、“他者と自分を過剰に比較する”傾向が強くなります。
「あの人と比べて、自分はここがダメ」
「あの人と比べれば、自分の方がマシ」
他人と比べ、尖っている・優れているという基準でしか自分を評価できず、自分の長所と課題を客観的に捉えることができない状態となっているのです。
その結果、今の自分を受け入れられず、常に他者の粗探しばかりをしてしまいます。
ちなみに、他人と比較することが悪いことというつもりはありません。
目標としている人・ライバルと呼べる人と比較することで、自分を鼓舞し、より高みを目指すことができるからです。
問題なのは、比較ばかりを続け、「あの人と比べて自分は……」と卑下し続ける点にあります。
そうなると、どんどん自分に劣等感を抱き続け、どんどん自信をなくしてしまう原因となってしまいます。
特徴4.「精神的不安に陥りやすい」
ありのままの自分を受け入れられない人は、自分自身を信頼することができません。
自分に自信が持てず、常に気を張って生きているのです。
こういう人は、精神的に不安定であり、少しの失敗やミスを起こしただけで深く落ち込んでしまうのです。
また、「自分を攻撃してくる人」に対して、異様に反応してしまいます。
もちろんすべての人が該当するわけではありませんが、自己肯定感が低い人は、過去に「トラウマ」を負っている可能性が高いです。
例えば、
◆優秀な家族や友人と比較されながら育ってきた
◆大きな失敗をしたことがある
といったものです。
過去の失敗経験や自尊心を傷つけられた経験が原因で、自己肯定感を持てないという人もいるのです。
こういう人は、トラウマに近い現象が起こると、体が勝手に拒否反応を起こしてしまいます。
そして、「また同じことを繰り返してしまった……」「やっぱり自分はダメだ……」とトラウマを引きずり続け、さらに自信をなくしてしまうケースが多いのです。
どうすれば自己肯定感を高められるのか?
自己肯定感は、低いよりも高い方が良いです。
プライベートや仕事などの姿勢やパフォーマンスにも大きな影響を与え、より充実した毎日を送りやすくなります。
では、自己肯定感を高めるにはどうすればいいのでしょうか。
方法はいろいろありますが、この項目にていくつかご紹介したいと思います。
方法1.「完璧主義から脱する」
自己肯定感が低い人の特徴として、「完璧主義者である」ことが挙げられます。
完璧主義に近い人ほど、真面目で几帳面な人が多いです。
これが、悪いこととは絶対に言いません。
ただ、こういう人ほど“現在の自分を受け入れられず、粗探しばかりをしてしまう”傾向にあります。
「もっと頑張らなくては」「もっと〇〇を直さなくては」と過度に反応し、「もっと……!もっと……!」と完璧を追求し過ぎてしまうのです。
そして、その完璧主義は、自分だけでなく他者へも向けられてしまいます。
今の自分を否定するだけでなく、他者を否定したり・他者と比較したりするようになるのです。
これが続くと、自他ともに精神が疲弊してしまいます。
大切なのは、「完璧な人間なんて存在しない」と割り切ることです。
そして、「自分自身に優しくなる」ことです。
完璧主義な人ほど、自分に厳しく、自分を追い込もうとしてしまいがちです。
足りない部分にばかり目を向けるのではなく、良いところも悪いところもある自分を認めること。
そして、「長所をさらに伸ばすにはどうしたらいいか?」「長所を活かすにはどうしたらいいか?」を考えていくようにしましょう。
自分に優しくなれれば、人にも優しくなれます。
完璧じゃなくて良いのです。
方法2.「思い込みをなくす」
自己肯定感が低い人は、他者の目を気にしてしまう傾向にあります。
「〇〇しないと嫌われる」「〇〇しないといけない」「〇〇でないといけない」など、ネガティブな思い込みを常に持っているのです。
例えば、家族や周囲の人から以下のようなことを言われ、それが頭にこびりついている人はいないでしょうか。
◆失敗してはいけない
◆目立ってはいけない
◆弱音を吐いてはいけない
特に、子どもの頃に親や学校の先生から言われた言葉が、胸に突き刺さったままの人は多いです。
また、実際に経験して体感したこともあるかもしれません。
しかし、これらはすべて「思い込み」です。
確かに、犯罪など人の人生を狂わせるようなことは、絶対にしてはいけません。
しかし、生きていく以上は大なり小なり誰かに迷惑をかける可能性はありますし、生きていれば失敗の一つや二つは誰でも経験するものです。
どんな気を配っていても、100%人に迷惑をかけずに生きていくことはできません。
どんなに注意を払っていても、死ぬまで失敗しない道を選び続けることはできません。
辛いときには、弱音を吐いたっていいのです。
そんな細かいこと、気にしなくていいのです。
少し言い方が悪くなりますが、親であっても一生自分の面倒を見てくれることはありません。
いつかは親の元を巣立ち、自分の考えで行動をしていかなくてはいけないのです。
だからこそ、「親の言うこと」にいつまでも縛られ続ける必要は、一切ありません。
すべては、「思い込み」です。
周りのことなんて気にせず、自分の好きなように行きましょう。
そのくらい、ドンと構えていた方が良いのです。
方法3.「成功体験を積み重ねること」
まず、どんな些細なことでも構いませんので、「やってみたいと思うこと」「やらないといけないこと」をリストアップしてみて下さい。
そして、リストアップしたことを達成できるようチャレンジしてみて下さい。
その後、「上手くいったこと」「出来たこと」を、思い返したり書き出したりして、できたことに対して自分を全力で褒めてあげて下さい。
ポイントは、できたことがあれば、少しずつ目標を上げていくことです。
これが、“成功体験を積み重ねるコツ”です。
リストアップする内容は、なんでも良いです。
ちなみに、ゲーム感覚で目標を決めて、チャレンジしてみるのも良いと思います。
いわゆる「デイリークエストをクリアする」ような感覚です。
全達成したら、自分にご褒美を上げてみるのもいいかもしれません。
そうやって少しずつ成功体験を積み重ねていけば、少しずつ自己肯定感は高まっていきます。
方法4.抱えている不安を書き出してみる
「常に不安に苛まれている」という人は、その感じている不安を紙に書き出してみましょう。
意外と、頭で考えていることは漠然としたものが多く、紙に書き出して客観的に見ることで解決の糸口が見つかることもあります。
「思い込みだった」と感じることもあれば、「〇〇をしたら解決できるんじゃ……?」と解決策が見えてくることも……。
また、中には「どんなに不安がっても解決できないこと」もあります。
例えば、「近いうちに〇〇が起きたらどうしよう……」や「これから世の中はどうなっていくんだろう……」などです。
不安を感じている人は、意外とこういった“解決しようにもできない不安”を漠然と抱えているケースもあり得ます。
今の自分・これからの自分のために改善できることはあれど、世界情勢を気にしたってどうすることもできません。
ある種、「なるようにしかならない」のです。
紙に書き出すことで、これらを客観的に確認することができ、「自分には何ができて、何ができないのか?」を明確に認識することができます。
意外と効果がある方法なので、気になる方はぜひ試してみて下さい。
「頭では分かっているけど実践できない」という場合はどうしたらいい……?
上項でご紹介した方法は、調べればいくらでも出てくる基本的な情報ばかりです。
不安を解消したい、自分に自信をつけたいという人の中には、「すでに試してみたけど……」や「頭では理解できているけど、なかなか実践できない……」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論を言うと、自己肯定感を高める方法は、上記でご紹介したことを実践するしかありません。
上手くいかなくても、基本を忘れずに実践し続けること。
諦めずに継続し続けることで、考え方というのは少しずつ変化していくのです。
ただ、「それでも何も変わらない」「もっと早く効果を実感したい」というのであれば、メンタルクリニックなどに受診を検討してみるのもいいかもしれません。
自己肯定感が低い人のなかには、「これまでの経験から心が疲弊し切っている」という人もいます。
その現状から抜け出したいと考え、さまざまな情報を閲覧している……これだけでもすごいことです。
その努力を、自分自身で褒めてあげて下さい。
とはいえ、“精神の疲弊”も“心の病気”の一種であるため、悪化していれば適切な処置をしないと治らないこともあるのです。
“こじらせてから病院に行く”のではなく、“悪化しきる前に最善の方法で治療する”ことも、また必要なことだと考えます。
無理をせず、「今の自分には何が必要か?」を冷静に考え、そのためにできることを実践してみて下さい。
まとめ
自己肯定感は、低いよりも高い方が、より人生を充実したものにできます。
とはいえ、刷り込まれた言葉や経験は、思った以上に根深くその人に住み着いている可能性もあります。
まずは、ここでご紹介したような内容を実践し、自己肯定感を高められるよう工夫してみて下さい。
大切なのは、「諦めずに継続すること」です。
それでも「何も変わらない」「もっと早く自己肯定感を高めたい」という場合は、メンタルクリニックを受診してみることも視野に入れてみて下さい。
ただし、自己肯定感は“無理をして高めるものではない”です。
深刻に考える必要もありません。
ありのままの自分を受け入れることが大切なので、無理をするくらいなら割り切ってドンを構えておきましょう。
心にゆとりを持って、楽しく毎日を過ごしていくことが大切なのです。