これまでに、何度か「美容医療」についてのご紹介をしてきた通り、昨今は特に「美への意識」が非常に高まっています。
そして、利用者のニーズの増加に伴い、美容クリニックの数も増加傾向にあります。
「美容看護師」についてはこれまでの記事で何度かご紹介をしてきましたが、今回は美容クリニックで働く「医師」に焦点を当てて、詳しくお話をしていきたいと思います。
尚、美容看護師についての記事は、以下にリンクを貼っておきますので、関心がある方は是非ご覧ください。
美容クリニックで働く「医師」とは?
以前にもご紹介した通り、美容クリニックは以下の2つに大別ができます。
◆美容整形外科
それぞれで施術内容は異なりますし、施術の種類も数多く存在します。
そして、当然ながら「どんな治療を行うかによって、”求められるスキル”も変わってくる」のです。
ただ、特に医師の知識・技術・経験が重要となってくるのは「美容整形外科」の方かと思います。
なぜなら、“手術”を行う必要があるからです。
メスや麻酔を必要とする手術ももちろん存在します。
(二重の形成や眼瞼下垂など麻酔を必要としない手術もある)
とはいえ、「じゃあ美容皮膚科の方が求められるスキルは少ないの?」と言うと、そんなこともありません。
例えば、多汗症治療やワキガ・ニキビ跡の治療や脱毛・美肌治療などは、美容皮膚科の方がメインで行うことが多いと言われています。
メスなどを肌に直接入れることはありませんが、麻酔は当然必要としますし、レーザー治療なども行うため、相応の知識・技術・経験は求められるものとして考えておくべきかと思います。
「美容外科医」になるために必要なこと
次に、「“日本で”美容外科医になるために必要なこと」についてご紹介していきます。
美容医療に関しては、日本だけでなく海外でも非常に高いニーズがあり、美容外科医(形成外科医)を目指している人も大勢います。
そして、この仕事に就くために必要な条件は、日本と海外で少し異なります。
この項目にて、詳細をお話していきましょう。
「専門的な資格」は必須……?
実を言うと、美容外科医として働くためには、“必ずしも専門的な資格を必要とはしない”という点が挙げられます。
極論を言うと、「医師免許を所持していれば、誰にでもなれる可能性がある」のです。
ただし、後2つ、美容外科医になるために必要な条件があります。
それが、以下です。
◆一定以上の治療経験を有すること
この上で“審査”に合格することで、美容外科医となることができます。
つまり、“美容医療に関する特別な知識や経験がなくても、美容外科医になることができる”ということなのです。
もちろん「医師免許」は国家資格ですので、誰でも簡単に取得できるものではありません。
ただ、きちんとした大学(医大)に通い・学ぶことで、合格できる確率は格段に上昇します。
実際、近年の医師免許の合格率(平均)は“90%前後”と言われています。
医師免許があれば、”未経験”でも就職できる?
上記の通り、医師免許+αさえあれば、美容外科医になれるということですが……。
ここで一つ気になるのが、「医師免許があれば、美容クリニックでの実務経験がなくても、美容外科医になれるのか?」という点です。
結論から言うと、“未経験でも就職可能”です。
美容外科医の求人自体が母数が非常に少ないのが現状ではありますが、その数少ない求人の中には「未経験でも応募可能」と記載されているものも見受けられます。
ただ、だからと言って一切の経験が必要ないのか?と言われると、そんなことはありません。
前述でもご紹介した通り、「一定以上の治療経験」を必要としますし、“審査”に合格する必要があるからです。
「一定以上の治療経験」とは?
日本には、「形成外科」というものが存在します。
これは、例えば「やけど」や「傷あと」などの、“主に体の表面に現れている異常に対する治療”のことを指しています。
他にも「口唇口蓋裂の先天異常」や「癌で切除した部位の再建」など、治療内容は様々です。
基本的には、美容外科手術の基礎ともなる“形成外科的手技”を習得した後に、美容外科の道へ進むことを「日本形成外科学会」は推奨しているのです。
ちなみに、日本においては「形成外科」と「美容外科」は、別の学問というような風潮が持たれている節があります。
しかし、アメリカなどではこの「形成外科」に非常に重きを置いており、「形成外科医を長く修練しないと、美容外科専門医になることはできない」と言われています。
2つの「美容外科学会」について
前項で少し触れた学会についてですが、日本には2つの「美容外科学会」が存在します。
それが、以下です。
②:JSAPS
①は“医師免許され所持していれば入会できる”学会であり、②は“形成外科専門医を中心とした”学会となります。
特に「JSAPS」の審査は非常に厳しく、日本の形成外科専門医のたった“10%”しか認定されていません。
「JSAPS」に合格するために必要なことは、以下の2つです。
- 最低でも5年間、日本形成外科学会が認定している医療研修施設において、形成外科に関わる研修を受けること
- その後、所定の専門医認定試験に合格すること
これが義務付けられています。
上記の合格することで「美容外科専門医」として、資格が認定されるのです。
確かに、美容クリニックでの実務経験はなくてもいいかもしれませんが、どちらにしろ「形成外科」において、長期の実務経験を経なければ、美容外科医として勤務することは難しいと言えるでしょう。
他科から転科することはできるのか?
結論、できない訳ではありません。
ただ、基本的には“一から知識と技術を学び直す必要がある”と言えます。
「医師」と一言で言い表しても、様々な科が存在し、それぞれで必要な技術も知識も大きく異なります。
どんな仕事でも同じことが言えますが、「これまでやってきた仕事を”新しい仕事に活かすこと”はできても、新たに学ばなければいけない知識や技術は必ず存在する」のです。
場合によっては、これまでの経験が全く役に立たないという可能性だって否定はできません。
いきなり「美容外科医を目指そう」と考える人は少ない
ここまでにご紹介した通り、“未経験でも就職できる可能性がある”としても、「医療業界の仕事に就く=いきなり美容外科医を目指す」という人は、ほとんどいません。
理由はこれまでにお話した通りで、“医療(形成外科)に関する知識と経験が必要だから”です。
仮に、美容医療に関する実務経験がない方がクリニックに入社できたとしても、いきなり手術を任せられることはありません。
……というより、任せられる訳がありません。
美容クリニックは、基本的に中~小規模の店舗が多く、1つのお店に在籍している医師や看護師の数はごくわずかです。
(一部、大規模な施設もありますが、稀です)
形成外科医としての確かな技術を持ち、専門医資格にも認定されているならばまだ話は別ですが、もし仮に認定されている人であっても、手術という大役をいきなり任せることはできません。
もし仮に大問題を引き越してしまえば、クリニックとしての信用を全て失ってしまうからです。
それに、美容医療はクレームが多く、トラブルに発展しやすいという問題もあります。
「技術力」の高さはもちろんのこと、利用者様に納得し契約してもらえるだけの「営業力」、そして円滑にやり取りができる「コミュニケーション力」、何があっても動じない「精神力」など、学ばなくてはいけない要素が山ほどに存在します。
“急がば回れ”ということわざがある通り、まずは医師としての経験をしっかりと積み、その上で「美容外科医になりたい」という目標ができたのであれば、目指してみてもいい道……なのかもしれません。
まとめ
記事の途中で、「医師免許があれば、美容外科医になれる可能性がある」と記載しましたが、実際はそんな簡単なものではありません。
確かに、“なるだけ”ならば、ハードルは低いかもしれません。
(国家資格に合格しなければいけないという高いハードルはありますが)
でも、“美容外科医の仕事を続けていく”となれば話は別で、相当な知識・技術・経験を必要とします。
技術だけの問題ではありません。
もし「美容外科医を目指してみたい」と感じる人がいれば、まずは「医師」になるための道のりを探し、医師としての確かな知識と技術を身に着けてみてください。
美容外科医になるかどうかは、それからでも遅くはありません。
ただ……。
美容外科医の仕事は、“非常に高収入”と言われています。
それはなぜか?
次回は、「美容外科医に転職するメリット・デメリット」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。