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【育児短時間勤務制度】なぜ浸透していない?制度のメリット・デメリットについて解説!

この記事は約10分で読めます。

以前に別の記事にてご紹介した、「育児短時間勤務」という制度。

その名がイメージする通り、“育児と仕事を両立しやすくするために、勤務時間を短縮する制度”のことを指しています。
(詳細は、リンク先の記事を参照ください)

この制度は国が推奨しているものであり、利用するための条件はあるものの、そこまで難しい要求が発生することはありません。

そして、もちろん条件さえ満たしていれば、パートや契約社員など“正社員以外の雇用形態”でも、制度を利用することが可能です。

……しかし、現状この制度を利用しているご家庭は少なく、「女性:29.2%」「男性:0.5%」と発表されています。

なぜここまで利用する家庭が少ないのか?

当然、この結果には原因があります。

今回は、この制度のメリット・デメリットについて詳しくご紹介していきたいと思います。

制度を利用した際の「給与」や「福利厚生」はどうなるのか?


本来、労働基準法に定められている1日の法定労働時間は、“8時間”です。

しかし、この制度を利用することによって、1日の所定労働時間を“原則として6時間”とすることができます。

この時に気になるのは「勤務時間が減る=お給料もその分減るのではないか……?」という点でしょう。

もちろんお給料だけでなく、社会保険やその他の福利厚生などにも影響を及ぼすことを危惧している方もいらっしゃるかもしれません。

まずは、「労働時間が減ることによる”雇用条件”の変化」について、ご紹介していきたいと思います。

「給料」の変化=減給はあるのか?

ほとんどの人が気になるであろう“給料の変化”から、お話していきましょう。

結論から言うと、“減給されるかどうかは企業次第”となります。

この「育児時短勤務制度」は、法律で“義務化”されています。

そのため、希望者が申請してきた場合、断ることはできません(断れば違法となる)。

しかし、この制度を利用して短くなった勤務時間に対する給与の支払いの有無は、”企業の任意”となっているのです。

要するに、「短くした時間分は、減給しても違法(違反)にはならない」ということです。

「義務化された法律なのに、どうして減給されなきゃいけないの!?」と制度の利用者側からすれば思うかもしれませんが……実はこうすることには理由があるのです。

その点は、後述にて……。

給与以外の「手当」への影響は?

給与以外にも、収入の支えとなる「各種手当」への影響も気になるところです。

勤務時間が短くなることによって、“手当の受給資格が満たせなくなる”場合もあり、人によっては“さらなる減給”という大きな痛手を負うことになりかねません。

この手当の部分も、一部減額する可能性は否定できません

ただし、給与・手当が減給=生活に支障をきたす恐れがあっては、何のために制度を利用するのか意味が分からず、利用者も増加することはないでしょう。

この点については、「制度を活用することで、従業員に不当な不利益が生じることは禁止されている」という前提があります。

それを踏まえた上で、しっかりと説明をして(説明を受けて)“労使での合意形成”が必要となります。

「社会保険」への影響は?

企業に勤務している方は、社会保険という国の医療保険に加入することとなります。

そして、この保険料は“企業と自身が半額ずつ負担をする”こととなっており、支払い額は“自身の給与額”によって変動します。

当然、給与額が高くなれば保険料も上がり、給与額が低くなれば保険料も下がります。

「給与が減給されるなら、社会保険料も下がる……?」

答えは、確かに“YES”ではあります。

しかし、減額される社会保険料はごくわずかであり、収入(月給)が減ることの方が悩みの種になるかと思います。

尚、「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出することで、毎月の社会保険料を下げることが可能です。

「期間中、一切の保険料を払わなくていい」……なんてことにはなりませんが、給与と社会保険料のバランスは(まだ)とりやすくなるかと思います。

「年金」への影響は?

上記社会保険と厚生年金保険は、「標準報酬月額」によって数値が変動(上がり下がり)します。

そして、この「標準報酬月額」というのは、“毎月の給料などの報酬の月額を、区切りのよい幅で区分したもの”のことを指しています。

何が言いたいかというと、「月給が変動(上がり下がり)することで標準報酬月額も変動し、それに合わせて社会保険料や厚生年金保険の額も変動(上がり下がり)する」ということです。

≪制度を利用する=勤務時間が減る=給与が減給する(可能性がある)≫

給与が減給となれば、当然「標準報酬月額」も下がるため、上記の社会保険やここで紹介している厚生年金の支払い額も下がります。

最後に、「年金の支払額が下がる=将来支払われる年金の額も下がる」ということになるため、この点(将来の生活)についても若干の不安を感じる人もいるのです。

ただし、養育機関の「従前標準報酬月額のみなし措置」を受けることによって、将来の年金額が減ることを回避することができます。

必ず「就業規則を確認しよう」

導入が義務付けられている制度なので、基本的に(キチンとした企業であれば)この制度についての詳細は「就業規則」に記載されているはずです。

なぜなら、「曖昧なままにしておくと、企業と従業員の間でいざこざが起こる可能性があるから」です。

その会社で働く従業員の“給与=生活”に直結して影響を及ぼすため、従業員の間で不満が生じてしまっては本末転倒です。

ですので、この制度については従業員の意見も取り入れながら、見直しや整備が行われることもあります。

その旨は会社から説明やらアナウンスやらが入ると思いますので、制度の利用を考えている人は、常にアンテナを張り巡らせておいた方が良いかと思います。

また不明な点があれば、必ず会社orすでに制度を利用した他の従業員に、質問や相談をすることもオススメです。

なぜ「給与の変動」は企業の任意なのか?


前項の給与の項目で、(勤務時間が短くなった分の)給与の減給は”企業の任意”であるとお伝えしました。

“任意”とすることには、理由があります。

それは、“周囲の従業員のモチベーションを保つため”です。

「勤務時間が短いのに、同じ給料?同じ正社員なのに……どうして???」

確かに“育児のため”であり、事情を理解してくれる人もいるのですが、中には上記のように不満を感じてしまう人もいるのが現実です。

そのため、“公平性を保つため”に、あえて“減給”を選択する企業もいるということです。

この点は、従業員の意見も聞いた上で、最終的な判断は企業によって決定されます。

育児短時間勤務制度を利用する”メリット”について


ここまでに記載した内容を見ていると、「この制度って利用し辛い……?」と、もしかしたら不安を感じる人もいるかもしれません。

しかし、正しい手続きを踏んで・正しく制度を利用することで、「利用者」にとっても「企業側」にとっても、メリットは確かに存在します。

この項目にて、それぞれのメリットをご紹介していきたいと思います。

「利用者側」のメリットについて

最大の利点は「”継続雇用”が保証されつつ、育児のための時間を確保することができる」この点に尽きると思います。

確かに“減給”の可能性はあるかもしれません。

しかし、“退職することなく同じ会社で働くことができる=継続的なキャリア形成ができる”ということであり、育児が落ち着いた後も、同じ会社で長く勤務し続けることができるはずです。

女性は、出産や育児のタイミングで、どうしても“退職するかどうか”の選択を迫られてしまいます。

しかし、退職してしまえば、それまで築いてきたキャリアは断裂してしまいます。

かといって、育児というものは本当に大変で、赤ちゃんに付きっきりになることも非常に多いです。

そのため、フルタイム勤務と両立することはほぼ不可能に近いと言っても差し支えありません。

それに、育児のためであったとしても「退職して、配偶者側の収入だけで生活をしていけるのか?」と不安を感じるご家庭もあるかもしれません。

「育児短時間勤務制度」を活用することで、仕事(キャリア形成・維持)と子育てを両立しやすくなり、かつ(減給されたとしても)ある程度の収入を得ることが可能である……というのは、利用者側にとっての大きな利点と言えるのではないでしょうか。

「企業側」のメリットについて

企業側の最大のメリットは、「人材確保の維持ができる」という点でしょう。

特に、社歴の長い経験豊富かつ優秀な従業員が「育児のために退職する」となってしまえば、企業にとっても大きな損失となってしまいます。

それに、「育児短時間勤務制度がきちんと整備・活用されている」となれば、その企業で働く従業員のモチベーションアップにも繋がります。

現在は、多くの企業が“人手不足”を課題としており、特に“優秀な人材の確保”が永遠の課題と言っても過言ではありません。

既に勤務している従業員にとっても・これから就職するであろう求人応募者にとっても、この制度を上手く活用できれば、企業の“イメージアップ”や大きな“アピールポイント”に繋がるのではないでしょうか。

育児短時間勤務制度を利用する”デメリット”について


デメリットは、上述でお伝えしたものが挙げられますが、この項目でもう一度まとめておきたいと思います。

もちろん、「利用者側」「企業側」の双方にデメリット(課題)となる点が存在します。

「利用者側」のデメリットについて

最大のデメリットは、やはり“減給”かと思います。

もちろん、お子さんのためなので仕方がない部分ではありますが、減給によって生活苦に陥ってしまう可能性もあるかもしれません。

それに、社会保険や年金の問題などもあります(手続きをきちんとすれば、多少緩和はされる)。

そしてもう一つ。

「勤務時間が減る=限られた時間で業務を遂行する必要がある」という点も挙げられます。

もちろん企業側で仕事量の調整はしてくれる可能性もあるでしょうし、一緒に働く人たちがサポートをしてくれる可能性も高いと思います。

しかし、仕事は仕事。

限られた時間内で、自身のやるべきことはしっかりやり切らなくてはいけません。

特に、管理職などを請け負っている人ならば、この傾向はより強くなるかと思います。

人によっては、この点にストレスを感じてしまう場合もあるかもしれません。

「企業側」のデメリットについて

企業側としてのデメリット……というより“注意しておかなくてはいけないこと”が一つあります。

それは「自社内での、育児短時間勤務制度をきちんと整備しておくこと」です。

もっと言うと、“制度に関して、従業員の声をきちんと把握して、反映すること”かと思います。

ただ単に「制度を導入しました!」だけでは、上述で挙げた“減給問題”などで、従業員同士の余計ないざこざや亀裂が入ってしまう可能性も十分あり得ます。

「導入して終わり」ではなく、「制度自体を、従業員が上手く活用していくためにはどうすればいいか?」を考えていく必要があるのです。

全ての人を納得・満足させることは難しいかと思いますが、多くの人が納得できる制度内容となれば、企業のイメージアップや社員のモチベーションアップにも繋がると思います。

まとめ

序盤でご紹介した内容だけを見ると、「育児短時間勤務制度はデメリットが目立つのではないか?」と感じてしまうかもしれません。

しかし、気になる面もあれば良い面もあるもので、そもそもデメリットばかりの制度を国(政府)が導入する訳はありません

残念ながら、一度退職してしまうと、その会社で築き上げてきたキャリアは全て無に帰します。

復職するとなれば、(よほど実績を積んできた人でない限り)すぐに以前と同じ役職で同じような仕事をする……ということは難しいかと思います。

そういう意味で、“キャリアを形成・維持しつつ、育児と両立できる”というこの制度は、利用者側にも企業側にとっても大きなメリットとなり得るはずです。

ただし、利用者側も企業側も制度の内容をきちんと理解しておく必要はあります。

双方にとって大きな武器となり得る可能性が高いので、お互いに・制度を理解し・よく話し合って上手く活用できる道を選択してみてください。

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