「病院」と「クリニック」。
両者は同じ医療機関ではありますが、規模が大きく異なり、それによって担うことが期待されている機能も変わってきます。
この違いについて、以前に別の記事でご紹介をさせていただきました。
規模や機能が変われば、“働き方”も変わってきます。
今回は、働く側の視点で、それぞれの特徴を解説していきたいと思います。
「病院」と「クリニック」の違いについて
両者の違いは、「病床数」にあります。
「病床」とは、病院や診療所に設けられた「入院者用ベッド」のことを指しており、以下のように分類されています。
◆「クリニック」:0~19床の病床を持つ医療施設
「クリニック」とは“診療所”の通称であり、病院に比べて施設規模が小さく、地域のかかりつけ医としての役割を担っています。
設備が(病院に比べて)整っていないことも多く、場合によっては「大きな病院で精密な検査が必要です」などと言われ、総合病院などの大きな病院を紹介されることもあります。
対して「病院」は、緊急搬送の対応や難病の治療をするなど、比較的重篤な症状の治療を行う、大規模な施設のことを指しています(もちろん、軽微な症状であっても対応してくれる)。
また、病院の規模が大きくなるほどに、診療科目は増える傾向にあります。
看護師が働く際の、両者の違いについて
「働く環境」について
施設規模が変われば、スタッフの人数も異なることとなります。
病院の場合、病床数20以上であることから、施設の規模が大きくスタッフの数も多くなります。
医師や看護師の人数が多いことはもちろん、薬剤師・理学療法士・作業療法士・臨床検査技師など、多くの他職種の人たちとも関わる機会が多くなることでしょう。
対してクリニックの場合は、病床数が0~19で無床診療所も多いことから、スタッフの人数は少ない傾向にあります。
そのため、少人数の医師と看護師で運営していることが多く、他職種の人たちと関わる機会は少なくなってしまいます。
また、クリニックに比べて、病院の方が“医療機器”が充実しており、高度医療を提供している病院であるほど、最先端の医療機器に触れる機会も多くなります。
「仕事内容」について
仕事内容としては、両者は共通している点も多くあります。
例えば、「医師の診察の補助」「検温」「血圧測定」「採血」などです。
後は、病院勤務や有床クリニックの場合、「バイタルチェック」「食事・排泄介助」「内服薬の管理」「体位変換」など、入院患者の身の回りのサポートも行うこととなります。
無床クリニックの場合は、入院がそもそもできないため、上記サポートは業務外です。
その他の違いとしては、病院は“病棟業務”がメインとなりますが、クリニックの場合は“外来”を担当することもあるでしょうか。
また、病院勤務の看護師は、手術室看護師(オペナース)として、手術のサポートをメインで行うこともあります。
「待遇」について
これは、役職や勤務先によっても異なることとなりますが、どちらかというと“病院”の方が給与や福利厚生が充実している傾向にあるといえます。
この理由は、主に以下が関係しているとされています。
2.病院勤務には、夜勤が発生する=夜勤手当が発生することが多い
特に、無床クリニックは入院施設がないため、夜勤が発生することがありません。
そのため夜勤手当が発生せず、病院や有床クリニックに勤務している人よりも給与は下がることが多くなってしまいます。
ただ、夜勤がない方が、生活リズムが整いやすく働きやすいと考える人もいます。
この点については一長一短なので、自分が優先したいと考える方を選択するのが良いかと思います。
また、勤務する施設によって給与や福利厚生は大きく変わってくるため、仕事をお探しの方はいろいろな求人をチェックして、自分に合った勤務地を探すようにしてください。
それぞれで働くメリット・デメリットについて
次に、「病院」と「クリニック」それぞれで働く際の、メリット・デメリットについてのご紹介です。
「病院」で働く場合
メリットについて
メリットとして挙げられるのは、以下でしょうか。
②教育制度が整っているところが多い
③休みが取りやすい
病院は、多くのスタッフが働いていることから“分業制”が多く、特定の業務を集中して行うことができます。
そのため、「特定の業務スキルを伸ばしたい」と考える人にオススメできます。
加えて、多くの患者が待っている中で業務を行うため、業務への対応スピードも上がるはずです。
また、スタッフや設備が充実していることから、教育体制や研修体制もしっかりしていることが多く、最先端の医療機器などについて触れる・学べる機会も持てることでしょう。
スタッフが多いことから代わりの人員も見つけやすく、休みが比較的取りやすいともいわれています(施設や職場環境にもよる)。
デメリットについて
デメリットとして挙げられるのは、以下の3つです。
②習得できるスキルに偏りがある
③生活リズムが狂いやすい
上記でも記載した通り、病院は分業制が多く、分業して多くの患者に対応していくこととなります。
そのため、業務が流れ作業のようになってしまいがちで、かつ自分が担当している業務しか行えないので学べるスキルにも偏りが出る可能性があります。
(病院によっては、スキルの偏りをなくすために一定期間ごとにローテーションで人員配置を変えているところもある)
また、病院勤務は夜勤や土日の出勤が求められることがあります。
特に夜勤は昼夜逆転の生活を繰り返していくため、生活リズムが狂いやすく、それによって体調を崩してしまう人もいます。
この点には、十分に注意した方が良いかと思います。
「クリニック」で働く場合
メリットについて
メリットして挙げられるのは、以下の3点です。
②業務全般を幅広く経験できる(難しい処置が比較的少ない)
③患者一人ひとりに時間をかけて対応しやすい
④プライベートと両立がしやすい
ここまでにご紹介した通り、クリニックは比較的規模が小さく、スタッフも限られた人数の中で運営していくこととなります。
少ない人数で業務全般を行っていくこととなるので、幅広いスキル・チームワークが身に付き、全体の流れを把握しやすいのです。
また、病院に比べて設備が整っていないことも多く、病院ほど難しい処置を担当することも比較的少ないといえるでしょう。
患者数も病院に比べれば少なめなので、患者一人ひとりに対してしっかりと対応でき、患者とのコミュニケーションを重視する方にもオススメといえます。
加えて、クリニックは診療日時が決まっているため、プライベートと両立しやすい環境にあります。
ゴールデンウィークやお盆、年末年始も休診となることが多いですし、無床クリニックの場合は夜勤やオンコールもありません。
家族との時間も取りやすく、生活リズムが乱れることも少ないので、身体的・精神的な負担も少なくなります。
デメリットについて
デメリットとして挙げられるのは、以下でしょうか。
②急な休みが取りづらい
③担当する業務が多い
④最新医療に乏しいクリニックもある
少ないスタッフ数の中で業務を行っていくため、いつでも頼れる人がいるわけではなく、教育・研修制度も整っていないことが多いです。
スタッフ数の関係から、変わりのスタッフが見つけられず、急な休みが取りづらいことも……。
また、“幅広い業務を担当する=担当する業務が多い”ということであり、特に急に患者が増えてしまうと、仕事の負担が一気に自分に降りかかることもあります。
最後に④ですが、規模が小さいクリニックは、周囲からの刺激が少なく・医師自らが積極的に最新医療について学んでいく姿勢が求められます。
しかし、中には日々の業務に追われ情報収集が追い付いていないところもあり、最新の医療についてそれほど明るくない場合もあるのです。
総じて、病院に比べて“学べる機会が少ない可能性がある”といえるかもしれません。
まとめ
病院とクリニックでは環境が異なるため、働き方もそれぞれで変わってきます。
クリニックの方が、プライベートとの両立がしやすく、家庭と仕事を両立したいと考える人にオススメの勤務環境といえます。
ただし、スタッフ数が少なく・幅広い業務に対応しなければいけないため、即戦力となる人材が求められる傾向にあります。
対して病院は、教育・研修制度が整っていることが多く、最新の医療技術に触れたり他の同僚から刺激をもらえたりと、成長の機会が多い職場といえます。
ただし、夜勤や土日出勤もあり、クリニックに比べて生活リズムは狂いやすいというデメリットがあります。
一長一短であるため、どちらの方が…ということはできません。
もちろん、勤務する施設によっても働き方や給与は異なりますので、「どんなところが自分に合っているか?」は、しっかりと比較検討をしながら決めていくといいのではないかと思います。
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