2005年から始まった新しい制度である、「栄養教諭(えいようきょうゆ)」。
これは、「小・中学校で児童や生徒に食の指導を行ったり、学校給食の管理・運営に携わったりする仕事」のことを指しています。
そして、前回の記事で、“仕事内容”や“栄養士との違い”について、詳しくご紹介をさせていただきました。
学校において、「教員(公務員)」として、子どもたちの「食育(食の教育)」に携わることができるこの仕事……。
一体、どうすれば栄養教諭になることができるのでしょうか?
今回化は、「栄養教諭のなり方」や「やりがい(メリット)」、そして「将来性」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
どうすれば「栄養教諭」になれるのか?
まずは「栄養教諭のなり方」から、ご紹介していきたいと思います。
必須となるのは、〇〇の免許である
冒頭でもお伝えしたように、“栄養教諭=教員”です。
そのため、「教員免許」が絶対に必須となります。
基本的には“栄養教諭の養成課程がある学校を卒業する”ことで、教員免許(栄養教諭)も取得できるのですが、学校の種別によって取得できる教員免許の種類が変わってきます。
その内容は、以下の通りです。
尚、二種免許(短期大学)のみ、栄養士資格がある場合、管理栄養士資格を持っていなくても栄養教諭免許を取得することが可能となります。
これらは、文部科学省「栄養教諭免許制度の概要」に詳細が記載されておりますので、気になる方は確認してみてください。
取得ルートにはいくつかの種類が存在する
この「栄養教諭免許」は、2005年にできた比較的新しい資格制度となります。
そのため、以下のように受験者の状況に応じて取得ルートがいくつか存在します。
◆「栄養士or管理栄養士免許」は取得しているが、「教員免許」を取得していない場合
◆「学校栄養士(学校栄養職員)」としての実務経験がある場合
◆一切の資格・実務経験を有していない場合
それぞれ表にしてまとめてみると、以下のようになります。
「受験者数」や「採用者数」はどうなっているの?
次に、栄養教諭採用試験の、「受験者数」や採用者数について見ていきたいと思います。
こちらも、直近の数字を表にしてまとめてみると以下のようになります。
表の数字だけを見ると分かりづらいかもしれませんが、2015年以前などに比べると、受験者数・採用者数ともに増加傾向にあるようです。
ちなみに、採用者の男女の内訳は、「男性:4.3%」、「女性:95.7%」となっており、大半を女性が占めていることになります。
また、新卒の既卒の割合ですが、参考まで2020年の試験の内訳を見てみると、以下のようになっています。
◆既卒:60.0%
若干ではありますが、他の教員採用試験よりも新卒の割合が多くなっているようです。
最後に、「採用率」についてです。
この採用率というのは、以下の計算方法で算出されます。
「採用率(%)=採用者数/受験者数」
そして、栄養教諭採用試験においては、「既卒の受験者」の方が、採用率が高くなっているとのデータが出ています。
例えば、2020年度であれば、「新卒:10.9%」に比べて、「既卒:13.3%」となっていました。
ここまでにご紹介した情報をまとめると、以下のようになります。
●他の教員免許に比べると、「新卒」の受験者の割合が多い
●「新卒」と「既卒」では、「既卒」の方が採用率は高い
栄養教諭の「やりがい」や「メリット」とは何か?
「やりがい」について
栄養教諭の最大の特徴でもあり、最大のやりがいともなるのは、「栄養の専門家である教育者として、学校の教壇に立つことができること」です。
要するに、「生徒と直接触れ合える機会が持てる」という点にあります。
この点は栄養士(学校栄養職員)との最大の違いです。
栄養士(学校栄養職員)の場合、バックヤード……いわゆる“縁の下の力持ち”として、生徒たちの見えないところで、生徒たちの栄養面のサポートをすることになります。
対して栄養教諭の場合は、“教壇に立って、生徒たちと直接触れ合える機会を作れる”という点から、生徒のリアルな声を聴くことができるのです。
◆「好き嫌いはあるけど完食できた」
など、自身がかかわった仕事の成果を、直接生徒から聞ける(感じることができる)と点が、やりがいであり・モチベーションアップに繋がる人も多いようです。
「メリット」について
こちらも、最大の特徴であり・最大のメリットになるのですが、「公務員として働ける」という点が挙げられます。
公務員であるため、給与や待遇などは安定しており、経験年数とともに給与も昇給していきます。
(公務員は、定額昇給が定められているため)
年齢とともに昇給していくのは、他の施設(病院や保育園など)でも同じと言えば同じですが、定額昇給が定められている分、より安定した一定水準の給与を得ることができるようになります。
また、“公務員として学校に勤務する”こととなるため、勤務時間や休日などもかなり安定していると言えるでしょう。
昨今は多くの企業で「働き方改革」が推進されていますが、“公務員=国が雇用している社員”であることから、国が推進する働き方改革の影響をもっとも受けやすくもあります。
こういった点で、一定の給与水準や待遇を得ながら、働きやすい環境に身を置けることが、最大のメリットと言えるのではないでしょうか。
注意すべき点(デメリット)はあるのか?
「教壇に立って、生徒と直接の関りを持つことができる」
これは、やりがいでもあり、注意すべき点(デメリット)にも繋がると思います。
現時点では、対象となるのは小・中学生であるため、ある種“リアルな声”がそのまま自分の耳に入ってきてしまうのです。
また、関わりを持つのは生徒だけでなく、生徒の保護者にも栄養に関する指導やアドバイスを行わなければならない場合もあります。
詳細は、以下記事にて。
中には「モンスターペアレント」のような、言い掛かりといえるような理不尽な要求・苦情・文句・非難などを繰り返す人もいるため、人間関係に悩まされることもあるかもしれません。
加えて、栄養士(学校栄養職員)以上に業務内容が幅広いという点にも、念のため注意が必要です。
学校栄養教員が埋め持つ仕事(給食の献立作成や調理など)に加え、表立って栄養に関する指導も行わなくてはいけないため、業務量は学校栄養教員以上に多くなってしまい多忙となりがちです。
もちろん、「教員」であるため、活躍の場が“学校に限定される”という点も注意しておかなくてはいけません。
「病院やメーカーなどで働きたい場合や、子どもに限定せず多くの人に関わりたい場合は、”栄養士”として働くのがよい」というケースもあるため、事前に「どんな栄養士を目指したいのか?」は、自分自身で明確にしておいた方が良いかと思います。
栄養教諭の「将来性」について
上述の「栄養教諭の受験者数・採用者数」でお伝えした通り、栄養教諭の採用率は増加しています。
現時点(2021年時点)では、「栄養教諭の配置や採用基準は、各都道府県の裁量に任されている」ではありますが、今後はどうなるか分かりません。
しばらくの間は同じ採用基準で行くかもしれませんし、近い将来に「配置が義務化される」という可能性もあるかもしれません。
もし義務化されることとなれば、より栄養教諭の必要性は増していくこととなります。
その時のために(そうなる前に)、今から栄養教諭の道を目指すのも良いかもしれません。
また、この手の記事では再三お伝えしている「機械による自動化」ですが、教壇に立って生徒に直接指導する立場にある教員の仕事が、機械に取って代わられることはありません。
その専門分野を生かして、長く仕事を続けることができることでしょう。
もちろん、公務員であることから安定した給与のもとで、安定した働き方もできるでしょうし、「将来性は十分にある」といっても過言ではないと思います。
まとめ
栄養教諭の採用者数は増えており、「今後も増加していく+機械に取って代わられることもない+公務員として安定した働き方ができる」という点で、ある種将来安泰の職業と言えるかと思います。
ただし、注意しておかなくてはいけない点もあります。
②生徒や保護者と直接関わる機会がある=メリットばかりではなく、デメリットにも目を向ける必要がある
③仕事量は、栄養士(学校栄養職員)よりも多くなる
④栄養教諭=活躍の場は”学校”に限定される
「栄養教諭は安泰なのか!じゃあ栄養教諭を目指そう!」……と、良い面にばかり目を向けるのではなく、きちんと注意すべき点にも目を向けておく必要性はあります。
栄養士および管理栄養士という括りで見た場合、活躍できるフィールドはそれこそかなりの数が存在します。
大切なのは、自分自身が「栄養士としてどんな働き方がしたいのか?」だと思います。
この点を念頭において、まずは“なりたい栄養士像”を模索してみてください。
その上で、目標が明確に定まったら、知見を広げてその夢を叶えるべく一歩を踏み出してみてください。
最後に。
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