これまで、「社会福祉士」という仕事について、さまざまな解説記事を公開してきました。
≪社会福祉士とはなにか?≫
≪社会福祉士のなり方≫
≪介護福祉士や看護師から、社会福祉士になる方法≫
社会福祉士になるには、4年以上の勉強期間(学校に通う・養成施設に通う)を経て受験資格を得ることとなります。
そして受験資格を得ても、その合格率は「約30%」と合格難度も非常に高いです。
しかし、やっとの思いで社会福祉士国家試験に合格し、いざ社会福祉士と名乗って職に就いたとしても……その仕事内容は過酷であり、また人を選ぶ仕事でもあります。
「社会福祉士に求められるものとはなんなのか?」
「どういう人が社会福祉士に向いているのか?」
そして「今後、社会福祉士の需要はどうなっていくのか?」
今回は、このような点に焦点をあてて、詳しくご紹介していきたいと思います。
社会福祉士に”もっとも求められるもの”とはなにか?
まずは、社会福祉士として仕事をする際に“何が求められるのか?”についてお話していきたいと思います。
この仕事の相談対象は、以下のように非常に幅が広いです。
◆肉体的・精神的に障害を抱える人
◆さまざまな事情により、生活することが困難となった人(生活困窮者)
◆DVの被害者
◆虐待を受けている子ども など
こういった個々にさまざまな悩みを抱えている人の“相談”に乗り、それぞれに合った適切なサービスへの誘導および仲介役に回ることとなります。
そのため、この仕事を行う上でもっとも大切なことは「相手の気持ちに寄り添うこと」です。
上記でご紹介した相談対象は、境遇こそそれぞれで違うものの、対象者にはある一つの共通点があります。
それは「誰もがつらく厳しい状況に置かれ、福祉の手助けを”切実”に必要としていること」です。
そういった人たち一人ひとりに寄り添い、相手の話を真摯に受け止め、“同じ目線で物事を考え”、目の前の人たちを救っていくのです。
そもそも、相談に来る人のほぼ全ての人が「社会福祉士に相談しなければいけないほどに、(肉体的・精神的に)追い詰められている状態」です。
社会福祉士に相談する前に、身近に人に相談したり、自分なりにできることはやってきたはずです。
それでもどうにもならない状態に陥っているからこそ、社会福祉士に相談に来るのです。
だから、相手を見下したり、上から目線になってはいけません。
仮に自分では表に出していないつもりでも、心の片隅にその気持ちがあれば、そういう人は直観で気付きます。
また「自分ならこうする」と言ったアドバイスも、相手からすれば“考えの押し売り”になってしまうため、相談者にとって真に有効なものとはなり得ません。
「相手と同じ目線に立ち」、「目の前の人を救いたいと本気で思える人」が、この仕事にもっとも向いている人と言えるのではないでしょうか。
それは、「優しさ」はもちろんのこと、ある種の「正義感」や「使命感」にも通じるものがあると思います。
社会福祉士に「向いている人」とは?
次に、「社会福祉士の仕事に向いている人」について、ご紹介をしていきたいと思います。
「コミュニケーション能力」の高い人
「コミュニケーションの高い人」と聞くと、“話が上手な人”という印象を持たれることがありますが、真にコミュニケーション能力が高い人というのはそれだけではありません。
◆相槌を挟み、共感する
◆言葉だけでなく、相手の仕草にも注意する(表情・口調・癖など)
要するに「聞き上手な人」ということです。
これは、社会福祉士として仕事をする上で重要なスキルの一つです。
「目の前の相談者は、自身(社会福祉士)に何を求めているのか?」を、会話や仕草から感じ取り、適切なアドバイスやサービスへの誘導を行っていくのです。
「協調性」が高い人
最初の入り口は“対象者からの相談”となりますが、最終的には相談者との1対1のやりとりだけで完結ことはほぼありません。
相談者のニーズを伺い、その後に相談者にもっともふさわしい福祉サービスを紹介していくこととなります。
この時、相談者と各福祉サービスとの仲介役を担うこととなります。
実に多くの人たちと良好な関係を築いていく必要があるため、社会福祉士には「協調性の高さ」も求められることとなります。
これも、一種のコミュニケーション能力でもあります。
「忍耐力」のある人
相談者の中には、うつ病を患っている人や、辛い状況にあるがゆえに極度に感情的になっている人もいます。
◆こちらの話に耳を貸さず、一方的に自分の良いたいことだけをしゃべり続ける
◆こちらの質問に全く応えてくれない(反応が薄い)
◆そもそも、会話にすらならないこともある
もちろん社会福祉士と名乗って仕事をしている以上、このような人と接することは日常茶飯事です。
「会話が成り立たないから……」と社会福祉士側が感情的になるようなことは絶対にあってはいけません。
どんな時でも、広い心をもって対象者と向き合っていく必要があるため、相応の忍耐力を求められることとなります。
対象者の「プライバシー」に配慮できる人
この仕事は、業務の性質上、相談者の「プライバシー」のかなり奥深いところにまで関与することが少なくありません。
時には、相談者にとって“知られたくないこと”を知ることもあり得ます。
これに対して、「どれだけ対象者のプライバシーに配慮できるか?」が重要となってくるのです。
当たり前のことですが、第三者に情報を漏らすことはもってのほかです。
重要なのは、「当人や家族への気配り」となります。
当人や家族と接する時には、特に言葉の選択や言い回しには注意しておく必要があります。
こういった点にも気を配れる人が、社会福祉士に向いている人・長く社会福祉士として働いていける人となるのではないかと思います。
すぐにできなくても、しっかりと経験を積むことが重要である
ここで大切なのは、「コミュニケーション能力・協調性・忍耐力が高くないと社会福祉士になれないのか?」という点です。
もちろん、ないよりあった方が良いのは事実ではありますが、職に就く前から絶対になくてはならないスキルという訳でもありません。
なぜなら対象者の状況(状態)はさまざまであり、“経験”によってスキルは身についていくものだからです。
コミュニケーション能力なんて、一朝一夕で身に着けられるものではありません。
だからこそ、この仕事にもっとも大切なのは「どれだけ相手の気持ちに寄り添えるか?」なのです。
つたなくても不器用でも、“相手に寄り添う気持ちが確かにあれば”、対象者はその気持ちを感じ取ってくれます。
(極度に何かに困っている人ほど、こういう部分には敏感になるものです)
スキルは職に就いた後からでも十分身に着けていくことができるので、その点はご安心いただければと思います。
社会福祉士に「向いていない人」とは?
次は、「社会福祉士に向いていない人」についてお話をしていきます。
上記でご紹介した逆ではあるのですが、少し違う視点でご紹介します。
「軽薄」や「淡泊」な印象を受ける人
◆軽薄=態度に重みや慎重さがなく、軽々しいさま
◆淡泊=物事にこだわらず、さっぱりした性格(人柄)であること
「軽薄」「淡泊」の2つの意味は上記のようなものです。
簡単な話、あなたが相談する立場に立った時、「相槌を打ちつつ・表情豊かに、こちらの話に共感してくれる人」と「不愛想・無表情で、本当に話を聞いているか疑問を感じる人」のどちらに自分の本心をさらけだしたいと思いますか?ということです。
多くの人は、前者と答えるでしょう。
これは、社会福祉士として仕事をする上で非常に重要です。
目の前の社会福祉士に対して「誠実さが感じられない」であったり、「本当に私の話を聞いてくれているの?」と感じてしまったり……。
そういったマイナスな感情が利用者側に根付いてしまうと、相談者の信用は一気にガタ落ちしてしまいます。
「態度」もそうですが、「言葉」も重要です。
プライバシーの配慮でもご紹介した通り、もし言葉選びが適当であったり・口が軽い人は、“自分は社会福祉士には向いていない”と考えた方がいいかと思います。
「大げさな……」と思う人もいるかもしれませんが、社会福祉士に相談に来る人というのは、それくらい何かに困っている人が大勢いるのです。
「完璧主義者」である人
正確には、“相手に完璧を求める人”と言っても良いかもしれません。
社会福祉士のもとに訪れる相談者は、ニーズも事情も違えば、性別・性格・考え方も千差万別です。
そのため、仮に社会福祉士自身が的確なアドバイスを行い、「相談者のためになる!」と確信して紹介した福祉サービスであっても、必ずしも対象者にとってプラスに働くものばかりでもないのです。
「相手のためになる」と思って発した言葉でも、逆に相手の反感を買うことだってあります。
人と人とのコミュニケーションには、「絶対の正解」というものはありません。
こういう時に、広い心をもって人と接することができれば問題ありませんが、完璧主義者の人は“相手に正解を求めてしまう”ことが多いため、相手とのやり取りに失敗することもあるのです。
大切なのは「自覚」があるかどうか
ここで一つ補足しておきたいのが、「軽薄・淡泊・完璧主義者な人は、社会福祉士になれないのか?」という点です。
これについて言えることは、本人に“自覚”があるかどうか?が重要かと思います。
身近な人にいませんか?
本人の自覚なく、無神経な言葉を発してくる人が……。
そして、“言っても直らない人”もいますよね。
自覚があり、それを直そうと考えている人であれば問題ないと思います。
でも、自覚がない人であれば、社会福祉士には向いていないと思います。
“スキル”というのは、“経験”でより良くしていくことができます。
しかし“癖”というのは、これまでの自分自身の経験から来るものであり、無自覚である人ほど直すことが困難となってしまうのです……。
社会福祉士の「現状」は?今後の需要はどうなっていく?
この記事の最後に、社会福祉士の「現状」と「将来性」について、詳しくご紹介していきたいと思います。
結論を先に行ってしまうと、「社会福祉士の数(資格所有者)は年々増えているが、それと同じく需要も増え続けている」です。
「現状」について
以下は、以前に公開した≪社会福祉士のなり方≫にてご紹介した、近年の「受験者数」「合格者数」「合格率」です。
ご覧の通り、資格保有者は年間1万人強のペースで増え続けています。
この供給スピードに対して、需要はというと……こちらも年々伸び続けているのが現状です。
その理由は、以下のようなものが挙げられます。
◆核家族化の家庭が増え、高齢者の一人暮らしが増加していること
◆離婚率が増加していること
◆新型コロナウイルスの影響で生活困窮者が増加したこと
◆いじめ・児童虐待・DVなども増加していること など
いずれも、社会問題としてニュースやネット上でも話題に取り上げられているものばかりであり、他にも人によってさまざまな悩みを抱えていることでしょう。
このことから、(言い方は少し不謹慎に聞こえるかもしれませんが)供給スピードと同じくらいの勢いで、需要も増え続けている状態となっているのが現状なのです。
国家資格を所持していれば、仕事先に困ることはない
社会福祉士の最大の特徴は、ありとあらゆる福祉サービスに対応できるという点です。
そのため、「高齢者施設・障害者支援施設(入所/通所)・児童支援施設・行政機関・司法施設・学校」など、勤務先は数多く存在します。
国家資格を所有していれば、社会福祉士としての確かな知識を有している証明となるため、例えば実務経験がない人であっても、就職(転職)の際には非常に優位にことを進めることが可能となります。
また、働きながら関連する資格を取得すれば、より待遇面でも有利になりますし、昇進などの多様なキャリアアップも実現することができるようになるでしょう。
今後の「将来性」について
ここまでにご紹介してきた通りですが、社会福祉士の需要は今後も増加し続けます。
どの職業でも需要は上がり続けますが、その中でも特に“介護業界”はより必要とされる機会が増えていくと考えられています。
その理由は、以下の2つがあります。
◆介護業界は、常に”人手不足”が問題視されているから
そのため、各種高齢者施設で「生活相談員」として相談業務を行いつつ、「介助」も行っていく社会福祉士の数は増加していくものと思われます。
(この時に、介護に関する資格も所持していると、より業務がやりやすくなる)
もちろん、介護業界以外でも需要は伸び続けます。
現代社会は、多くの仕事が“機械による自動化が進んでいる”状態です。
しかし、“相談・支援・仲介”が主な業務となる社会福祉士の仕事は、機械に取って代わられることはありません。
機械に、悩みを抱えた人の相談に乗り、その人に合った適切なサービスを案内することは(現時点では)不可能です。
もっと未来になればどうなるかは分かりませんが、直近でこの仕事が機械に取って代わられることは絶対にありません。
そのため、将来的にも安定した仕事であると断言できるでしょう。
まとめ
「社会福祉士の仕事が増える=日常生活に支障をきたしている人が増加している」ということであるため、社会としては決して喜ばしい状況ではありません。
ただ、日本が抱えている問題はそれほどに深刻であり、社会福祉士に助けを求めなければ解決できないことも非常に多いのが現状なのです。
そして、今後も福祉の手助けは必要不可欠なものとなります。
そのため、今後も需要は増加し続け、社会福祉士の仕事がなくなるということは絶対にあり得ません。
ただ、この仕事は“誰にでもできる仕事はではない”ということもしっかり把握しておいてください。
受験資格を得るだけでも長い期間を必要とし、難易度の高い国家試験に合格する必要があり、職に就いた後もさまざまな悩みや問題と向き合っていかなくてはなりません。
人によって、合う・合わないが明確に分かれますので「社会福祉士になりたい!」と思ったとしても、焦らずにまずはしっかりと情報収集を行ってください。
その上で、「本当に社会福祉士になりたいのか?」を明確にし、行動に移してみてください。