「社会福祉士」は、病気・怪我・障害・貧困など“日常生活を送ることが困難な人”の相談・支援を行う仕事です。
以前の記事で、その「なり方」についてご紹介をさせていただきました。
ただ、「相談」に関することで言えば、社会福祉士として仕事に携わっていない人……、例えば“介護”や“看護”の世界であっても持ちかけられる機会は少なくありません。
そのため、「介護福祉士」や「看護師」などで仕事をしている人も、それらとは別に社会福祉士の国家資格を取得しようと考える人もいます。
今回は「既に介護福祉士や看護師として勤務している人が、社会福祉士になるための方法」に焦点をあてて、詳しくご紹介していきたいと思います。
「介護福祉士」が社会福祉士を目指すケースについて
2つの違いについて
「介護福祉士」については、過去に別の記事にてご紹介をしておりますので以下にリンクを貼っておきます。
どちらも「福祉系三大国家資格」の一つであり、福祉系の仕事に就く際に有利となる資格です。
「介護福祉士」の主な仕事となるのは、その名の通り“介護”に関連するものです。
例えば、以下のようなものが該当します。
◆介護者(利用者)の家族に対して『相談』や『助言』を行う
◆現場で働く介護スタッフの教育・指導を行う
そのため、介護に関する“相談”や“支援”であれば、社会福祉士の資格は必要ありません。
(そもそもこれら国家資格は”名称独占資格”であるため、資格がなくても業務を行うことはできる)
では、介護福祉士として仕事をしている人が、「社会福祉士の資格を取得したい」と考えるケースはなんなのか?
これには、大まかに以下のような理由が挙げられます。
②介護職以外の方法で、人の役に立ちたいと考える人
介護福祉士が行える相談・支援業務は、あくまで“介護に関するもの”だけです。
対して社会福祉士として仕事をする場合は、介護はもちろん、病気・障害・貧困など“日常生活を送ることが困難な人が対象”となっており、業務(相談対象)の範囲が格段に広くなります。
「介護福祉士」と「社会福祉士」のダブルライセンスを所持していれば、介護業界でのキャリアアップはもちろん選択できる職種の幅も大きく広がることとなるのです。
加えて、「社会福祉士として仕事をする=介護福祉士に比べ”肉体的な負担が減る”」ことにも繋がります。
介護福祉士は、生活援助や身体介護などの「介助」も行わなくてはいけません。
※「介護」と「介助」の違いについては、以下記事を参照ください※
対して社会福祉士の場合は、相談や支援・各種サービスへの誘導・仲介などを主な仕事とするため、体力や筋力が衰えても無理なく仕事を続けられるという利点もあります。
こういった点で、社会福祉士の資格を取得するケースがあるのです。
どうすれば資格を取得できるのか?
既に介護福祉士として職に就いていることが前提となるため、自身の最終学歴(どの学校を卒業したか?)によって進学ルートが変わってきます。
大きく分けると、以下の3つが挙げられるでしょうか。
②一般大学を卒業している人
③大卒以外の人
それぞれ、個別にご紹介していきます。
福祉系大学を卒業している人
同じ福祉に関する資格であるため、介護福祉士となるべく既に福祉系の大学に通っている人も少なくありません。
この場合、共通する「基礎科目」を既に履修しているケースもあります。
もしこの「基礎科目」を履修している人は、「短期養成施設」に6か月間通うことで受験資格を得ることが可能となります。
一般大学を卒業している人
一般大学=4年制の大学を卒業している場合は、「一般養成施設」に1年以上通うことで受験資格を得ることが可能です。
上記の福祉系大学を卒業している人にも共通して言えることですが、日中は介護の仕事に携わっている人が多いかと思います。
短期であれ一般養成施設であれ、半年~1年以上は仕事と勉強を両立しなければいけない期間が発生します。
夜間や通信課程のところもありますし、大卒以外の場合に比べて養成施設に通うのは短期間で済みますが……。
それでも、仕事と勉学を同時並行で進めていくことに変わりはないため、体力・精神力ともにハードであることに変わりはありません。
この点は事前にしっかりと情報を収集した上で、資格取得に向けて動き出すかどうかを検討してみてください。
大卒以外の人
介護福祉士の受験資格は、大学を卒業していなくても得ることができます。
それは、以下の2つをクリアすることです。
◆「介護職員実務者研修」を修了すること
そのため最終学歴が“大学卒業でない”という可能性もあり得ます。
その場合は、改めて(福祉系を含む)大学or専門学校に通い直す必要があります。
※詳細は以下の記事より※
もし「最終学歴が大卒以外だが、社会福祉士の資格を取得したい!」と考える人は、“4年生の福祉大学に入学する”ことをオススメします。
「4年も福祉系の大学に通わないといけないの!?」と感じる人もいるかもしれません。
ただ、4年生の福祉大学に通う以外のルートを選択した場合、「相談援助実務の経験を積まなければ、受験資格を得ることができない」のです。
4年生福祉大学に通うのであれば、一般or短期養成施設に通う必要もありません。
既に介護福祉士として何かしらの職に就いている人の場合、相談実務と二足の草鞋を履くことは困難……というより不可能です。
4年生の福祉大学も各養成施設と同じく、夜間や通信課程のところもあるため、介護福祉士として働きつつ大学生として勉強することも十分可能ではあります。
加えて、介護福祉士という国家資格を取得していることになるので、これまで通っていた別の学校で取得した単位を認定してくれて、2年や3年の勉強で済む可能性もあります。
大卒以外の場合は、かなりの勉強期間を必要としてしまいます。
ただ、職場によっては資格取得を推奨しバックアップしてくれるパターンもあるため、「絶対に仕事と勉学を両立することは不可能」という訳でもありません。
この点についても、しっかりと情報収集を行ったり職場の人に相談をしたりして、進むべき方向を模索してみてください。
「看護師」が社会福祉士を目指すケースについて
看護師は”医療の専門職”である
まず看護師については、過去に別の記事にて詳しくご紹介をしておりますので、そちらを参照いただければと思います。
◆疾患や怪我を抱える人の、医療的なケアをする
◆患者およびその家族の、精神面のケアをする
これが、看護師の主な仕事です。
しかし、現代は看護師の働く場も多様なものとなっています。
病院などの医療施設はもちろん、介護施設や訪問看護ステーション、障害者支援施設(入所・通所など)、児童発達支援・放課後等デイサービスなどで勤務する看護師も大勢います。
この時、担当する患者や利用者……児童支援施設で働く人であればお子さんからも何かしらの相談を持ち掛けられることが少なくありません。
生活面や経済面はもちろん、お子さんであれば家庭の事情なども相談されるケースも十分あり得ます。
(児童福祉司という職種があるように、子どもが関連する家庭の問題というのも多く存在する)
しかし、看護師はあくまで“医療の専門職”です。
福祉や介護のスペシャリストではため、看護師の資格だけでは事情の異なる個々の相談者に対して、的確なアドバイスを送ることが困難となります。
そのため、さまざまな問題ごとに対して相談・支援ができるように、社会福祉士の資格取得を目指す看護師もいらっしゃるのです。
(もちろん、環境を変えるためや自身のキャリアアップのためといった理由もある)
看護師の資格も、社会福祉士と同じ「国家資格」です。
当然、複数の国家資格を所持している方が、キャリアアップはもちろん就職の選択肢も大きく広がり、さまざまな転職先を見つけることもできるでしょう。
社会福祉士の受験資格を得るための条件とは?
看護師としての受験資格を得る場合、多くの人は「看護学校」に通うこととなります。
つまり、福祉系の勉強は基本的に行うことはありません。
(介護福祉士の項目で記載した”基礎科目”を履修できない)
そのため、大きく以下2つのルートで方向性が変わってくることとなります。
②大卒以外
ただし上記2つは、介護福祉士でご説明した内容と同じです。
①の場合は「一般養成施設」に一定期間通うこと。
②の場合は、「4年生の福祉大学に通う」もしくは「4年生以外の大学・短大・専門学校に通い、その後”相談実務経験”を得て、一般養成施設に入学する」かです。
ちなみに、この時に注意しておきたいのは、「看護師として患者からの相談に応じること=相談援助の実務経験にはみなされない」ということです。
上記でもお伝えしたように、“看護師=医療の専門職”であり、相談援助実務とは直接の関りはありません。
例えば病院で働くのであれば「看護師」としてではなく、「生活相談室」や地域連携室などに所属する「医療ソーシャルワーカー」として、相談業務に専業しなければならないのです。
「普段から患者さんの相談を受けているから……」は通用しません。
「相談援助の実務経験を積みたい!」となった場合、該当する部署に異動を申し入れるか、福祉施設などに転職をする必要があるため、この点は十分にご注意ください。
「独学」で試験に合格することは可能なのか?
完全に独学で試験に臨むことは不可能である
まず、結論から言うと「完全な独学で、社会福祉士国家試験に臨むことは不可能」です。
なぜなら、数多く存在する受験資格を得るためのルートのどれもが“いずれかの学校に通う必要がある”からです。
ただし、“受験資格さえ満たしてしまえば”国家試験の対策自体は独学で行うことも可能ではあります。
社会福祉士の試験合格率は「約30%」となっています。
既に介護や看護など社会人として仕事をしている人の場合、仕事と学業を両立しなければいけないため、中々一発合格といかないと人も多いでしょう。
そのため、不合格となってしまった人(=すでに受験資格は得ている人)が、再度受験に臨むために独学で勉強するケースは少なくありません。
とはいえ、合格率30%ほどの国家試験に独学で挑戦することは中々に困難な道のりでもあります。
ここでは、独学で臨む際のメリット・デメリットをご紹介しておきたいと思います。
独学で臨む”メリット”について
結論だけを簡潔にまとめると、「自分のペースで勉強ができ、学費など高額な費用がかからない」という点がメリットに挙げられます。
- 学校に通う
- 短期講座に通う
- 直前対策だけでも受ける
これだけでも、学校に通ったり、学校のペースに合わせて仕事と勉強を両立させていかなくてはいけません。
また、どんなに安くても数万円~数十万円の学費が発生してしまいます。
独学で勉強する場合、勉強のペース配分は自分で決めることができますし、費用もテキスト代(参考書や問題集など)だけで済むため、大幅に費用を抑えることが可能となります。
もちろん、学校に通わないので、どこで勉強するのも自由です。
また、地方在住の人の場合、近く(自宅や職場)に予備校などの学校がないことも少なくありません。
移動に掛かる時間を独学で勉強する時間にあてれば、体力的にも精神的にも多少は楽になるはずです。
独学望む”デメリット”について
最大の課題は“自分との戦い”というところでしょうか。
仕事と勉強を両立する訳ですから、どんな形であっても体力・精神力ともに負担は大きくなってしまいます。
決めて休むならばともかく、サボり癖がついてしまうと勉強への意欲はどんどんなくなってしまうため、この点は特に注意しなければいけません。
そして、独学のデメリットは後2つ挙げられます。
②最新の情報に対応しにくくなる
①についてですが、社会福祉士の合格率は上でも述べた通りかなり低いです。
加えて、合格基準として「18科目(免除者は7科目)の全てに得点が必要」があります。
たった1科目だけでも「0点」があれば、その時点で不合格となってしまうのです。
独学で勉強する場合、自分の得手不得手が把握し辛くなります。
そして②ですが……。
福祉であれ介護であれ、社会情勢の変化に伴いかなりの頻度で法改正が行われます。
そのため、国家試験は「最新の改正内容に基づいて問題が出題される」こととなります。
確かに、参考書や問題集は「2021年度版」など、最新の情報が記載されたものが販売されていますが、そのすべてが必ず最新の改正内容に対応しているわけでもありません。
そのため、独学で常に最新の情報を収集し続けるには、かなりの労力を要求される可能性が高くなるのです。
結論:独学は不可能ではないが、学校に通えるなら通った方が良い
再受験を独学で挑むことは決して不可能ではありません。
実際に、独学で試験に合格した人だっています。
しかし、“相応の努力は必要”となります。
そのため、よほどの事情がない限りは、学校に通いながら仕事と勉強を両立していくことをオススメします。
最低でも「模擬試験」だけは受けておいて損はありません。
また、一人だけで仕事と勉強の両立をしていると、どうしても視野が狭くなってしまい、疲れやストレスが溜まりやすいです。
学校などに通えば、似た境遇の人と出会える可能性もあり、それだけでも精神的な負担は軽減される可能性があります。
もちろん人それぞれにさまざまな事情があるため「絶対に学校に通うべき」とまでは言いませんが、可能であれば学校に通った方が得策のようには思います。
その方が、合格できる可能性は高まるのではないかと考えます。
まとめ
前庭として「仕事と勉強を両立しなければいけない」パターンが多いため、必然的に合格難度はより高まってしまいます。
また、肉体的・精神的な負担も大きくなるため「資格取得を目指すかどうか?」はしっかりと熟考した上で決めてみてください。
受験資格を得るためのルートも人によってさまざまに異なりますので、その点の情報収集もお忘れなきようご注意ください。
もし、自分が働いている職場や近しい人に「社会福祉士の資格を所有している人」がいるならば、その方に助力を申し入れるのも一つの手段かと思います。
そして、独学で勉強する場合も、情報収集はしっかりと行うようにしてください。
もし「どうしても独学で試験に臨みたい」と考えている人は、福祉制度や介護制度の最新の情報については、特に情報収集を怠らないことです。
人によっては、自分が受験資格を得るために通っていた大学や養成施設に講師に助力を求めるのも良いかもしれません。
一人でできることには、どうしても限界があります。
どんな方法・ルートで試験の望むにしても、何かしら・誰かの助力は得た方が、合格率は格段にアップすると思います。
これらの点に気を付けて、ぜひ合格目指して頑張ってみてください。