以前から、産休・育休に関する様々な記事を投稿してきました。
≪「産休」についての記事≫
≪「育休」についての記事≫
これら記事の中で、少しだけ“支給されるお金(補助金)”についてご紹介もしていましたが、実際に産休・育休時に受け取れるお金(制度)というものは、どういったものがあるのでしょうか?
今回は、この点について詳しくご紹介していきたいと思います。
※要注意※出産は「健康保険」が適用されない
産休・育休時に支給されるお金についてお話をする前に、「出産と健康保険」の関係性について少し触れておきたいと思います。
結論から言うと、「出産は健康保険が適用されない」となります。
なぜなら、“出産は怪我や病気ではない”からです。
例えば、怪我や病気をした時に病院に行き「健康保険」を出すことで、医療費の自費負担は“原則3割”となります。
しかし、“出産=怪我や病気ではない”ということから、出産に対して健康保険が適用されることはありません。
つまり、基本的には「妊婦検診」や「出産」は、“全額負担”となってしまうのです。
ただ、「では、出産や育児に関して、健康保険は一切の意味を持たないのか?」と言われると、実はそうでもありません。
それが、後述でご紹介する各補助金や手当となるのですが、出産に関する給付金は「健康保険に加入していること」が、受け取れる条件の一つとなることが多いのです。
出産時に掛かる費用はどのくらいなの?
まず結論から言うと、出産にかかる平均費用は「約50万円」と言われています。
「公益社団法人 国民健康保険中央会」にて発表している、出産費用の全国平均をまとめてみると以下のようになります。
年度によって多少前後することはあるでしょうが、“おおよそ50万円前後の出産費用は事前に準備しておかなくてはいけない”ということになります。
ちなみに、現代の日本は少子化が問題視されています。
そして、初めて出産する女性の平均年齢も少しずつ増加しているのが現状です。
例えば、1975年では“25.7歳”だったものが、2018年度では“30.7歳”となっています。
この要因としては、例えば女性の社会進出や子育て環境の変化などもあると思いますが、もう一つ……この「出産・育児にかかる費用を捻出できない」ということも原因として挙げられるのではないかと言われています。
出産・育児の際に受け取れる「お金」について
前項でお伝えした通り、妊娠・出産に関する費用は「全額自己負担」であり、出産後も育児に関する費用が発生します。
しかも、出産・育児を行う際は、一時的に女性は仕事を休職or退職を余儀なくされてしまいます。
現在の日本で共働きが当たり前となっているのは、女性の社会進出が目的であることもそうですが、そもそも“共働きでないと生活を維持できない”というのも大きな理由の一つです。
普段の生活に加えて、出産・育児に関する費用も負担をする……一般的な家庭であれば、相当な負担となるでしょう。
そのため、国や自治体から“お金の負担を減らすための様々な制度(補助金)”が設けられているのです。
その種類はいくつかありますが、「妊娠中」と「出産後」の2つに大別が可能です。
◆妊婦検診費の助成
◆高額医療費【出産後】
◆出産育児一時金
◆出産手当金
◆育児休業給付金
◆児童手当
◆医療費控除
主に気になるのは【出産後】に受け取れる各手当や給付金かと思います。
また、当然ながらそれぞれでもらえるケースが異なり、“支給元”もそれぞれによって異なる場合があります。
それぞれ順番にご紹介していきましょう。
「妊娠中」の助成について
妊婦検診費の助成
【支給元:住民票のある自治体】
上述でもお伝えしたように、“妊娠・出産は病気ではない”ことから、健康保険の適応外です。
そのため、当然「妊婦検診」も全額負担となります。
この妊婦検診にかかる費用の一部を“自治体が負担する”ことが「妊婦検診費の助成」となるのです。
ただし、自治体によって「支援を受けることのできる回数」や「助成金額」は異なります。
これは、住民票のある自治体へ「妊娠届出書」を提出する際などに申請することが可能ですので、事前にお住まいの地域の助成内容について確認を取っておくことをオススメいたします。
高額医療費
【支給元:加入している健康保険組合など】
何度もお伝えしてきた通り、妊娠・出産に健康保険が適用されることはありません。
ただし、一部例外があります。
それは、「何らかの医療行為が必要となった場合」です。
例えば、「つわり」「妊娠高血圧症候群」「切迫早産」「帝王切開」などが挙げられ、この時は健康保険が適用され自己負担は“3割”となります。
ただ、健康保険を利用した(3割負担となった)場合でも、手術内容によっては医療費が高額になることがあります。
その際に、申請を行うことで“自己負担限度額を超えた分が戻ってくる”のです。
尚、もし事前に高額な医療費が発生することが分かっている場合は、加入している医療保険に申請して「限度額適用認定書」をもらっておくことで、病院の窓口で支払う金額を限度額内にすることも可能となります。
また、この自己負担限度額は、年齢や所得によって異なりますので、必ず「厚生労働省」のサイトで内容を確認しておくようにしてください。
「出産後」に受け取れるお金について
出産育児一時金
【支給元:加入している健康保険組合など】
生まれてくる子ども一人に対して、“原則42万円”を受け取ることができます。
条件は「健康保険に加入している」こと。
もしくは「配偶者(夫)の扶養に入っている方」であり、原則として日本に住んでいるほぼ全ての出産をする女性が受け取れる制度と言えます。
※日本では、全ての国民が公的な医療保険制度に加入する義務「国民皆保険制度」があるため※
尚、申請期限は「出産した日の”翌日から2年間”」であり、住民票のある自治体もしくは勤務先に問い合わせをし、申請が可能となります。
出産手当金
【支給元:加入している健康保険組合など】
これは、会社勤めをしていた女性が“出産のために会社を休んだ期間に応じて”、公的機関から手当金を受け取ることができる制のこと度です。
条件は、「勤務先の健康保険に加入していること」と「産休中に給与の支払いがない」ことであり、対象となるのは「出産以前の”42日間”と出産後の”56日間”(=98日)」となります。
また、正社員以外の雇用形態(アルバイト/パート/契約社員/派遣社員)などでも受け取ることが可能です。
※どの雇用形態であっても、1年以上継続して健康保険に加入していることが条件である※
そして、受け取れる金額についてですが、以下の計算式となります。
≪(支給開始日以前の)1年間の給与の平均額 ÷ 30日 × 2/3≫
例えばですが、平均給与が30万円の人の場合、「30万円÷30日×2/3=日額6,667円」となるのです。
上記にも記載した通り、この手当金の対象となるのは“産前・産後の計98日間”です。
ですので、「日額6,667円×98日=653,366円」が支給されることとなります。
当然ながら上記はあくまで一例です。
給与の額は人によって様々なので「自分はどのくらいの手当が支給されるのだろう?」と気になる方は、試しに計算してみてください。
育児休業給付金
【支給元:勤務先の企業やハローワークなど】
上記でご紹介した2つは「出産」に関するものでしたが、こちらは「育児」に関連する制度となります。
これは、「育児休業中の間、雇用保険から”月給の67%”を受け取ることができる」というものです。
ただし、育休の開始から6ヶ月経過後からは、“月給の50%×休んだ月数分”を受け取れるものとなります。
この給付金を受けるための条件は、以下の3つです。
◆育児休業後に”退職予定”がないこと
◆育児休業期間中、休業開始前の1ヵ月あたりの賃金の”8割以上”が支払われていないこと
また、この申請は“雇用者側が手続きをしなければいけない”ので、必ず事前に勤務先に詳細を問い合わせしておくようにしましょう。
児童手当
【支給元:住民票のある自治体】
これは、出産後に「認定請求書」をお住いの市区町村に提出することで、“中学校卒業まで支給される手当”のことを言います。
原則として、月額の支給額は以下のようになっています。
◆3歳以上小学校修了前:10,000円(第3子以降は15,000円)
◆中学生:10,000円
これまでの金額、そして育児にかかる費用と比較すると、支給額は少なめに感じる人もいらっしゃるかもしれません。
しかし、中学校卒業までの“15年”の間、毎月10,000円~15,000円が支給されることとなります。
塵も積もればなんとやら……。
家庭の助けとなることは間違いないので、必ず申請しておくことをオススメいたします。
医療費控除
【所得税の還付:税務署】
これはここまでにご紹介したものとは少し異なり、「税金」が絡んできます。
というのも、家族全員分の1年間の医療費(自己負担)が“10万円を超えた場合”(※)、その超過分を所得から引くことが可能となるのです。
(※)所得が200万円以下の場合は、所得金額の5%となる
確定申告を行うことで、払い過ぎている所得税が還付されることとなります。
まとめ:妊娠・出産・育児の際の「要注意点」
各種補助金を活用することで、自己負担額は大きく抑えることが可能です。
また、ここまでに記載した内容以外にも、お住まいの自治体によっては“他の助成金・手当”がもらえる可能性もありますので、お住いの自治体のホームページなどもチェックしてみてください。
最後に。
確かに活用できれば自己負担を大きく抑えることができる補助金ですが、注意すべき点が2つあります。
1つは、「きちんと申請をする」こと。
当たり前のことではありますが、ここまでにご紹介したものはどれも申請をしなければ受け取ることができないお金ばかりです。
産前・産後ともに、女性の精神的な不安や負担は相当なものであり、特に産後は赤ちゃんの面倒も見ることから非常に大変かつ多忙な時期です。
「〇〇の申請を忘れていた!」となれば、場合によっては制度を利用できずにお金が支給されなくなってしまう可能性も否定できません。
その時になって焦ることがないよう、事前に調査・情報収集を行い、家庭内でしっかりと話し合いを進めていくことをオススメします。
尚、この時、女性側だけに全てを任せるのではなく、男性(夫)側もしっかりとサポートをしてあげてください。
「男性版産休」で、現在は男性も育休を取得しやすくなっておりますので、家庭によっては(男性が)育児のための休みを取りつつ、家庭のサポートに回るのも良いかと思います。
そしてもう1つは、「制度のことを正確に理解する」ことです。
ここまでにご紹介した制度の中には、“対象となるための条件”を必要とするものが多くあります。
また、制度の内容や支給される金額も、自治体や人によって千差万別です。
そのため、
◆「いつまでに、どんな申請を行わなくてはいけないのか?」
◆「どのくらいのお金を受け取ることができるのか?」
こういった点を、正しく理解しておく必要があります。
正しく理解、正しく活用できれば、妊娠・出産にかかる費用は大きく抑えることが可能ですので、自身のため・子どものため・家庭のために、正しい知識を身に着けて数ある制度を役立ててみてください。