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「せん妄」ってどうやったら治るの?治せるの?治療・予防法について解説します!

この記事は約10分で読めます。

「せん妄」というのは、特に高齢者によくみられる、一時的な“意識精神障害”のことです。

◆自分の居場所や時間が急に分からなくなる
◆急に会話の辻褄が合わなくなる
◆話しかけても反応しなくなる
◆無気力になる

などの症状を引き起こすことになります。

このことから、「認知症」「うつ病」と間違われることがあるのですが、適切な対応を怠ると病状悪化や病状の長期化につながる恐れがあり、大変危険です。

では、適切な治療法とは、どういうものが挙げられるのでしょうか?

また、常日頃から、どういう点に気を付けて予防を行っていけばいいのでしょうか?

今回は、こういった点について、詳しくご紹介していきたいと思います。

尚、以前に「症状や原因、認知症との違い」についての記事も公開しておりますので、気になる方は以下のリンクを参考にしていただければ幸いです。

では、解説にまいりましょう。

適切な「治療法」について

治療法は2種類に大別される


この病気は「認知症」と違い、数日間~数週間とある程度時間が経てば収まることもあります。

とはいえ、決して「自然に治るまで放置をしておいて良い」というわけでもありません。

治療法は、「薬物治療」「非薬物治療」の2通りに大別されるのですが、基本的にどちらも“入院治療”となります。

「薬物治療」は、その名の通り“薬物を使用して治療を行う”ことを指しています。

冒頭でもお伝えした通り、この病気は「意識精神障害」の一種であるため、まずはじめに「抗精神病薬」が投与選択されることとなります。

少量ずつの投与から始まり、症状が改善されると、薬物の投与は中止となります。

対して、薬物を使用しない「非薬物治療」の場合は、「身体の負担を減らす」「環境を調整する」といった方法で改善を図ります。

家族にできることはなにか?

治療を行う際、家族にできることはなにがあるでしょうか?

もっとも大切なことは、「慌てない」ことです。

周囲が慌ててしまうと、病気を患っている本人はさらに混乱してしまいます。

そうすると、余計に症状が進行してしまう可能性があるのです。

言い方を変えると、家族や周囲の人にできることは「安心させること」といえるかもしれません。

言葉以外、例えば“顔の表情”“態度”などでも、人は何かしらのメッセージを感じ取ることができます。

だからこそ、家族や周囲の人の“安心感”が伝われば、症状が発症する回数も減っていく可能性があるのです。

原因が何かを把握し、治療に努めよう

≪前回の記事≫でもご紹介した通り、原因は以下の3つの因子が主となります。

【準備因子】
◆加齢
◆脳血管障害
◆認知症 など

【誘発因子】
◆身体的ストレス
◆環境の変化 など

【直接因子】
◆手術
◆薬 など

つまり、上記因子の“原因となる症状を治療すること”が、治療につながると言えるのです。

そのため、ご家族や周囲の方は、まず「原因が何なのか?」を一緒に見つけてみてください。

そして、本人がその原因を取り除けるように支援してあげてください。

「見当識」を保つ工夫をする

せん妄は、「見当識障害」から始まる場合が多く、徐々に注意力や思考力が低下してさまざまな症状を引き起こすこととなります。

「見当識障害」というのは、“時間や場所が急に分からなくなる障害のこと”を指しています。

そのため、「見当識を保つ」ということも、重要な治療・予防法となります。

例えば、以下のような方法が挙げられます。

◆目に見える所にカレンダーや家族の写真を置く
◆部屋を明るくして物や人の場所を把握しやすいようにする
◆眼鏡や補聴器も手に届く所に準備しておく
など

自身で対策を講じることはもちろん、家族や周囲の方が環境を整えるのも効果的といえるでしょう。

「興奮」を管理することも大切である

人は、誰しも大なり小なりのストレスを抱えて生きています。

このストレスによって“精神的な興奮”を生じさせ、症状を引き起こす可能性があるのです。

そのため、できるだけストレスを軽減し、興奮の管理ができるようになることも、治療において重要な点といえます。

◆昼間に散歩などの適度な運動をする
◆夜間はしっかりと眠る

など、生活リズムを整える行動も大切となります。

ちなみに、“口の渇き=脱水”も、せん妄の引き金となる可能性があります。

なぜ「脱水」によって症状が引き起こされるのか?

原因について


なぜ、脱水がせん妄を引き起こす原因となり得るのか?

その理由は、「体内の電解質濃度が異常になる」からです。

「電解質濃度」というのは、“体内の水分と塩分のバランス”のことです。

これが常に最適な濃度に保たれることで神経伝達をサポートするのですが、言い方を変えると「濃度が異常になれば、全身の神経伝達がスムーズに進まなくなる」ということにつながるのです。

要するに、「電解質のバランスが崩れると、脱水やせん妄が起こりやすくなる」ということです。

これは、電解質の濃度が濃くても薄くても起こり得る可能性があります。

すぐに対策を取ること……!

脱水によるせん妄=「脱水症状」と「せん妄」が同時に発症している状態となり、大変危険です。

意識障害や問題行動によって適切な水分補給が難しくなる可能性がありますし、理解力や理性が失われる可能性もあるため、周囲の人が水分補給を促しても本人が拒否する場合もあるのです。

しかし放っておけば、当然症状は悪化しますし、最悪の場合は命の危険すら起こり得る可能性があります。

悪循環に陥る可能性が非常に高くなるため、まずは脱水そのものを予防・改善することを意識した方が良いかと思います。

予防・対処法について

脱水症状を予防・改善する方法は、「適度に水分を補給すること」です。

ただし、一つだけ注意点があります。

それは、「水分」だけでなく、「塩分」も補給しなければいけない場合があるということです。

脱水症状にもいろいろな種類があります。

例えば、「水欠乏性脱水」をケアする場合は、水分のみの補給でも問題はありません。

しかし、「低張性脱水」の場合は、水分だけを摂ると逆に症状が悪化してしまう(体内の塩分濃度が下がっている)ため、水分と塩分の両方を補給しなければいけないのです。

高齢者の方が水分補給をする場合は、「経口補水液」で補給するのがオススメです。

これだと、水分と塩分を一度に接種することが可能となります。

ちなみに、スポーツドリンクも水分と塩分を同時に補給できますが、「糖分」も多いため、高齢者や糖尿病の方は注意が必要となります。

なんにせよ、高齢者の脱水症状は大変危険であり、特に重症化している場合はすぐに病院に受診しにいくようにしてください。

尚、「脱水症状」に関しては、過去に別の記事で詳細をご紹介しておりますので、以下にリンクを貼っておきたいと思います。

リスクが高いのは、どの年代の人?

高齢者


高齢者は、発症しやすい……リスクが非常に高いとされています。

上項で記載した通り、原因となる因子は「準備」「直接」「促進」の3つがありますが、そのどれもがせん妄が発症する条件を満たしている可能性が高いのです。

また、2010年に行われた複数の研究を統合・解析した結果、以下のようなリスクが明らかになっています。

◆死亡リスク   :1.95倍
◆施設入所リスク :2.4倍
◆認知症発症リスク:12.52倍

さらに、症状が10日間以上見られた方の場合、2年後に生存している確率は“10%台”だともいわれています。

つまり、「80%~90%の人が、2年後に死亡する可能性がある」ということなのです。

このことから、命に関わるリスクが高い疾患であることがご理解いただけるかと思います。

子ども

せん妄を発症しやすいのは、高齢者が多いとされています。

しかし、“高齢者が多い”というだけであり、成人や子どもも発症する可能性は0ではありません。

実際、小児科に入院している約10%の患者に、せん妄が出現するという報告があるのです。

高齢者だけでなく、成人や子どもにも発症する可能性はあります。

加えて、子どもの場合はさまざまな症状・タイプがあることから、見逃さないように注意が必要となります。

尚、子どもに発症する際の特徴としては、以下が挙げられます。

◆認知の障害や行動上の障害よりも、気分の不安定・イライラ・妄想や幻聴などの方が現れやすい
◆発達に伴って、現れる症状が異なる場合がある
◆急性の発症が多い
◆非活動性(低活動性)のせん妄の場合も多い など

特に子どもは、肉体的にも精神的にもまだ未成熟です。

孤独や不安なども感じやすいですし、大人に比べて子どもの方が脆弱性が高いです。

この点にも、注意をしておいた方がいいかと思います。

“疑い”がある場合は、どうすればいいのか?

いくら予防に力を入れていたとしても、外的要因もあることから発症の可能性は0にはなりません。

では、もし仮に「せん妄なのでは……?」といった疑いがある場合は、どのように行動するのが良いでしょうか?

方法は、以下の3つが挙げられます。

1.生活環境に変化を加えないこと
2.薬の服用を控えること
3.病院にいくこと

順に補足を加えていきましょう。

1.生活環境に変化を加えないこと

これは「誘発因子」が影響してきます。

せん妄が発症すると、以下のような症状が発症する可能性があります。

◆異常な行動を取ってしまう
◆幻覚や妄想が出現する
◆話の辻褄が合わなくなる
◆感情が不安定になる

実際、生活環境が変わったことで、“他の人には見えない何か”が見えるようになった人もいるそうです。
(これが、幻覚や妄想が影響している)

上項でもお伝えしましたが、大切なことは「安心させてあげること」であり、「否定しないこと」です。

生活環境が変わると、人は大なり小なり不安になってしまいます。

自分の意見が(仮に間違っていたとしても)否定されると、いい気持ちにはならないはずです。

そのため、極力“環境を変えない”ことを意識してみてください。

そして、辻褄が合わなかったとしても、本人の気を逆撫でするようなことはしないであげてください。

ある意味、「そっとしておく」のが一番いいかもしれません。

2.薬の服用を控えること

これは、「直接因子」が影響してきます。

手術はもちろん、処方された薬などでも、発症を引き起こす可能性があるのです。

このことから、「薬の服用など、中止できるものであるなら中止した方が良い場合もある」といえます。

とはいえ、どうしても中止できない薬も当然存在するため、この点については医師としっかり相談して決めてみてください。

3.病院にいくこと

「せん妄」は、「認知症」「うつ病」と症状が似ていることがあり、混同される可能性がある病気です。

しかし、これらは似て非なるものであり、同時に発症する可能性もあり得ます。

特に高齢者にとっては、「せん妄」と「認知症」が同時に発症してしまう可能性もあり、より症状が悪化してしまう恐れもあるのです。

このことから、可能性が少しでもある場合は、“認知症の進行”と自己判断で決めつけずに、精神科医師の診断を仰ぐことが非常に重要となります。

まとめ

以上が、「せん妄の治療法・予防法」についてのご紹介となります。

これは老若男女誰にでも起こり得る可能性がある病気ではありますが、特に高齢者は発症割合が高く、「認知症」など他の病気とも併発しやすいため注意が必要です。

高齢者の場合は、睡眠不足・脱水・便秘なども症状を引き起こすキッカケとなり得ます。

そのため、特に以下の点に注意して、予防を心がけてみてください。

◆生活リズムを整える(昼間活動して、夜に眠る)
◆適切な栄養を摂取する(バランスの良い食生活を心がける)
◆水分・塩分補給をしっかりする

さらに、ストレスの軽減やコミュニケーションの充実を図ることも予防に効果的といえます。

せん妄は、確かに治療法も存在します。

しかし、薬物療法を始めるときや止めるときも発症するリスクがあります。

入院することになれば、生活環境も変わりますので、本人のストレスにもなってしまうでしょう。

このことから、(どんな病気にも言えることですが)「病気にかからないこと」が一番良いのです。

健康的な毎日を過ごせるように、まずは健康的な体作りから始めてみてください。

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