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「嚥下(えんげ)」ってなに?低下する原因や予防法について解説します!

この記事は約7分で読めます。

「嚥下(えんげ)」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

これは、「物を飲み込む動作」のことを指しています。

もし飲食をする際に少しでも違和感があれば、それは「嚥下障害」の可能性があるかもしれません。

今回は、この「嚥下」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。

「嚥下(えんげ)」ってなに?

概要


これは、「食べ物を飲み込み、口から胃へと運ぶ一連の動作」のことを指しています。

この過程に関しては、以下の5つに大別されることとなります。

①先行期:最初に目や鼻などで目の前の物が”食べ物”であることを認識し、口に運ぶこと
②準備期:口の中で食べ物を噛み、かたまり(食塊)にすること
③口腔期:「食塊」を、舌を使って喉の奥に運びこむこと
④咽頭期:「嚥下反射」という機能が働いて食塊が咽頭を通過し、食道に入ること
⑤食道期:食道から胃へと運ばれること

この一連の流れをスムーズに行うためには、多くの器官の筋肉や神経などが連携して働く必要があるのです。

ちなみに、上記に記載の「嚥下反射」というのは、食べ物を食道に送り込む重要な機能となります。

これにより喉の喉頭蓋が下がり、気管への入り口に蓋をして気管に食塊が入らないようにしているのです。

人は、食べ物や飲み物を飲み込むだけでも、さまざまな器官や神経が連携して働くこととなります。

つまり、“嚥下の流れの機能のいずれかが低下する=物を飲み込みにくくなる”ということに繋がります。

その状態のままにしておくと、いずれ口から食事などが摂れなくなってしまい、低栄養素状態になったり、誤嚥(ごえん)が起こりやすくなったりと……さまざまなリスクが発生する可能性が高まるのです。

機能が低下する「原因」とは?

まず、嚥下機能の低下の原因は、そのほとんどが「加齢」によるものとされています。

年齢を重ねれば、誰しも身体機能が衰えていきます。

◆筋肉・神経・認知の働きが低下する
◆歯の不具合も多くなる

これらが原因で、総合的に食べる力が弱まってしまうのです。

尚、嚥下機能低下による主な症状というのは、以下のようなものが挙げられます。

◆飲み込みにくい
◆食事中にむせたり、咳き込んだりする
◆夜間に咳き込む
◆口腔内の舌苔付着がある
◆よく痰がからんだり、食後に痰がからむ感じがする
◆食事中に食べ物がこぼれる
◆食べ物がのどに詰まって逆流してくる
◆食べると疲れて苦しくなる
◆発熱を繰り返す
◆体重の減少
◆脱水症状

これら症状の多くは、特に「食事中」に現れます。

もし当てはまる症状がいくつかあれば、早めに医療機関で検査をしてもらうようにしましょう。

ちなみに、「脱水症状」に関しては、以前に別の記事で詳しくご紹介しておきますので、以下のリンクを参照ください。

「誤嚥(ごえん)」ってなに?

「誤嚥(ごえん)」というのは、上記でご紹介した「”嚥下反射”の機能が低下し、飲食物が”食道”ではなく”気道”に入り込む状態」のことをいいます。

これを起こすと、気道に食べ物や唾液などが入り込むと同時に、口や喉の“細菌”も一緒に肺に入る可能性があるのです。

つまり、「肺炎」のリスクが高まるということです。

誤嚥を原因とする肺炎のことを「誤嚥性肺炎」といいます。

日ごろからの口腔ケアで、誤嚥性肺炎のリスクを抑えることを意識しておきましょう。

「嚥下障害」ってなに?

これは、上項でご紹介した嚥下の5段階過程に障害があることをいいます。

この障害は、「認知機能」「口腔、咽頭、食道各器官の機能」の低下によって起こり得るのです。

この障害が発症すれば、必要な栄養素を摂ることを阻害し、食事の楽しみが奪われることとなります。

この嚥下障害起こる原因は、以下の4つが挙げられます。

1.器質的原因:口腔・咽頭や食道の器官における炎症や腫瘍、外傷などによるもの
2.機能的原因:嚥下にかかわる器官を動かすための筋力の低下によるもの
3.心理的原因:うつ病、ストレスなどによる精神的・心因的疾患によるもの
4.医原性  :医療行為が原因で新たに生じる疾患のこと

また、嚥下障害の人は、口腔ケアを怠ると、坑内に残留した食べ物で最近が繁殖してしまい、それが原因で「誤嚥性肺炎」を引き起こしやすくもなります。

そのため、日ごろから口腔ケアを意識しておくことをオススメいたします。

嚥下を予防する”3つのポイント”について


噛む力や飲み込む力は、人によってさまざまです。

そのため、一人ひとりの状態に合わせて、足りない機能を補うことが必要となります。

そして、嚥下障害を防ぐために、常日頃からできる対策というものも存在します。

それが、以下の3つです。

1.「飲み込みやすい食事に変更する」
2.「食事の態勢に気をつける」
3.「嚥下トレーニングを行う」

それぞれ、順に補足を加えていきましょう。

対策1.「飲み込みやすい食事に変更する」

「飲み込みやすい食事=介護食や嚥下食に変更する」ということです。

◆「介護食」:やわらかく噛みやすい食事のこと
◆「嚥下食」:まとまりがあって、口や喉でバラバラならないよう配慮されている食事のこと

これらを食事に取り入れることで、嚥下対策となり得ます。

嚥下食として適しているのは、「ゼリー」「プリン」「ムース」「ヨーグルト」「卵豆腐」「あんかけ」などが挙げられます。

逆に適していないのは、「ナッツ」「肉」「パン」「餅」「団子」「ごぼう」「柑橘類」などが挙げられるでしょうか。

ただし、「ゼリー」に関しては、“離水(固形分と水分が分離すること)”が多いと、誤嚥の原因となるため注意しておきましょう。
(離水している場合は、一度水気を切るのがオススメ)

“飲み込みやすい食事や栄養価が高い食事=高齢者向けに調整された食事”もスーパーなどで市販されていますので、それらを上手に活用していくといいでしょう。

対策2.「食事の態勢に気をつける」

姿勢に注意して(正しい姿勢で)食事をとることも大切です。

自力で食べられる人は、できれば座って食事をとるようにしましょう。

このとき、高すぎないテーブルで、かかとをしっかり床につけられるぐらいの高さの椅子に座ると、姿勢が安定しやすくなります。

また、むせやすい人はやや前かがみ+顎を引き気味にすると良いかと思います。

加えて、食道の通貨障害(食べ物が胸につかえる、飲み込んだものが逆流する)がある人は、逆に上体を起こしたまっすぐな姿勢で食べるようにしましょう。

食後も寝そべらず、状態を起こしておくことをオススメします。

そして、中には「椅子に座ることができない」という人もいらっしゃるかと思います。

ベッドで食事をする場合は、背もたれを45度から60度の角度に起こして、顎を引いた状態すると、誤嚥が起こりくくなります。
(食事の介助が必要な方は、30度くらいの傾斜が良いかと思います)

対策3.「嚥下トレーニングを行う」

“食べるための器官”と、“発声に使われる器官”は重なります。

そのため、発声練習も嚥下の機能の良いトレーニングになり得るのです。

介護施設などでは、「パタカラ体操」というものが行われています。

やり方は簡単で、以下の通りとなります。

①「パ、パ、パ、タ、タ、タ、カ、カ、カ、ラ、ラ、ラ」を5回繰り返す
②その後、「パタカラ、パタカラ、パタカラ」と5回繰り返す

これを、朝・昼・夕の食事前に行うと、食べる前のよい準備運動となるのです。

「口腔ケア」の重要性について

結論から言うと、「日ごろからの口腔ケアは非常に重要」といえます。

なぜなら、嚥下障害に陥ると、誤嚥による肺炎や窒息事故のリスクが高まるからです。

特に、要介護状態になった高齢者にとっては、「自分の口で最後まで食事をとる」ことは非常に大切なことです。

重症化を防ぐこともできますし、そもそもより豊かな療養生活を送ることができるからです。

「食事をとる」というのは、人によっては“当たり前のこと”と感じるかもしれません。

しかし、歳を重ねれば重ねるほど身体は不自由になっていき、その“当たり前のこと”ができなくなっていくのです。

そのため、介護予防事業の一つとして、各自治体ではさまざまな取り組みを行っています。
(高齢者の口腔と摂食嚥下機能の維持向上など)

もちろんこれは、「介護予防」の点からみてもとても大切なことです。

介護施設などでもさまざまな実施例がありますので、気になる方はその内容を確認してみてください。

まとめ

以上が、「嚥下」についてのご紹介となります。

飲み込む力が低下すると、食事がうまく摂れなくなって、健康を保つことが難しくなる可能性があります。

それに、「食事をする」という楽しみも失われて行ってしまうのです。

そのため、食事内容に配慮したり、正しい食事の姿勢を保ったり、嚥下トレーニングを行ったりなどして、嚥下機能の低下を補う工夫が必要となってきます。

「今は大丈夫」と思っていても、人は年齢を重ねるごとにどんどん身体が言うことを聞かなくなっていきます。

いつまでも「食べる楽しみ」を大切にするためにも、日々の生活を見直し、可能な限り予防をしていく工夫を取り入れてみてください。

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