人の身体にある、「免疫」という機能。
病原菌などから身体を守り、健康を維持するためには必須の防護システムです。
免疫機能が正しく機能していれば、健康で若々しい生活を送ることができるようになります。
この「免疫力」は、どうすればアップできるのでしょうか。
そして、免疫力が低下すると、身体にどのような影響を与えるのでしょうか。
今回は、「免疫力」について、詳しくご紹介をしていきたいと思います。
「免疫力」とはなにか?
概要
人々が生活する身の回りでは、細菌やウイルス、埃や汚染物質など、身体に有害なものがたくさん存在しています。
そのため、常に病原体が身体の中に侵入していきます。
この、病原体が身体の中に侵入して増殖した状態が「感染」です。
しかし、絶えず有害物質にさらされていても、そう簡単に病に侵さされることはありません。
その理由は、「免疫」という防護システムがあるからです。
例えば、おたふく風邪や麻疹(はしか)など、一度感染した病気にはかかりにくくなります。
それは、「免疫力」が侵入した病原体を覚えて、効率よく撃退する方法を持っているからです。
体内には、「白血球」「マクロファージ」「樹状細胞」「NK細胞」などの免疫細胞が存在しており、それぞれが異なった役割を担うことで、複雑な免疫システムを維持しています。
「抵抗力」とは何が違うの?
似たような意味合いとして、「抵抗力」というものも存在します。
こちらも外敵から身を守る力のことをいい、細菌・ウイルス・真菌といった外部からやってくる敵に対して抵抗する免疫細胞たちのことを指しています。
この2つの違いは、以下の通りです。
◆「免疫力」=「獲得免疫」
「自然免疫」とは、いわば“持って生まれた身体の強さ”を意味します。
例えば、人(体質)によっては、風邪やインフルエンザにかかりにくい人がいます。
このような人は、元々身体に備わっている「自然免疫」の力=「抵抗力」が強いのです。
対して「獲得免疫」とは、“経験によって作られる身体の強さ”を意味しています。
一度かかった病気にはかかりにくくなりますし、子どもから大人に成長するにつれて一般的には身体が丈夫になり体調を崩しにくくなります。
これは、もともとの「自然免疫」に加えて、さまざまなウイルスや細菌を体験することによって“免疫”ができるからなのです。
健康な身体を維持するためには、どちらも必要不可欠な存在なのです。
免疫力が上がる・下がることで起こる変化とは?
まず、免疫力が上がることで起こる変化には、以下が挙げられます。
◆肌が荒れるのを防げる
◆アレルギー症状(花粉症・アトピーなど)を抑えられる
◆疲れにくくなる
その人の体質にもよりますので、免疫力を上げたからといって、すべての病気を100%予防することはできません。
しかし、病気になりにくい身体を作ることはできます。
逆に、免疫力が下がると、以下のように健康状態が総じて悪くなる恐れがあります。
(美容面にも悪影響を及ぼす可能性がある)
◆がんの発症率が高まる
◆肌が荒れる
◆新陳代謝の低下
◆ターンオーバーの乱れ
また、免疫力が下がると、「季節」「天気」「新しい場所」「珍しい食べ物」など、環境の変化にも反応しやすくなります。
例えば、「新しい場所に行くと鼻がかゆくなる」「珍しいものを食べると蕁麻疹がでる」などです。
これらのことから、健康的な毎日を過ごすためには、免疫力をアップさせる必要があるのです。
免疫力が下がる原因とは?
免疫力が下がる原因は、主に以下の3つに大別されます。
2.ストレス
3.加齢
順に解説を加えていきます。
原因1.生活習慣の乱れ
免疫力低下の最大の原因は、「生活習慣の乱れ」です。
一言で生活習慣の乱れといっても、その原因はさまざまです。
例えば、
◆肥満
◆過度なダイエット
◆喫煙
◆過度のアルコール摂取
◆睡眠不足
◆運動不足
など。
すべてとは言わなくても、いくつかの要素が重なっている人はいるはずです。
生活習慣の乱れは、自身の力で改善できる点がほとんどです。
免疫力の低下だけでなく、総じて不健康な身体となってしまいますので、気になる方は改善に向けて動き出してみて下さい。
原因2.ストレス
現代人は、常にストレスに晒されながら生活しています。
過度なストレスをそのままにしていると、細胞のパフォーマンスが低下し、結果的に免疫力にも影響を与えてしまいます。
「中々風邪が治らない」「普段は感染力が弱い病原菌に感染してしまう」といった状態に陥ってしまいます。
また、脳の感じているストレスは、腸内相関で“腸”にも影響を与えてしまいます。
腸には数多くの免疫細胞が集中しており、「免疫機能の中枢」と呼ばれています。
腸内環境が悪いと、腸内に宿便がたまったり、老廃物や毒素といった“身体にとっていらないもの”がたまっていきます。
その結果、食べたものが腐敗したり、お腹に有害なガスが充満してしてしまいます。
それが胃腸炎や下痢といった“腸の不調”につながる恐れがあるのです。
ストレスが溜まれば溜まるほど体内は悪循環に陥ってしまうため、「過度なストレス環境から脱する」……もしくは「ストレスを発散する方法を見つける」ことが重要となります。
原因3.加齢
加齢によって体全体の機能が衰えると、免疫機能を作り出す働きや、皮膚などのバリア機能が低下してしまいます。
免疫系は、さまざまな細胞によって成り立っています。
特に、その中でも主要な働きをする「T細胞」は“胸腺”という組織から作られますが、胸腺は20歳をピークに急激に萎縮してしまうのです。
結果、T細胞が作り出される量が減り、最終的にはすでに体内にある免疫だけで体を守っていく状態になります。
他にも、先天的な病気や免疫抑制剤などの治療薬の影響によって、免疫がうまく働かなくなることもあります。
とはいえ、加齢や病気の影響は、自分の力では対処することができません。
上記でご紹介した「生活習慣の乱れ」や「ストレス」など、改善できそうな部分を意識して変えていくようにして下さい。
免疫力を高めるにはどうすればいい?
免疫力を上げる最大の方法は、「規則正しい生活習慣を心掛ける」ことです。
方法としては、以下が挙げられます。
2.栄養バランスの良い食事を摂り、腸内環境を整える
3.適度な運動を行う(習慣化する)
4.身体を温める
5.腹式呼吸を意識する
6.笑う
こちらも、順に解説を加えていきます。
ポイント1.生活習慣を改善する
改善ポイントとしては、「ストレスを溜めない」ことと、「良質な睡眠をとる」ことです。
免疫力は、ストレスによって低下します。
このストレスと密接に関わっているのが自律神経なのですが、これは「交感神経」と「副交感神経」の2つから成り立っているのです。
「交感神経」が優位であり、血管の収縮を招き、酸素と栄養がスムーズに供給できなくなる
【心身がリラックスしているとき】
「副交感神経」が優位であり、免疫システムが正しく機能する
免疫力はもちろんですが、過度なストレスは心身に悪影響を及ぼしてしまいます。
「ストレスを完全になくす」のは現代社会では土台無理な話ではありますが、「過度なストレス環境から脱する」もしくは「ストレスを発散する」であれば改善できる可能性はあります。
そして、“身体をリラックスさせる=副交感神経を優位にし、正常な免疫システムを維持する”ためには、「良質な睡眠」も欠かすことはできません。
「どれだけ寝たか?」よりも「良質な睡眠時間をどれだけ確保できたか?」の方が大事です。
また、睡眠だけでなく“休養”を取り、心身を休ませることも重要。
日々の仕事や家庭などで忙しくしている人は大勢いますし、ストレスが溜まることも理解できます。
だからこそ、日々の生活習慣を見直して、少しでも自分がリフレッシュできる環境を見つけていく必要があるのです。
環境を変えることが難しい人・勇気がいる人もいらっしゃるかとは思いますが、できる限り自分の身体を最優先し、可能な範囲ででも環境を変えられるよう工夫してみて下さい。
ポイント2.栄養バランスの良い食事を摂り、腸内環境を整える
上項でもご紹介した通り、腸は「免疫機能の中枢」と呼ばれており、非常に多くの免疫細胞が集中しています。
食べ物にも菌やウイルスは付着しており、それが消化管を通じて腸内に入っていきます。
しかし、人が病気に感染しないのは、腸内にいるさまざまな免疫細胞が身を守ってくれているからなのです。
腸内環境が良くなれば、それだけ細胞の機能も良くなります。
発酵食品や野菜など、食物繊維が豊富に含まれた食材を積極的に摂り、腸内環境を整えていきましょう。
ただし、「身体に良いものだから」と同じ食材(食事)ばかりを摂取していても、栄養バランスは偏ってしまいます。
五大栄養素(炭水化物・脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラル)を、バランスよく摂取するよう意識してみて下さい。
また、偏食はもちろん、“食事を抜く”なども厳禁です(食事回数が減ると、1回の食事で栄養を補給しようと身体が無茶をするから)。
基本は、「1日3食」を徹底し、特に朝食を意識して摂取するようにして下さい。
ポイント3.適度な運動を行う(習慣化する)
適度な運動は、体を活性化させ、感染症予防に効果的です。
また、運動することで筋肉も強化・維持でき、総じて健康に良い影響を与えてくれます。
筋トレと有酸素運動を適度に行い、健康的な身体を手に入れましょう。
もし「運動する時間が取れない」「運動が続かない」という人は、ストレッチやジョギングなどの簡単なものからスタートしてみてもいいですし、日々の生活に“歩く習慣をつける”ことから始めてみるでも良いかと思います。
大切なのは、“習慣化させる”ことです。
無理のない範囲・できる範囲から、少しずつできることを増やしてみて下さい。
ただし、過度な運動は身体にストレスを与え、免疫力が低下してしまう可能性があります。
「身体に良いから」といって、無理をするのは厳禁です。
無理のない範囲で、運動を習慣化させて下さい。
ポイント4.身体を温める
身体が冷えると、免疫力が低下し病気にかかりやすくなります。
そのため、“身体を温める”ことも、免疫力アップに効果的です。
その方法の一つは、「運動を取り入れる」こと。
筋力が増えれば基礎代謝が上がり、基礎体温も上昇します。
もう一つは、「湯舟に浸かること」です。
日々のお風呂をシャワーだけで済ませている人は、お湯に浸かってゆっくり入浴してみましょう。
身体を温めて血流が良くなるだけでなく、リフレッシュ効果も発揮してくれます。
ただし、長時間お湯に浸かっているとのぼせてしまうので、浸かり過ぎにはご注意下さい。
理想は、約38℃~40℃のお湯に20分ほど入浴することです。
ポイント5.腹式呼吸を意識する
「腹式呼吸=お腹を動かして呼吸する」は、数多くある健康法の中でももっとも手軽に行うことができます。
お腹を動かして行う腹式呼吸は、体内の空気循環を促し、自律神経の働きを整えてくれます。
また、ストレスやイライラに対しても効果があります。
深い深呼吸をすることで、気持ちが落ち着く経験をしたことはありませんか?
あれこそ、まさに「腹式呼吸」なのです。
腹式呼吸によって横隔膜が刺激されると、同時に腸も刺激されるので、腸のデトックス効果も期待できます。
ただし、人の呼吸は「胸式呼吸」(=胸を意識して呼吸すること)を無意識に行うことが多いです。
慣れていない人は意識していないと腹式呼吸にならないため、「お腹を意識して呼吸する」「お腹から声を出す」を意識的に行ってみて下さい。
ポイント6.笑う
首を傾げる人もいるかもしれませんが、「笑う」ことは非常に大切な要素です。
なぜなら、笑うことでストレスが減少し、免疫力のアップにつながるからです。
実際に、笑いによって免疫細胞の一つである「NK細胞」の活性化が認められているのです。
「笑う」だけなら、特別なことをする必要も・特別な道具をそろえる必要も・特別に時間がかかることもありません。
意識さえすれば、いつでもどこでも自由に行うことができます。
特に近年は、新型コロナウイルスの影響で「人と面と向かって話すこと」が少なくなり、マスクの着用で「表情が出しづらい」状況が続いていました。
もし「笑う回数が減った」という人は、お笑い番組を見るなどして「思いっきり笑う」ことを実践してみて下さい。
笑うことは、心身の健康にも非常に有効です。
まとめ
「抵抗力」にしろ「免疫力」にしろ、健康的な毎日を過ごすためには、両者を意識的に高めることが重要となります。
加齢によって低下するものではあるものの、生活習慣を改善することで低下を抑制することは可能なのです。
栄養バランスの良い食事・適度な運動・十分な睡眠・ストレスを溜めないなど、生活習慣を改善することで、いくつになってからでも鍛えることができます。
また、「腸」は人体で最大の免疫器官です。
日頃から腸の調子を整えておくことが、健康への近道となります。
規則正しい生活と腸に優しい食生活を送り、健康的な身体を長く維持していきましょう。