現在、そのニーズが高まりつつある「保育業界」。
「新型コロナウイルス」の影響もあって在宅ワークをする人が増加しましたが、「いくら在宅でも、仕事と子どもの面倒を両方見るのは難しい」として、保育所に子どもを預けたいと考えるご家庭が増えたのが理由の一つです。
そして、就労や療養などの事情で保育を行えない保護者に代わって、子どもたちの保育を担当するのが「保育士」の仕事となります。
この「保育士」に関しては、以前に別の記事でご紹介をしました。
今回の記事では、以前に記載しなかった「保育士のなり方」や「保育士資格」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「保育士」になるにはどうすればいい?
まずは、“保育士のなり方”について、大まかにご紹介していきたいと思います。
「保育士」になるために必要なものは、”2つ”存在する
まず、「保育士」になるために必須となるのは、以下の2つです。
②「保育士登録」をする
①が今回のメインのお題となるので、詳細は後述でご紹介をしていきます。
そして②ですが、保育士として働くには“保育士登録”を必要とし、資格を取得しただけでは働くことができません。
資格取得後に、都道府県知事委託 保育士登録機関「登録事務処理センター(社会福祉法人 日本保育協会)」から「保育士登録簿」への登録手続きをしなければいけません。
その後、申請先の都道府県で“審査に合格”し、“保育士証が交付されること”で、保育士として仕事をはじめることができるのです。
なぜ”資格取得”や”登録”をしないと保育士になれないの?
保育士資格は“児童福祉法第18条の4で定められた国家資格”であり、その試験も中々に難易度の高いものとなっています。
加えて、資格取得後には「保育士登録」までしなければいけません(審査に合格しなければいけない)。
保育士になるために、これほどの険しい道のりがあるのはなぜなのか?
その理由は、「子どもの健全な成長を手助けするとともに、子どもの”命”を預かり”安全を確保する”」という重要な役割があるからです。
◆「どんな人物かもわからない(資格=実績を証明できるものが何もない)」
極論を言うと、「このような人達ばかりがいる保育所に、自分の子どもを預けたいと思いますか?」ということです。
それに、子どもはいつどこでどんな行動をするか予測ができませんし、繊細な時期である子どもに対しての“言動”や“配慮”にも常に気を配る必要があります。
だからこそ、保育・子どもについての正しい知識を身に着けた上で、子どもの保育だけでなく・保護者に対しても保育指導を行っていく「保育士」という存在が必要不可欠となるのです。
加えて、保育所とは“子どもにとって、初めての社会生活を送る場”でもあります。
基本的な生活習慣を身に着けさせることはもちろん、子どもが社会性を育めるように保育士が手助けをしていかなくてはいけません。
こういったことが理由で、「資格取得」→「保育士登録」→「審査に合格」という長く険しい道のりをクリアして、確かな知識を有しているかどうかを見極める必要があるのです。
実は、元々は「民間の資格」だった
ご存じない方も増えてきたのではないかと思うのですが……、元々「保育士資格は、民間の資格」だったのです。
それに、そもそもは「保育士」とは呼ばれておらず、「保母or保父」と呼ばれていた職業なのです。
そして、公的な書類への職業欄には、男性であっても「保母」と書く必要があり、これに対して多くの意見が寄せられたそうです。
そこで、平成11年に「男女雇用機会均等法」の改正に合わせ「保育士」という名称が生まれ、平成15年には「児童福祉法の一部を改正する法律」によって「保育士」が国家資格と定められたのです。
余談ですが、「保母資格」と「保育士資格」は全くの別物であり、保母資格だけでは保育士として働くことはできません。
(登録事務センターにて資格切り替えの手続きを行う必要がある)
「保育士」と「幼稚園教論」は全く違う資格である
「保育園」「幼稚園」「認定こども園」の違いについても以前に別の記事でご紹介したことがありますが、当然「保育士」と「幼稚園教論」は全く別の職業であり、異なる資格です。
この項目では、この2つの違い+αについてお話していきたいと思います。
「保育士」と「幼稚園経論」の違いとは?
この2つの違いを表でまとめると、以下のようになります。
ご覧の通り、管轄や設置目的・対象年齢や保育時間など、全てが異なります。
そもそも、必要な資格も違いますので、保育士資格を所持しているからと言って幼稚園に勤務することはできません。
なぜここまで大きく異なるのかというと、表にも記載している通り「施設の(設置)目的」が全く異なるからです。
「保育所」および「保育士」は、“基本的な生活習慣を身に着け、社会性を育む”ことが、主な業務目的となります。
対して「幼稚園」および「幼稚園教論」は、「小学校に入学するための準備段階として、情操教育を主体とした”教育を行う”」ことが、主な目的となります。
◆「どっちに通わせるのがいいんだろう?」
こういった点が気になる方は、是非上に貼っているリンク先の記事をご覧いただければと思います。
保育士の勤務先は「保育所」だけじゃない!
幼稚園教論の場合、勤務先は「私立/公立の幼稚園」もしくは「認定こども園」しかありません。
つまり、“未就学児への教育のみが対象”となるのです。
しかし、保育士の方は“18歳未満の子どもを対象”としているため、保育園や認定こども園以外でも幅広い施設で勤務することができます。
例えば、大まかにではありますが、以下のようなものが挙げられます。
◆障害児向けの施設(児童発達支援・放課後等デイサービスなど)
◆児童心理治療施設 ※これも児童福祉施設に含まれる※
◆託児所
上で挙げたのはあくまで大まかな施設名なので、細分化すればもっとたくさんの勤務地が全国各地に存在することとなります。
このように、現在の保育士は、“保育所以外でも需要が高まっている職業”なのです。
保育士資格を取得する方法は?
「保育士のなり方は分かったけど、肝心の”保育士資格”ってどうやったら取れるの?」
この項目では“保育士資格の取り方”について、詳しくお話していきたいと思います。
取得方法は”2種類”存在する
保育士資格を取得する方法は、大きく“2つ”存在します。
それが、以下です。
◆「保育士試験」に合格する
それぞれ、各項目ごとに詳細をご紹介していきましょう。
1.「養成学校」を卒業する
これは、その名の通り「保育士になるための養成学校を卒業する」ことです。
保育士養成学校であれば、大学/短大/専門学校など、どれでも構いません。
ただし、“2年以上在籍”しており、“62単位以上を習得するor習得する見込みがある”ということが条件となります。
こちらの場合は、下記の「保育士試験」を受ける必要はありません。
養成学校に通うということは、あらかじめ進路が決まっている人がほとんどです。
実は「保育者になることが夢だった」という人は、意外に多いのです。
下記は、厚生労相が公開している≪保育士の現状と主な取組(令和2年8月24日)≫にある「養成校の学生が、保育職への就職を目指すことを決めた理由」です。
ご覧の通り「保育者になることが夢だったから」が、“78.6%”でダントツの1位となっています。
小さいころからの夢を叶えるために、養成学校に通う人も多いのです。
2.「保育士試験」に合格する
こちらの保育士試験を受けるルートの方は、試験に行きつくまでの方法として“3つのルート”が用意されています。
②高等学校を卒業後、「児童施設」で実務経験を積む(2年以上/2800時間)
③「児童施設」で実務経験を積む(5年以上/7200時間) ※1991年3月31日以前に高等学校を卒業している人が対象となる※
- 「一般大学に通っていたけど、保育士の仕事をしてみたいと思った」
- 「社会人で別の仕事をしているけど、保育士という仕事に興味を持った」
このような人が、こちらの「保育士試験ルート」を通ることとなります。
ちなみに、上記の“児童施設での実務経験”ですが、保育士資格を所有していないため“保育士と名乗ることはできません”。
ただし、「保育補助」という仕事(職種)があり、こちらであれば無資格でも保育に携わることが可能となります。
保育補助は、“保育士の指示のもとで”子どもたちの保育を担当していきます。
未経験・無資格からでも挑戦できる仕事なので、保育という仕事に関心がある方は、是非チャレンジしてみてください。
「保育士試験」について
保育士の試験についての情報を表にまとめると、以下のようになります。
試験は「筆記」と「実技」があり、それぞれの試験内容は以下の通りです。
〈計8科目〉
◆保育原理
◆教育原理及び社会的養護
◆児童家庭福祉
◆社会福祉
◆保育の心理学
◆子どもの保健
◆子どもの食と栄養
◆保育実習理論【実技試験】
〈保育実習実技〉
◆音楽表現に関する技術
◆造形表現に関する技術
◆言語表現に関する技術
※上記の中から、2分野を選択する
ちなみに、合格科目は”3年間有効”となります。
そのため、もし1度に全ての科目に合格ができなかったとしても、期限内であれば“不合格科目のみの受験が可能”となっています。
合格率はどのくらい?
こちらも、上記と同じ令和2年の≪保育士の現状と主な取組≫の資料からご紹介させていただきたいと思います。
平成15年度~令和元年度までの合格率は、以下のようになっています。
受験者数は年々増加傾向にありますが、合格率はかなり低く、令和元年度で“23.9%”となっています。
それでも、平成23年度までは15%を切っている年度がほとんどのため、合格率は徐々に上昇傾向にあるのかもしれません。
まとめ
先日、「潜在保育士」についての記事を公開しました。
上述でご紹介したように、保育士試験の合格率はかなり低く、試験に合格するだけでも相当な勉強量を必要とします。
それにも拘わらず、潜在保育士の数は増えているのが現状です。
もちろん、結婚・出産・育児・介護など、家庭のやむを得ない事情で退職をし復職するタイミングを計っている方もいらっしゃるとは思います。
しかし、それ以上に「労働時間/給与/福利厚生」などの“労働条件”がネックになって、保育士への復職をためらっている人も多いのです。
ただし、現状を踏まえて、国や保育所なども様々な取り組みを行っています(詳細は上記記事より)。
「小さい頃からの夢だった」と保育士を目指す人もいます。
その人たちが、長く保育士として働いていけるように、保育業界にもさらなる働き方改革が行われることを願っています。